コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 巫女の少女と命使いと ようやく更新再開! ( No.67 )
- 日時: 2010/11/17 18:29
- 名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: NhgkHXib)
俺は運ばれて来たお茶を遠慮なく頂き、啓樹は茶菓子をひとかじりしてから「改めて……」と説明を始めた。
「じゃあまずはあの黒い存在……『つくもがみ』の説明から始めようか」
「つくもがみ……? 九十九って書いて九十九神か?」
「いや、憑依の〝憑〟に苦しい、喪服の〝喪〟で憑苦喪神だよ」
「あからさまに嫌な漢字だな……」
俺は呆れ半分、恐れ半分の気持ちで少し笑ってしまった。そこまで露骨に危険ですよアピールを受ければ、もう笑うしかない。
啓樹は俺に同意したかのように苦笑し、
「ちょっと長くなるけど良く聞いてね」
さて、ここでこいつが説明したことと、俺との応対を全て書き連ねてもいいのだが、それはやはり面倒な上にセリフばかりでは読みづらいので、俺が適当に要約する。
憑苦喪神とは簡単に言えば、物が化けて出た存在である。これを正確に説明するには、まず物体の真の原理から説明しなければならない。
物体の中には神様が存在し、それはありとあらゆる物体に該当する。しかし、生命活動を行っている物には基本的に該当しない。稀に存在している場合もある。
その神様は物体があまりにも乱雑に扱われると、粗く扱った対象に対し強い憤怒、憎悪、殺意を覚える。そうなると、その神様は宿主に特別な力を与える。
特別な力は千差万別、個体によって異なる。さっき見たあの鎚は「己の巨大化」つまり、鎚を巨大化してあの巨大鎚にしたということである。因みに黒い存在の具現化はどんな物体であろうとも、テンプレートで存在するものらしい。
こうして特殊な力を与えられた物、これらの総称を憑苦喪神と言い、憑苦喪神はその異端の力を使用して、対象に対して仇を討つのである。
しかし、異端の力には制限が付く。
まず力を与えられる場所が固定されている。詳しく言うと、先ほどの間界の中でないと、神の力は与えられないのだ。
これは、神様が物体に力を与えるには、神様自身も相当の力を使うため、神様が最も力をふるえる場所である神界に、人界よりも少しでも近づけるようにするためだと考えられている。因みに、何で直接神界に行かず、間界で妥協しているのかと言うのは、神界には神しか立ち入れないためだと考えられている。
そして体に馴染ませるための準備時間——正確言うと二十四時間——が必要である。馴染むとは、要するに完全にその力を使いこなせるようになるということであり、あの鎚のように完全に馴染んでいなくても多少は使うことができる。
そして完全に馴染んだ時、その物体は神と同等の力を得る。神と同等の力を得ると、神が使える特殊な力、『神界、人界、間界を自在に行き来できる』という能力を得る。
そうすることにより、初めて憑苦喪神は間界の外へ出ることができ、初めて怒りを対象にぶつけられるのである。
憑苦喪神の誕生は、憑苦喪神は神の力を与えられて間もない段階だと、神の力が駄々漏れの状態であり、その状態の時本能的に察知することができる。これは修行云々以前に神滅者なら誰でも使える。何故駄々漏れなのかと言うと、これは神の力が、まだ体に馴染んでいないことが原因である。
そもそも、神様の力を、そこら辺にあるたかが一物品如きが受け止められるわけがないのである。どんな物であろうとも、せいぜい神の力の一万分の一程度を受け止めるのが限界なのだ。
よって、体に馴染むまで、受け止めきれない分は神様が引き受けるのである。
そして、受け止めきれない部分とは先ほど言った通り、結局神様の力の大半である、約九割九分九厘なので、初めの方は神様が憑苦喪神を操っている状態になるのだ。
したがって、憑苦喪神の中核たる神が剥き出しになることによって、神様の力が駄々漏れになるのである。
「まあこんな感じかな」
啓樹は茶菓子を丸呑みした。
「じゃ、次は僕らについて話そうか」