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Re: 巫女の少女と命使いと ( No.4 )
日時: 2010/09/29 17:49
名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: 8Sk6sKy2)

第一章 骨董少女現る。

 次の日……
「本当に来るとは……」
 なんとなくそんな予感がしていたとはいえ、まさか本当に次の日にいきなり転校生が来るとは思っていなかった。
「俺の勘もまだまだ捨てたもんじゃないわな」
 そんな事を言いつつ、転校生の自己紹介に耳をかたむけた。
「神之宮巫女(かみのみやみこ)です。宜しくお願いします」
 かみのみや…みこ?
 なんつー神聖そうな名前なんだろうか。あれか、実家が神社だったりするのか?
 普通の黒いゴムでポニーテールにされた髪型、端正な顔立ち、外見はパーフェクトとしか言いようがない上に、この学校のだっさい(らしい。俺には良く分らんが)を完璧に着こなしている。
 まるでラノベの中に出てくる美少女キャラのような奴だった。
 男子はいつものテンションとは全く違っていた。
 顔を赤らめていたり、目を見開いていたり、隣の男子と「レベル高えな」と言っていたり、表現方法は個人個人違ったが皆が皆あの神之宮で美少女論議を始めていた。
 女子の反応は真っ二つだった。
 「キャーカワイイー!」と声を張り上げる奴、あいつの美貌に対して嫉妬する奴。
 ——後者はただのひがみだが——
 各個人それぞれ自由な表現方法で神之宮に対して反応していた。
「あ〜、席はどうすっかなあ。空いてる所に適当に座ってくれ。あ〜、一つしか空いてるとこないか。あそこでいいや、あそこに座ってくれ〜」
 なんとも責任感が無いというか……。
 いい意味でとれば生徒の自主性を重んじているのだろうが、あいつは面倒なだけだ。
 そういう奴なんだよ、ウチのクラスの担任は。
「わかりました」
 一切表情を変えずにそいつは席に向かった。
 一番後ろの席で、端数だったため一つだけポツンと取り残されてしまった、しかしどっかに移すのも面倒だし、事務の方に頼むのも面倒くさいという、非常にダメ人間が考えそうな考えのせいで、そこにいつまでも取り残されてしまっている可哀そうな席である。
 前の席の女子が「ヨロシクッ!」と声をかけていた。
 神之宮は「宜しく」といかにも形式的な感じで答えた。
 今声をかけた女子はかけらも気を悪くせず、太陽のような笑みを浮かべて前を向いた。
 その女子とはこのクラスのクラス会長であり、俺の幼馴染でもある白石茜(しらいしあかり)だ。
 腰のあたりまで伸びたロングヘアーを両側で縛った、ツインテール(超ロングバージョン)みたいな感じの髪型だ。
 顔は健康的で活発的と表現すると最もしっくりくる顔だ。
 正直メチャクチャ可愛い。
 俺は今は恋だの愛だのに興味は無いが、将来こいつに恋をするんじゃねえかなと疑っていたほどだ。
 まあ向こうも恋だの愛だのに興味があるタイプではないらしいので、今後そういう関係になるってのは無いだろうな。
 まあそんなことはどうでもいいが。
「みんな仲良くするようにー、ではホームルームを始めるぞー、連絡は無い。以上だ。一限の準備しとけー」
 何度聞いてもてきとうな担任教師である。いまさら驚いたりしないが。
 一限の準備を終わらせた俺は、早速ラノベの続きを読み始めた。
 後ろの後ろ——要するに、神之宮の席では質問攻めが始まっていた。
 少し聞いてみると「前の学校は?」「好きな物何?」「彼氏とかいるの?」「何で転校してきたの?」等々一般的すぎる質問ばかりだ。
 別に問題があるわけではないので適当に耳に通しながら、脳みそに書き込んでいく。
 神之宮は丁寧に一つ一つに受け答えしているようである。
 声のトーンとコンクリで固められたような無表情は一切変わらないが。
 そうこうしているうちに、聞き流しながら脳みそに書き加えられた神之宮の情報を紹介しておこう。

 まずその一、あいつは親の急な転勤によりこちらに転校してきたらしい。
 親の急な転勤で転校した奴なんて三次元では初めて見たよ。
 親はどうやら芸術品関係の仕事に就いているらしく、骨董や絵画を手掛ける大手企業に勤めているらしい。
 そんなのあるのか?
 なんだ骨董や絵画を手掛ける大手企業って?
 会社の名前も言っていたが、聞いたことなかった。
 
 はいその二、前は隣の隣の県に住んでいたらしく、ちょっとばかし遠い所らしい。
 どうでもいいがな。
 
 そしてその三、こいつは骨董品オタクだ。
 驚いたよ、これにはさすがに驚いた。
 骨董品について表情を変えずに熱く語りだしたときには軽く……いや、相当引いた。
 おいおい中学生で骨董品オタクってどうよ……いや、まあ別にその趣味を否定する気は一切ないけれども、それでも中学一年生が骨董品オタクってのは……。
 みたいな、アンビヴァレント的心情になっちまったんだよ。
 そんなこんなで意外な一面を掘り起こしていたら、一限の古文担当の教師が入ってきた。
 質問攻めだった生徒たちは全員席に座る。
 さあて、こいつの勉強に関しての能力はどんなもんなんだろうね?
 じっくりと拝見させていただきますか————