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Re: Heart Break No Wing ( No.32 )
日時: 2011/01/13 14:01
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


『Tスマッシュ!!』

文耶が叫ぶ


『Tスマッシュ』、それは、地区新人前に文耶と遊びで考えたフォーメーションスマッシュ........


上がったシャトルを前衛が打つふりをして後衛が打つというスマッシュだ........


通称 トリックスマッシュ_______




このタイミングでTスマッシュ.........



もう、なるようにしかならない!!



俺は、高速バックステップでさがり、飛ぶ.........

そして、シャトルがラケットに当たる寸前でかわし、前衛に戻る


瞬間、俺の後ろで、俺とほぼ同時に飛び上がった文耶の音速越えスマッシュが炸裂した.....






________決まってくれ!!!!!!!





シャトルは、速度を増し、白帯にぶち当たって相手コートに落ちる.....






___________ブラットショットだって!?



しかも、文耶のやつ、それを狙って打ったのか!?




ブラットショットとは、白帯に絶妙な角度、力で当たらないと発動しない神レベルの難易度をもつ技だ.....

このショットが決まれば、相手はほぼ100%返すことは不可能......



それを文耶は、狙って打っただって......



俺は後ろを振り返る.......




「文耶、お前すげ〜.................文耶、文耶ぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!」


文耶は、コートに血を吐きながらコートに倒れていた.........




すぐに、大会関係者が近寄って来る......



「試合は中止!!、早く奥へ運べ!!!!!」

駆けつけた大会関係者の一人が言う




「.........やめ...........やめろ........」


文耶は、もうろうとする意識の中、一生懸命に話す



「文耶、もう試合はいい!!、早く病院行け!!!!!!死ぬな!!!!!!!」


俺はまだ状況がのみこめていなかったが、必死に叫んだ

大事な友を失いたくはない.........



「........バカ、死にぁしね〜よ...................俺よー、分かるんだ......................この試合で最後、もう二度とバドが出来ないって...................だからよ............」







____________『優羽、お前とダブルスがしたいんだ.........』





俺の目から涙が溢れる..........



「バカ言ってんじゃねぇ〜よ!!!!!!、いつもテメーは人のことばかり考えて.................ざまぁーみろ、バチが当たったんだ」



微笑む文耶

「........へへっ...........」



「.........だからよ、俺はお前に恩返しがしたかったんだ..........ずっとずっと......................待たせたな文耶」




俺は、大会関係者を押しのけ、文耶をコート後ろのバックラインに寝かせた...............



「.......テメーはそこで寝てろ....................文耶、あとは任せてくれ.............」



俺は、文耶の右手に握られていたラケットを借りて、左手に持つ......




________二刀流........





試合再開。




俺の体力も限界に近い..........


相手は2人、こっちが10体力を消費するとして、向こうはその間5しか体力を消費しない.........



不利なのは承知だ.............




例え俺の足がちぎれようと、ラケットがぶっ壊れようと......




________『文耶ぁ〜、安心しろ〜、これから来るシャトルは全て捕らえる!!!!、......................これが俺の本気だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』




俺は、ユニフォームを引き裂き叫ぶ



ここからの記憶はうっすらとしかない



人間には、体にいくつも制御がかかっているらしい...........


多分その制御がいくつかはずれたのだろう






相手のモンスタースマッシュの嵐...........


俺はその一球一球を返した......


ただ返すだけ........それで精一杯






試合中俺の脳裏に時につらく、時に楽しかった日々の練習風景がフラッシュバックする.........




______俺さぁ、幼なじみがいたんだ.......そいつの余命は幼稚園のころから決まっていたんだ............




_______そいつの心の支えになっていた言葉........




_________『限界を作っちゃだめ』




________え〜、25㎞も走るんすかぁ〜........



________一番ビリ、ジュースおごりなぁー..........




__________よし、ここからゴールまでダッシュだ!!





________え〜、もう限界〜〜〜〜〜




..................おいおい、俺たちのモットーなんだっけ?






『限界を作らないこと』








_____________気づけば俺は、病院の一室で寝ていた




体中が痛い、のどの奥が切れているらしい、呼吸するのも痛い.....





...........文耶、文耶はどうなったんだろう?




俺は、動くこともできず、瞼を閉じた