コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome Wing ( No.10 )
- 日時: 2010/11/12 15:54
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
- 参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。
▼002
「ふあー、疲れた!」
バスケが終わって机に突っ伏してると隣から視線を感じた。ふっと顔を上げると、やっぱり天敵。
「矢野って本当女捨ててるよな。バスケで本気出すってバカかお前は」
「うっさい湯坂。私より成績悪い奴にバカ扱いされたくない」
こいつは湯坂那岐。皮肉なことに三年間クラスが一緒で席替えが無い為に毎回隣同士なんだ。ちなみに私と星也は真反対の席にいる。
星也が隣の席の北原さんに話しかけた。——ああ、やっぱ羨ましいな。彼の眼中にない私の存在がもどかしい。
「矢野、お前……」
「何? あ、宿題やってないからって見せてやんないよっ」
きっと、湯坂は気づいてる。でも絶対に核心にまでつかせてやらない。そんなこと、させない。
私だって、心から溢れそうな気持ちを押し込めるのに精一杯なんだから。
「白羽ー! 一緒に帰ろーぜっ」
「うん。……あ、ちょっと待っててね」
北原さんも誘おう、星也が喜ぶかもしれない。私は鞄を背負って北原さんの席に向かった。
「ねえ北原さん。もしよかったら星也と私と一緒に帰らない?」
「えっ……ご、ごめんなさい。人を待たせてるので」
北原さんの視線の先には、大人っぽい知的な男子。あ、確か隣のクラスの奴だ。嫌な予感がする。胸のざわめきを抑えてこそっと聞いた。
「あの人、彼氏?」
彼女はボッと顔を赤くさせてうん、と小さく頷いた。そして足早に教室を出て行った。
「白羽? 北原と何話してたんだよ」
遅いのを心配してか、彼は私のもとまで駆け寄ってきた。どうしよう。言うべき? どうやって言うの? 彼女には彼氏が居るから諦めろって?
言えるわけない。私が彼を傷つけるなんてしちゃだめだ。
「ううんっ、何にもないよ」
私は、彼の幸せの手伝いをしなくちゃいけないんだ。それ以外、しちゃダメなんだ。分かってるよ、だから……
「ねえ、星也」
「んー?」
だから、少しだけごめんね?
「先に帰ってて?」
この締め付けられる胸の痛みを、何処かで叫んで踏み潰したいの。
( 大声で嗚咽をあげながら心の中で泣いた、まるで子供の様に )