コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Heart Break No Wing ( No.35 )
日時: 2011/02/03 14:36
名前: 皐月 凪 (ID: VozPDcE.)


___文耶のお見舞いに行った日から1週間が過ぎた。

相変わらず、授業にも練習にも集中できない。


「優羽、辛いのは俺らも一緒だ、でもいつまでもくよくよしてたって意味ねぇーぞ、ほい」

作業着姿の打矢は、指示薬メチルオレンジを俺に渡し言う。

今は、ものずくりコンテスト化学部門の課題である食酢の定量の練習の最中なのである


「わりーな打矢、分かってはいるんだけど.....」

俺は、指示薬をビーカーの溶液の中に2、3滴入れ言う






______そして今日も授業が終わる。


もうじき冬が来る、そんな季節だ。

俺は、実習棟の掃除を済ませ、教室で着替えを済ませ第二体育館へ向かう


第二体育館の扉を開け中に入る...

___体育館の独特の臭いがする



もうすでにみんな準備を始めていた。



文耶のいない第二体育館

文耶のいない練習

文耶のいない........



大事なことは大切なものを失ってから気づく......


文耶の存在がどれだけ大きかったのか今はそれが痛いほど分かる。


難なくこなしてきた練習メニューも、今はこなせない...


みんな同じ。



でも、今は前を見るしかないんだ。

前に進むしか道はない。






部活が終わり、午後7時45分......

俺は、日が落ちるのが早くなったのを感じながら、自転車小屋を目指す。


俺の自転車は、オートライト式だ。

入学式の日に両親が、長距離を走るには自家発電ではキツイだろうということで、少し高いがオートライト式の自転車を買ってくれたのだ。

バドミントンのラケットだって、シューズだって、バックだってなんでも買ってくれた。

親はそれだけ自分に期待してくれているんだ



___文耶の両親だってそうだと思う




なにより一番辛いのは文耶なんだ


俺がくじけてどうする?



負けたらだめだ




俺は駅に向かってひたすら自転車を漕ぐ。





駅に着いた。

もう辺りは真っ暗で駅周辺だけ明るかった。




8時49分発の電車には間に合ったみたいだ。

出発時刻までまだ20分近くもある.......

売店で立ち読みでもするか



っと、駅のバス待合い所の横で見るからにガラの悪そうな不良の集団が、お年寄りが椅子に座れないように陣どっているのが目についた。


俺は迷わず、近づいた


何で近づいたかは分からない、でも自分の中の何かがそうさせたんだろう


「あの、スミマセン席どけてもらえませんか?」

俺は、一番近くで陣取っていた金髪の男に声を掛ける


「ああ?、なんだオメー?ハハッ」

男は、凄い形相で睨み付けるがそんなこと関係ない


「おばあちゃんに席あけてもらえないでしょうか?」


「ああ、いいよ、私は大丈夫だから気にしないでおくれ」

おばあちゃんが、必死で杖にしがみつきながら言う


「お願いします!!」

俺は土下座してたのんだ


「こいつ土下座してるよ、マジうけるっアッハッハハハハ」


俺は立ち上がった

「お前ら、人間のクズだな」


「ああ?、ゴルァ?死ね!!」


俺は、囲まれた。


殴られた。


蹴られた。


俺はボコボコになりながらも耐えた。


不良は俺につばを吐きかけ、この場を去って行った



「だ、大丈夫かい、すまいねぇ...」

おばあちゃんが心配してくれる


「いいんですよ、では、電車が来ますので」



俺は、その場を後にホームへ向かおうと後ろを振り向いた...




________と、そこには佐伯 志乃がいた。



女子数人の輪の中にいて、佐伯だけ俺の方を見ていた。




その瞬間俺の中の時間が止まった...


俺は、散々蹴られた足を引きずりながら、佐伯志乃がいる方を目指す。


ゆっくりと、ゆっくりと...




佐伯志乃のすぐ近くまで来た。


周りの奴らは、ボロボロの俺を見て、寒い顔をしている


でも、佐伯志乃の表情は周りとは明らかに違った。






佐伯 志乃は




________泣いていた。




「どんだけお人好しなのよあんたは.......」


散々痛めつけられた俺の体を彼女は、優しく包んでくれた



周りの学生はみんな俺たちに注目している


なにせ、駅のど真ん中で抱き合っているんだ、注目されてもおかしくはない




「佐伯さん、見れてるよ......離れたら」

俺は、佐伯 志乃のこれからを気づかって言う



でも彼女は離れようとはしない


「本気で......本気で君のこと好きになっちゃったじゃない...」



え?、どういうことだ......

俺は、君、弱いね...って言われた印象しかない



「私ね、あの大会の日、団体戦の決勝で君を見て惚れたわ........パートナーが倒れても、仲間の為に自分が犠牲になっても戦うっていう精神、かっこよかった//......私後悔した、なんであの時、君に、弱いね...なんて言ったんだろうって......ごめんなさい、許してくれるかしら....」



「許す?、何言ってるんだよ、俺をあそこまで強くしてくれたのは君なんだよ!!、君の一言『君、弱いね....』その言葉は、正直大好きな人から言って欲しくはなかった。でも、その言葉のおかげで俺は強くなれたんだ!!、俺のほうこそ感謝してる、ありがとう。」




彼女は、立ち上がりとびきりの笑顔で言う




『私とお付き合いしてくれますか?//』