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Heart Break No Wing 8話 ( No.10 )
日時: 2010/10/26 17:12
名前: 皐月凪 (ID: VozPDcE.)

____駅の方向にあの子が.....!!

「ん?、どうした..優羽?」
俺の隣を走っていた文耶が言う。

...まさかこんなところで、俺の目標のあの子のことを言うわけにもいかない...

「い、いや...何でもない...」
...とは言うものの、どうしてもあの子を見てしまう。
....えっ、男!?
その少女の前に背の高い、男子高校生が現れた...

....彼氏とかかなぁ〜...
なにか話しているみたいだったが、俺たちは走っている最中...もう駅から通り過ぎようとしていた。

「気になるあの子が駅にでもいたのか〜?」
文耶に聞かれる。
...な、なぜそれを....

「えっ、んなわけねぇ〜じゃん..」

「図星か、優羽、ずっと駅の方見てたもんな」
...正直に言うか..

「ああ、そうだよ...駅にあの子がいた。.....でも男連れてた...」

「優羽、よっぽどその子に汚染されてんなぁ〜、女子に男の友達の一人や二人いるにきまってんだろ」

「も、もしその男が、あの子の彼氏だったら?」

「おい、お前...股にちゃんと金玉付いてっか〜?...男だったら、奪い取れよ!!....大切な人なんだろ...なんの努力もしねぇ〜であきらめんな!!...ゴールまで俺と勝負だ!!」
そう言って、文耶は走りだした。
俺もなんだか、目が覚めた!!

「うおおおおおお!!!!!!」
俺は、残りの22.5㎞を全力で文耶と走った。


_____ゴール。

負けた...文耶に負けた...さすがは元サッカー部、体力に関しては化け物だ。

「おい、お前の気持ちってのはそんなもんなのか?」

「ハア、ハア...だってよ..お前元サッカー部だろ..勝って当たり前じゃん...ハア、ハア..」

「んなもん関係ねぇーだろ!!...お前本当にあれで全力だったのか?」
...なんでこいつここまで俺に..

「ああ、全力だったよ!!」
...次の瞬間、俺は殴られた。

「自分で限界作ってんじゃねぇーよ!!!...俺も、幼稚園の時からいつも一緒だった幼なじみがいたんだ...そいつのことがずっと..ずっと好きだったんだ.....それで俺は中学2年の春に告白したんだ...返事は、条件付きのOKだった。...中学最後の総体で、優勝したら付き合うっていう条件だった....バカな話だろ、大体サッカーなんて、個人競技じゃないんだ..一人じゃなんもできねぇー...でもあいつは言うんだ...限界を作っちゃだめって.....その理由が後々分かったよ.....結局、中学最後の総体は、ベスト8止まり...優勝なんて夢のまた夢だった...それと同時にあいつは、入院した.....その子の両親から聞いた、あいつの余命は幼稚園の時から決まっていたのだそうだ...そしてあいつの生きがいになっていた言葉...『限界を作っちゃだめ』...その子の専属の看護士さんからもらった言葉だそうだ....その言葉をかてに今まで頑張ってきたんだ....それに比べて俺はどうだろう..あいつに言われた言葉が、たとえどんなに無理に近い言葉であっても限界を作らず努力しただろうか.......答えはNOだ。......そして間もなくその子は息を引き取った.....俺は、悔やんだ..でもあの子は帰ってはこない...だから俺は、もう悔いなんか残したくねぇーんだ!!」
...文耶は泣き出した。...こいつにそんな過去があったなんて...

「わるい...俺、なんも分かってなかった...言われてみればもうちょいいけそうな気がした...限界つくっちゃだめだよな...」

「......ああ、すまない..こんな姿を見せてしまって...」

「お前にそんな過去があるとは知らなかったよ...」

...その時ようやく岡見が、外周から帰ってきた。

「おいおい、お前ら早すぎ...あんな速度で走るなんて正直ちょい引いたぞ...」

「いや、岡見が遅すぎなんだよ...『限界を作っちゃだめ』だろ♪」
...俺は、文耶に向かって言う。

「お前ってやつわ〜...」
...え?、文耶が脱ぎ始める...全裸!!

「まずい...裏文耶だ!!...優羽、文耶を止めるぞ!!」

「裏文耶ってなんだ?...」

「ひやっほーい!!!!!」
...全裸の文耶が俺たちに向かって猛ダッシュしてくる。
「説明は後だ、文耶の後頭部を殴れ!!!、早く!!」

「わ、分かった...」
...俺は、向かってくる文耶を近距離でかわし、背部に回り込み、後頭部を殴った。
...文耶は、その場に倒れこんだ。

...岡見が手慣れた手つきで、文耶にタオルをかける。

「岡見、どういうことなんだ?...」

「文耶はな、自分と本当にうち解け合った仲間の前でだけたまにああなるんだ...中学の時もそんなことがあった...優羽、文耶からあの話聞いたんだろ?」

「あの話?」

「文耶の幼なじみの話...」

「あ、ああ」

「それでな、あいつ...幼なじみ亡くなってから急にああなり始めたんだ...多分、自分で限界を作らないように作らないようにって心がけているうちにおかしくなっちまったんだと俺は推測する......優羽もこうなりたくなかったら、ほどほどにしとくんだな」

「...それは違うぜ..」
...倒れていたはずの文耶が起きあがって、脱いだ練習着を着ている。

「今回は、起きるのが早かったな」
...岡見が言う。

「嬉しかったんだ...友達に認められて...」

「文耶....」

「お〜い...お前ら早すぎ〜」
...後方の集団が、来た...先頭は武田、続いて真嶋、打矢、最後にへとへとのD輔...

「じゃあ、ビリのD輔くんにはジュースをおごってもらおう」
...さっきまで、裏文耶だったのにもう平然としている文耶が言う。

「いや、D輔だけにおごらせるのは悪いから、俺半分だすよ!!」
...そう言ったのは、真嶋だ。
.....こいつ、空気よめ〜

「別に、D輔ビリだったんだから払わせればよくねぇ〜」
...その通りだ打矢

「さ、決まりな...真嶋、悪いけど今回は、D輔におごらせてやってくれ...これが男ってもんだ」
文耶が場をまとめてくれた。

「男、かぁ〜......負けた!! 今回は、D輔におごらせてやる!!」
...真嶋変わってんな〜

「今回は、負けたけど...次はまけねぇ〜からな〜!!!」
D輔が言う。
...あ〜、D輔が前向きなやつでよかった〜

...俺達は、校舎の中へと歩き出した。


.....なんか忘れてねぇ〜か...?

「な、なぜ俺が一着ではないのだ...」

...振り向くと武田が一人地面に座り込み、独り言を言っている。

「みんな、いいのか?」

「武田、ああ言うやつだから気にすんな...行くぞ」
...武田とは、電気科仲間の文耶とD輔が言う。


....なんか、みんな個性豊かだな...