コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 巫女の少女と命使いと もしや幻想? 参照400突破です ( No.86 )
- 日時: 2010/12/21 18:13
- 名前: 山口流 ◆v9R3ODctWg (ID: NhgkHXib)
- 参照: http://ameblo.jp/mekurumekunovel-blog/
「ずいぶん遅かったね。心配したよ」
「言ってろ」
俺は外で待っていた啓樹を一瞥し、悪態をついた。
「で、どうだったんだい?」
「命使いだとさ。因みに体内型。封筒が起きたら消えてたんでな」
啓樹は目を見開いて息をのみ言葉を失っていた。そしてギリギリ引き出した様な声で、
「そ、それはそれは……凄いね」
「俺は嫌だがな」
啓樹はこう答えることが分かっていたかのように「……そうだね」と答えた。
俺は空を見上げた。美しい半月がよく映える、漆黒と言う名がふさわしい暗闇。
「ったく、どうすんだよ。こんな時間になっちまって。親父の堪忍袋はとっくに爆発してんぞ、百パーセント」
啓樹は呑気にも薄笑いを浮かべ、
「大丈夫大丈夫、僕だって両親が放任主義だったりするわけじゃないんだ。対抗策はあるんだよ」
漆黒の中での陰影の落ちた笑みは非常に不気味だった。
「やぁ後輩君、ウチは斉田充(さいたみつる)ゆうねん。よろしゅう」
パッと見十七、八位に見えるその人は髪は肩程度まで伸ばして軽くパーマがかかっており、前髪を切りそろえた髪型で、黒ぶち眼鏡をかけた細目の整った顔立ちをした綺麗な人だった。
全身からは活発に活動をしていそうなオーラを発散しまくり、なんというか、ラノベ的に言うとスポーツが大の得意なキャラクター的立ち位置の人だな。
体つきは出過ぎず、かと言って平坦なわけではないという、まあ普通というかなんというか……何を言っているんだ、俺は。正常に戻せマイブレイン(本日二度目)
まあいい。今この人は俺の目の前で中学の制服を着ている、体内型の人か。
「えーと、山沢って言います。山沢古神です。古の神って書いて古神です。宜しくお願いします、斉田さん」
「古の神! えらく神々しい名前やなあ、親御さんのネーミングセンスはなかなかええな。あ、あとウチのことは充でええよ。呼び捨てでもええし、敬語も面倒だったらやめてええで」
うぉお……褒められたよ。この名前って結構莫迦にされるからそういう風に肯定していただけるとありがたい限りです。
やっぱり関西の人のノリなのだろうか、サバサバした活発そうで快活そうな良い先輩だ。
「ほな、自分んち行こか」
啓樹はこの人を家に連れて行けばどうにかなると言った。
事実そうなるのだろう。
この人の能力はなんてったって、「人の記憶の操作」らしいからな。
基本的にこの類いの事を打ち明けられない人は、記憶を操作できる人に記憶の書き換えをしてもらったりして乗り切っているそうだ。かくいう啓樹もその一人らしい。
「説明すれば解ってくれなくはないかもしれないけど、色々と面倒そうだから記憶変えてもらってるんだ」
と言っていた。まあ、どうでもいいがな。
俺の家へ向かう途中、斉田さん……じゃなくて充さんが話しかけてきた。
「なあなあ、自分の『骨董品』ってなんなん?」
「え? ああ、命使いってやつです。自分で言うのもなんですが凄い能力だそうで」
「み、命使いて……豪いもんやな」
充さんは本当に驚いた表情をした。そんなに凄い事なのか……。なおさら俺が選ばれた意味が解らん。こやつは俺に何を求めてるんだ?
「そんな能力持っとるなら、将来エースになったりしてな」
充さんは「うひゃひゃひゃっ!」と軽快に笑った。
「そんなの冗談じゃないですよ。自分は普通がいいんです。平凡、凡庸、普通、通常、そんな感じの平々凡々な人生がいいんですよ」
「何でや? 自分過去に何かあったとか、そーゆう事は無さそうやしなあ」
「特に意味は無いですよ。しいて言うなら、イレギュラーな事が嫌なだけです」
「ふ〜ん。ま、別にええわ」
充さんはクルリと顔を前に向けて、黙って歩を進めた。
そのまま道なりに進んでいき、俺の家にたどり着いた。赤い煉瓦模様のごくごく一般的な家だ。
「それじゃ、お願いしますよ、充さん」
「おう、任しとき!」
充さんは何故か右手を拳銃の形にして、その右腕の肘を左手で支え、笑顔で返答をよこした。
俺は意を決してインターホンを押しむ。誰もがインターホンと聞いて想像する、インターホンの擬音語の代表格である音が響く。
家から慌ただしくかけてくる音が聞こえる。
「いぃぃぃぃじぃぃぃぃーんんんんん!」
出てきたのは親父だった。おー怖っ! ホントお願いしますよ充さん! 充さんは隣で何やらブツブツ呟いていた。
この深夜の静寂を孤軍で打ち破れるほどの巨大な音を立ててドアが開けられた。
直後、充さんは拳銃のような形にしていた右手を親父に向けた、その指先には何やら細々と文字やら何やらが描かれている魔方陣的な輪が浮遊しており、
「『Memory Rewrite(メモリー リライト)』」
と呟いた。
すると、その輪の中心からレーザービームのように黄色い光線が飛び出し、親父の眉間を突き抜けた。親父は突き抜けた瞬間、目を一瞬見開き、その後白眼になって前向きに転倒した。
「……上手くいった……みたいですね」
「ああ、後は自分のオカンと妹の記憶を書き換えればオールオッケーや」
そう言うと充さんは玄関で靴を脱ぎ捨てずかずかと入りこみ、リビングで海外ドラマを見てたお袋、寝室に居た妹をさっきと同様の手順でぱたりと倒れさせ(妹に関しては寝ていたから良く分らなかったが)、全てを終わらせた充さんは玄関の扉を開きながら、
「ほな、また用があったら呼んでな。ウチに手伝える範囲なら手伝ったるわ」
と言って去って行った。俺は、去っていく充さんに一礼して、親父を担いで、嗚呼愛しきかな、我が家へと足を踏み入れた。
「ようやく落ち着けるな」
今なら、故郷を追い出されたユダヤ人がエルサレムに帰って来た時の気持ちが分かる気がする。
しかし何でまあこんなことに巻き込まれてるんだか。俺はただ平凡な人生を謳歌したいだけだってのに。
とても大きな嘆息の後、扉を閉めた。
嘆息は夜の虚空に溶けて消えた。
* * * * *
ここから先は小説ではないです。
まあ一種のあとがきだとでも思っていただけますと幸いです。
まずは、このような駄作に御付き合いいただき、誠に有難う御座います。
今回の御話は第四章、「命使い誕生。」の最後の御話です。次回以降は第五章として始まります。
何が言いたいのかというと、きりがいいので、一旦御尋ねしたい事が皆様にありまして、今回ここに書いている次第であります。
その御尋ねしたいこととは、この四章では散々説明口調のお話が三話ほど継続するのですが、それをどう思うのかを御尋ねしたいのです。
正直、書いた私でも目を背けたくなるほど詰まり過ぎていまして、知識が一か所に。
やはりもう少し考えるべきですかね……。
追記:
友桃様の指摘により、改行ミスを修正いたしました。
友桃様、有難う御座いました。