コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 巫女の少女と命使いと もしや幻想? 参照400突破です ( No.85 )
- 日時: 2010/12/19 11:07
- 名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: NhgkHXib)
- 参照: http://ameblo.jp/mekurumekunovel-blog/
俺が次に意識を覚醒させたのは元の部屋だった。目の前に畳が見える。どうやらうつぶせに倒れているらしい。
俺は体を起こす。非常に体が重い。寝てただけで、どうして疲れるんだ。
「……寝てただけじゃあ、ないってことだな」
右手の拳を開く。そこにはとてつもない力が秘められている。
あいつは確かこう言った。「生命力の投与」と。
詳しい使い方はまだわからないが、まあそのうち分かっていくだろう。つーか最後の発言はなんだったんだ? 意味が分からない。まあ気にしなくていいか。
俺の隣では神之宮が先ほどと変わらない態勢で座っていた。
「……俺はどれくらい向こうに居たんだ?」
「約三分ほど」
たったそれだけか。まあ別にそんな事はどうでもいいが。
「それで、君の能力はなんだった」
「命使いだそうだ」
「……ほう。命使いか」
「知ってるのか?」
「いや、まあ知ってはいるがこちらの話だ。時間も無い、後で西屋にでも聞くといい」
「まあそんな事はどうでもいいんだ。別に詮索はしねえから、この能力について何か知ってるなら詳しく教えてくれねえか?」
どうせこれから使い方を自分で研究して行こうとしていたところなんだ、手間が省けていい。
「了解した。教えよう」
そう言うと神之宮は語りだした。
命使いとはその名の通り『命』を『使う』能力で、自らの生命力をほかの物体や生命体に付与する力である。
無生物に使えば命を与え、右手で触れた状態で命令でき、自らの従順な使徒とする。生きとし生けるものに使えば、その者の傷を癒す。
「端的に言うとこういう能力だ」
顔の筋肉を口と目蓋以外動かさないで淡々と語る神之宮は、美少女ながら、ぶっちゃけ恐ろしく、何故か奇妙な既視感を覚えた。
と言うか既知感? いや、既聴感という感じだ。そんな言葉はないだろうが。しかしなんだっけか、デジャヴというやつだろうか?
あ、思い出した。転校初日に骨董品を語ってた時とそっくりなんだ。口調と言うか、声のトーンと言うか……っと、それはまあ措いておこう。
「新たな生命を生み出す能力か……自分で言うのもなんだが神に等しいもんだな」
「そうとも言える。この能力は初代エースと同じ能力だ」
「初代エース? エースってのは確か聖滅者とか言う一番強い能力者だろ?」
「更に初代エースは歴代最強と呼ばれ、全ての神滅者の祖とも言われる」
「……なんでそんな人の能力と同じなんだよ」
「何故そんなに残念そうに言う。誇るべきことだと思うが」
「俺は普通がいいんだよ、普通が。神滅者になろうとも根源的な考え方は変わらねえ。普通の能力がいいんだよ。例えばお前のサーベルみたいな、当たり障りのない奴とかな」
いやまあさっき啓樹に言われた通り、この状況で普通とか言えた義理じゃないんだが。
「なんと文句を言おうと、君の運命は既に決まっている。現実から目を背ける余裕があるのなら、現実を見つめることに余力を使った方が有用なはずだ」
いや、それは正論だが。
「どうやったって納得できないこととかあるだろ。少なくとも俺はあるね。だから、そんな正論に流されたりはしないぜ」
「……そういうものか」
そういうものだ。
「じゃ、俺はそろそろ帰るわ。悪かったな、部屋になんか入り込んじまって」
「別にかまわない。コレクション保管庫に入られる事は、たいした問題ではない」
「あ? コレクション保管庫?」
なんだコレクション保管庫って。
「先ほど君はあの襖の中を見ただろう。あそこに入っていた物は私のコレクションだ」
「……ああ、あれね」
封筒の方に注意が惹きつけられたから、言われるまで思い出さなかったな。
しかし、あんなに入っていたのが全部こいつのコレクションだと? どんだけオタクなんだよ。俺もあまり言えた立場ではないが。
「まあいいや、また明日。学校で」
俺は扉を開け、振り向いて言った。
「……ああ、また明日」
神之宮は物足りなさそうな雰囲気を醸し出していた。いや、気のせいだな。