コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Heart Break No Wing ( No.33 )
日時: 2011/01/24 14:18
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


____目が覚めた...


眩しい...

病室の窓から太陽の光が降り注ぐ...


枕元に今日の新聞があった...手に取って見てみる



日付を見、あの日から3日も経っていることに気が付いた...


...

....

.....えっ!?

新聞の一面を飾っていた記事を見て、思わず呼吸をするのも忘れてしまった......



『朱雀学院高等学校 不正入学発覚 バド部生徒32名入学取り消し』

...1989年当時から、裏金を使っての不正入学を奨励していた。
朱雀学院校長ら関係職員12名を解雇。
また、不正に入学したバド部32名を入学取り消し処分、過去に不正に入学した者の除名処分を教育連盟が今日決定した。
また、前バドミントン協会理事を務めていた大野 正一郎氏ら3名も解雇処分とした。
現バドミントン協会理事に就任した、金子 宣孝(現咲崎南工業高校教員 バドミントン部 監督)は、過去大会の朱雀高等学院の不正入学で入学した者の賞を取り消し、繰り上がりの対応を取ることを決定した。



金子監督がバドミントン協会の理事長になったって!?

なんで今更、こういう処分になったんだ?

...元々みんなバドの関係者は分かっていたのに...
地域の人だって、薄々気づいていただろうに...



「開けるよ〜」


声がして、カーテンが開けられた。

そこにいたのは、母さんだった。


「優羽、あんたどんだけ寝んのよ〜、丸3日も寝てたのよ〜」

あ〜、うるさい...
まったく、病室であまり騒がないでほしい....頭に響く


「母さん、それより新聞見た?」


「ええ、見たわ、まぁ当然でしょうね......よかったじゃない、あんた達団体戦優勝よ♪」


そうか...、朱雀の名前が消えるから、準優勝校が繰り上がって、結果的に俺らが優勝って訳か...


でも、月島、霧谷.......あいつらを倒せなかったことに変わりわない.....


「あら、もうこんな時間!!、母さんこれから仕事だからこれで行くわね、退院手続きもう済んでるから、今日中に病院出なさいよ〜、あと、周りに迷惑かけたんだから、ちゃんと部員のみんなとか、監督さんとか、学校に挨拶するのよ〜」


俺の着替えやら、なにやらを袋につめ片付け始める母。

まったく、言われなくても分かってるってのに......


「昨日だったかしら、とっても可愛い女の子がお見舞いに来てくれてたけど、もしかしてコレ?」


右手の小指を立てる母。



「うっせーなー、早く行けよ〜」



ん?、とっても可愛い女の子?........


一瞬、佐伯 志乃の顔が思い浮かんだが、あり得ない......

まぁ、母さんは女子全般を可愛いと言う癖がある....、でも女子なんて誰だったんだろう.......



母さんが病室を出た数分後、俺は病院を出た...

足に力が入らない...気を抜けば転びそうだ



一応聞いたが、病院に文耶の名前は無かった...



俺は、バスを経由して学校を目指した。

時刻は、昼過ぎ...みんな午後の授業を受けている頃だろう...



バスに乗り、25分ほどで「咲崎工業高校入り口」に着いた...

運賃を支払い、バスを降りる...


と、足の力が抜ける...


「痛ってぇぇぇぇぇー!!!」


転んだ拍子に、縁石に足を強打してしまった...



折れたかも......



「大丈夫かい?」

バスの運転手に心配されたが、ここは笑顔で大丈夫ですと言うほかないだろう


「だ、大丈夫です...」

精一杯の作り笑いでごまかした...のかは分からない...

苦笑いする運転手...



生徒玄関は施錠されているので、職員玄関から入り、そのまま職員室の金子監督の元へ向かった...


階段を登るのにも激痛が走る...




___そして職員室前...

「失礼します」

俺は、職員室の3つある扉の内、一番奥の扉を開けた。

その先には、電気科の職員の机が並んでおり、その一番奥に金子監督はいた...


監督は、チラっとだけこちらを向いたが、顔をパソコンに戻した...



俺は、金子監督の元へ歩みよる...


「あ、あの、監督、この度はご心配をおかけして申し訳ありませんでした...」


監督からの言葉はない...


俺は、職員室を立ち去ろうとした


「おい、お前、文耶のこと知ってるのかよ」

金子監督がやっと口を開いた。


「今さっき、総合病院を出たばかりでして、病院に文耶の名前も無かったですし........分からないです」


監督の表情は相変わらず重い


「文耶はなぁ.....都会の大きな病院にあの日の夜、緊急搬送された......肺をやられちまったらしい.....今は極度の疲労と大量出血で昏睡状態が続いているみたいだ......昏睡状態からもう3日....知ってるか?、1週間昏睡状態が続くと、脳や神経細胞、筋肉細胞に何らかの支障が出始めるとされている....」


監督がそこまでいいかけた瞬間俺は激怒した


「なんでだよ!!!!、なんでそばにいてあげねぇーんだよ!!!!!、あいつ今も一人で......孤独な闇の中で必死に生きようって、もがいてんじゃねぇーのかよ!!!!!!.......あいつの異変に俺は薄々気づいてはいたんだ.......試合前、あいつの息がいつもより荒かった、それに、試合でもミスるはずないとこでミスしてた.......でもあいつは笑顔でごまかした............................................『馬鹿野郎!!!!!、自分のことより他人を第一に想うなら、戻ってこいよ!!!!!』」


俺は職員室で号泣した...

言いたいこと全て監督にぶつけた...


監督は、無言で号泣する俺の前を通り過ぎ、職員室の扉の前で止まり、後ろを少し振り向いた


『........行くぞ、お前のパートナーのところに』


監督は泣いていた...



その涙は、午後の木漏れ日に照らされて眩しく輝いていた