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Re: 巫女の少女と命使いと ようやく更新再開! ( No.74 )
日時: 2010/11/21 15:45
名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: NhgkHXib)
参照: http://ameblo.jp/mekurumekunovel-blog/


 第四章 命使い誕生。

「とは言っても、どうすっかな」
 俺は取り合えず客間から出て、廊下を見渡した。
 扉がいくつかある。考えたって意味がないのは分かるが、徒労はしたくないのである。扉を凝視したら何か違いがあるのかもしれない。
「ま、違いなんざあるわけ無いか」
 仕方ないので客間から一番近い扉を開けた。
「……うおー……」
 そこに広がっていた光景は、何とも凄い光景だった。
 眼前に広がるは大量の物。見渡す限り物、物、物の、物の山。
 種類は様々で大きな家具から始まり、電化製品、衣類、食器、玩具、遊具、書物、画材道具なんかもある。
「……木の葉を隠すなら森の中、物を隠すなら物の中ってか? ハッ、安直な考えですこと」
 しかし、非常に適切な考えだとも言える。おそらく憑苦喪神だった『骨董品』とやらは貴重なのだろう。簡単に見つかってはいけないと言うことか。
 理由はなんにせよ、この中から特定の一つを見つけるなんて至難の業である。正直やってらんない。
「っ……くあぁぁー。それでもやんなきゃいけないんだろうなあ! クソッ!」
 悪態をつきつつ、心の中で自分の運命を呪いながらも、物の山に飛び込んで行った。


 で、それを繰り返して三つ目の部屋……
「ったく、どこにあんだよ……」
 俺はついに愚痴をこぼした。いつまでたっても見つからない。あんだけ大量に物があるのにいくら探しても見つからないのだ。俺にあった物とやらが。
 武器になると強そうな物、俺が使いたい物、使い易そうな物は間違いなく調べ、ハンガー、布団叩き、Tシャツ、ついにはおまるなんてのまで調べつくしたが、(ところでこれが昔憑苦喪神だったらどうだろう? おまるを使った憑苦喪神と戦うってどうよ……)一向に俺の本能が正解と言ってはくれない。
 何でだよ! 何で見つかんねえんだよ! 空気読めよ! いい加減空気読んでくれよ!
 この延々と埃臭い部屋で、なんだかよく訳のわからん作業をさせられると言う名の呪縛から解き放ってくれよ!
 俺はもう疲れたんだよ! もう骨董品なんざ見たくもねえんだよ!
 原点回帰したって、意表をついたって、どこをどうやっても解放してくれそうにないんだよ、この呪縛は!
 誰か助けてくれぇぇぇぇ! 俺ぁ、俺ぁもう嫌なんだよぉぉぉぉ!
 と、いくら俺が心の中でシャウトしたところで意味がないことは既に分かっているので、発狂しかけつつも、俺は作業を続けるのだった。


 何だかんだで五部屋目……
「いい加減にしろやぁああああああ!」
 俺は今まで散々溜めに溜めてきた自制心の抑え込みがとうとう効かなくなり、手元にあった本を壁に叩きつけた。
 俺がこの五部屋目に来るまでに探した物の種類を挙げると、軽く二百は超える。
 勿論今まで通り自分が使いたい物、使いたいかどうかは別にして憑苦喪神と戦う時に有効そうな物、使えてもあまり効果がなさそうな物、これを使っても明らかに対抗できないであろう物、そもそも質量的な意味でもしくは、体積的な意味で使えない物、絶対使いたくない物、アルバム、年賀状、残暑見舞い、結婚披露宴の時の写真(多量)等、明らかに個人的な物品、ありとあらゆるものを調べた。調べつくしたと言っても過言ではない。
 だが見つからないのだ。これはキレてもいいはず。つーかキレるべき。キレないほうがおかしい。キレないとか人類じゃない。神だ。神の領域の心の広さだ。
 あ、憑苦喪神は結構心狭かったかな? ちょっとキレたくらいで人殺そうとするし。
 理解できるよね? いいよね、キレても? 同感できるよね? できないとおかしいものね? できないはずないよね? できないとか言わないよね? できるよね?
 という、唐突な上に意味のわからない若干のヤンデレ(デレがいつあるのかは不明)状態からなんとか自制心を取り戻し、ハァハァと肩で息をしながら、一旦落ち着いて周りの状況を見る。
「ふ——」
 やはり物の山だ。目を擦っても景色が変化することは無い。
「…………ちょっと待てよ? 最初からここにあると決めつけていたことが間違いなんじゃないか?」
 先入観と言うやつだ。木の葉を隠すなら森の中——そんな先入観を持っている状態で、人々の中にたった一枚の木の葉を隠されたら分かるわけがない。
 つまり、この物の山の中を右往左往しているくらいなら、状況打破のために一発逆転を狙ってもっと別の所に行ってみるという方法を取ってみた方がいいのではないか?
 しかし、これは危険な賭けだ。
 これは例えるならば、とある一粒の砂を探すために、サハラ砂漠を探すか、近所の公園の砂場を探すかというくらい差の開いた確率だ。
 候補が多ければ多いほど、そちらに正解がある可能性が高いのは事実なのだ。
 向こうに行ったからと言って、見つかる可能性が上がるわけではない。正直、確率論としては下がるだろう。
 それでもやはりここは気分転換も含めて、別の部屋に向かう俺だった。