コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

 1 ‐ 02 ( No.5 )
日時: 2010/10/14 17:15
名前: 風無鳥 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)

◆ 1 ‐ 02

「あ、おはよー紫音! あと瑞原!」

 引き戸を開けて教室に入ると明るい声が聞こえた。女子数人で一つの机の周りに集まり、おしゃべりに花を咲かせている紫音の親友、笹本茉莉沙(ササモト マリサ)。

「おい俺をついでみたいにいうな、いつもいつも」
「悪いけどあたしにとってはついでだからー。紫音がメイン!」

 けらけらと冗談っぽく笑う笹本。ゆるくウエーブがかった栗色のポニーテールが揺れ、緑色の瞳はどことなくいたずらっこのようだ。普段はまんま年頃の女子高生、という感じだがたまにこういう無邪気な子供のようになる。不思議だ。

「おはよ、茉莉沙。そうよねー玲はおかずよね、違うわおかず以下」
「言えてるーっ」

 紫音も笑いながらそう言うと、周りにいる女子達が声をそろえて笑う。本人の前でとは、ちょっと失礼じゃないかな君達。
 女子達にじとっとした視線を送って、準備を進める。一時間目は……数学かよ。朝から面倒くさい。教師はもうちょっと生徒の気持ちを考えて時間割をつくるべきだ。
 そんなことを溜息を吐いて考えていると机にばさっと一冊の漫画が置かれた。

「ほい、返す。結構面白かったぜ」

 白空雅樹(シロゾラ マサキ)。イケメン君。のくせして女嫌いな憎いヤツ。俺の親友二人目。いや、俺が勝手にそう思ってるだけだけど。
 小森がふつーなのに対し白空はかなり顔が良い。スタイルもいい。よってモテる。しかし小さい頃から女女女女だったためもう鬱陶しくなってしまったという。じゃあその女運をよこせと小森が言っていたがそうだそうだ、宝の持ち腐れというんじゃないだろうかこういうのは。

「どーした、元気ねーな」
「いや、一時間目数学だろ」
「うわー最悪」

 黒板に書かれた時間割を見て顔をしかめる白空は頭も良い方だ。最悪という言葉を使うほど最悪ではない。最悪というのは好きか嫌いかということに加えできるかできないかも問題なんだ、できる白空は最悪とはいえない。……最悪最悪俺は何を言っているんだろう。

「ま、俺今日は当てられないだろうし寝てるか」

 そう言うと白空は手を頭の上で組んで大きくあくびをし、廊下に出て行った。
 うーん、今日俺当てられる気がするな。ただの勘だけど。よし、白空が当たるよう念じていよう。というか白空の〝当てられない〟自信はどこから生まれてくるんだ。
 今日の数学の(俺の中での)テーマが決まったし準備も終わったしで、ふう、と息をつく。なんとなく紫音を目で探してみると、女子達の輪の中に入って楽しそうにだべっている。
 ……やっぱり、あいつと白空が当たるように強く念じよう。不意打ちという恐怖、とくと知るがよい。
 まあ、あいつはどんな問題もすらすらすらっと解いちまうんだろうけど。



 茉莉沙は愛用のオリキャラです。ずっと使ってくつもり。