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Re: Heart Break No Wing ( No.20 )
日時: 2011/01/04 17:12
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


佐伯姉は、主審に試合を止めさせた。



佐伯姉は俺に近づいて言う

「君の勝ちだ、今の1ゲームで全部分かった」


予想外の発言だ.......

いったい今の一点で俺の何が分かったというのだ?......



「ハハッ、ちょっと来い」


戸惑う俺の顔を見て笑う佐伯姉....


佐伯姉は、体育館の入り口の方へ歩き出し俺を呼ぶ



俺は言われるがままに着いて行く。



「おい、そこの2人!!、どこ行くんだ?」


体育館を出る際に晴華の監督に言われる。


「少しアドバイスしてきます」


佐伯姉はそう言い俺の練習用Tシャツをグイグイ引っ張る




.............体育館外、玄関の前につれてこられた俺

優羽の真ん前に仁王立ちする佐伯姉。



そんな佐伯姉の第一声


「私とアド交換しろ」


ラケットバックから無造作に携帯を取り出し、言う佐伯姉。



「......えっ!?」


思わず言ってしまう。



「優羽くんは私に勝ったんだから、約束通り、志乃のアドを教えてあげるよ♪」



「......い、いいんですか?」



「もちろん♪」


俺は、携帯を佐伯姉に差し出す。


佐伯姉は赤外線送信を始める。



「ほい、私のアドと志乃のアド登録しといたから♪」



佐伯姉から携帯を返され、ふと思った。





_________気になるあの子のアドを貰ったとはいえ、なんてメール送ろう............



所詮こっちはあの子から見れば、赤の他人.......

いきなり好きでしたじゃ、ただの変態だよな........

かと言って、共通点も無いし.........なにを話したらいいんだ?




.....共通点、共通点...........



俺は必死にあの子と俺の共通点を探し出した。


電車が同じ....でもあの子は多分俺に気づいてない


学年が同じ....だからどうした




ダメだ.......


あの子、佐伯 志乃のことなにも知らない....知らなすぎる!!


一目見て惚れた..........それだけじゃダメなのか.....



あんな美少女、男が100人いたらおそらく99人は惚れるだろう...



なのになんで彼氏がいないんだ?



何か裏があるのか?


いや、裏があったとしても俺はそれを受け入れる!!



「おい、なにそんなに考え込んでいるんだ?」


佐伯姉に声を掛けられ我にかえる


どうやら、あの子にメールを送ることを考えただけで相当考えこんでしまったみたいだ。



「す、スミマセン........せっかく貰ったアドですけど.....俺、佐伯さんの妹さんのこと何も知りませんし、その........共通点とかないですし..........俺、今のままじゃ妹さんにメールの一通も送れないと思います」




「......がっかりだな〜、さっきの試合、君のラストの動き.............私は危うく君に惚れそうになったよ..........共通点?、そんなの作ればいい、何も知らない?、これから知ればいい、桜野 優羽、君にはバドがあるじゃん!!............君の想いをバドで伝えろ!!、バドなら.........バドでならきっと伝わらない想いも伝わる..........全県新人、志乃、呼んどくから........頑張れ!!」



佐伯姉に肩を叩かれる



佐伯姉に言われて気づいた



俺は今まであの子と話す権利を得るために必死で練習を頑張ってきた





__________その努力を今、実らせないでどうする?



時は流れ、卒業の時期を迎える......

多分俺は、佐伯姉の今の言葉が無ければ気づくこともできず、青春時代を終えることになっただろう。




言葉というものは常に儚く脆いものだ_____



俺は、バドというスポーツで想いを全力で伝える!!!!




「佐伯姉さん!!!、俺、目が覚めました!!あなたの妹さんに全県新人で想いを.......想いを全力でぶつけます!!!」



微笑む佐伯姉。


「佐伯姉さん?、まったくいつから私は君の姉になったんだ?..........今の優羽くんじゃメールもままならないだろう、私から細かなとこは志乃に伝えておく、志乃からメールが来るかもしれないがその時はちゃんと対処しろよ♪」



佐伯姉はそう言うと体育館へと戻って行った。




俺が体育館に戻ろうとした時、廊下奥の階段に誰かがいることに気づいた。


その方向を見る........



それは、間違いなく佐伯 志乃だった。



もしかして、今の一通りの話、全部聞かれてた.....


だったらまずい!!


やばい、俺、どうしよう.......



俺の全身の穴という穴から嫌な汗が噴き出すのが分かった。



あの子が、俺に近づいてくる......


自分の心臓がだんだん高鳴っていく....



そしてついに、気になるあの子は俺の目の前に来た





気になるあの子、佐伯 志乃が俺に向けた初めての言葉





「君、弱いね........」


彼女は、その言葉だけを残し去って行った....




______全部聞かれたんだ




誰かの力なしでは何も出来ない........



弱いって言われて当然だ。



俺は自分で自分の顔をビンタして、無言で佐伯姉と佐伯 志乃のアドを削除した。