コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Heart Break No Wing ( No.22 )
日時: 2011/01/06 08:31
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)

______全県新人まであと3日となった




あの晴華の練習試合の日から、佐伯姉妹には会っていない。



あの子も始発では見かけなくなった。




俺たちは、あの日........俊介先輩がキレた日から、決められた練習メニューを120%集中して取り組んだ。





俺は、いつもの練習時間に第二体育館に集合し、早速準備、練習を始める。



...........と、自分のラケットのガットが切れていることに気づく。





「あ〜あ、切れてんじゃん、早くガット切んないと、フレーム変形しちゃうよ〜」


たまたま隣で、バドミントンシューズの紐を結んでいた倉町先輩が言い、ハサミを差し出す...



「.......あの、どうやって切ったらいいんですか?」


俺は、どこから切ったらいいか分からず戸惑う。




「ったく、一年〜〜ちょっとこ〜い」


倉町先輩は文耶たちを呼び出す。



「今から、一年にガットの切り方を教える。.....まず、どこから切れているのか見る..........優羽のラケットの場合、スイートスポット真ん中の横糸が切れている、この場合、一番近い縦の線を切る.....次に一番近い横の線............このようにして、縦横のバランスを取りながら切っていく、じゃないとフレームが変形したり、割れたりするから気をつけろ〜」



説明しながら俺のガットを切る倉町先輩




「僕はもうガット張り替えたからいいけど........岡見とか文耶とかそろそろガット張り替えた方がいいんじゃない?、あと大会まで3日しかないよ」


自分は知っているよオーラ出してる自称ジュニアの武田くんが言う。




「ってか優羽、お前どうすんだよ?、ラケットT-3一本しかないだろ」


文耶が言う。



ラケットが一本持ってないのは俺だけじゃない。

一年生全員がラケット一本しか持っていないのだ。



入部当初、先輩方から巻いてもらったグリップもボロボロで、本来の機能が失われている





「優羽、今からスポーツ店行ってガット張ってもらっても、大会前だから2日はかかる.............が幸運なことに、うちの部には、張人がいる」




「張人?」


武田以外初めて聞く言葉に戸惑う



「ガットが誰でも簡単に張れると思ったら大間違いだ、ガットを張るのは常に危険と隣合わせなんだ......ガットを張る際、機械を使いとてつもない力で引っ張らないとならない、一歩ミスったら、ラケットは粉々だぞ................張人って言うのは、ガット張り職人、ガットを張る試験で合格したものだけが得られる称号だ」

靴紐を結び終えた倉町先輩が、ストレッチを開始し、言う



「それで、その称号は誰が持ってるんですか?」


打矢が聞く。



「金子監督だよ............知らないのか?、あの方ラケット150本くらい持ってるらしい......なんたって卒業生からラケットをかつあげしてるって噂だ」



「ひゃ、150本!?、そんなにあったら一本くらいくれてもいいじゃないですかぁ〜」


真面目くんの真嶋が言う..............珍しいな



「いや、やつは自分のラケットは絶対人にはやらない、貸しもしない、そう言うやつだ」




...........監督の好感度が落ちた。




「おい、お前ら練習サボってなにしてんだ?」


その時、調度、倉町先輩の背後に金子監督がいた。



噂をすればというやつか........



倉町先輩は慌てた様子で言う。


「か、監督ぅ〜、職員会議ずいぶんと早かったんですね...........えっと、優羽のガットが切れてしまいまして、どうせなら一年全員にガットの切り方教えたほうがいいと思いまして........」




「どれ、見せてみ」

監督は、俺からラケットを取り上げる




「ふ〜ん、T-3か、まぁ手頃な値段で初心者向きのそこそこのラケットだな.............んで、買ったときのテンションはなんだ?」



「あの、テンションって?」



「バドの基礎知識くらい勉強しとけ!!、テンションっていうのは、ガットの張りの力のことだ、高校生はだいたい20〜30の間でガットを張る.............このラケットでシャトル打ってみろ」



監督から、一本のラケットを渡される....




.........か、軽い!!!!



自分のラケットとは桁違いに軽い!!!




「優羽、いくぞ〜」

監督からシャトルをあげるように指示された文耶は、俺に向かってシャトルを上げる。




俺は、いつも通りステップを踏んで、シャトルの落下地点のやや後ろに移動する



シャトルが落下地点の上空に達した。


俺は、脚力をフルに使い飛び上がった




体をひねり、肩から上を固定する..........

シャトルがラケットのスイートスポットに到達する0.1秒前に体をもとに戻し、その力で、全身の力で一点にすべてをぶつける!!





『バァッッゴーン!!!!!!!!!』



瞬間、シャトルは、まるで瞬間移動したかのようにコートにめり込んだ.......そして、後から今まで聞いたことのない爆発音が鳴り響き、空気を振動させた





「す、すげー............」


俺は、あれが本当に自分の打った球なのかと疑った




周りのみんな口を開けている....



「今のガットのテンションで29だ、相当堅いはずだがあれだけの爆発音、に威力...............お前にこのラケットやる」




「ええ〜〜〜〜〜!!!」


みんなの声がシンクロした



「監督、いいんですか!?」


俺は目をキラキラさせて聞く



「もちろん♪、そのかわりお前のT-3は没収な♪」




..........その瞬間、俺は笑いの中心となった