コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome Wing ( No.11 )
- 日時: 2010/11/12 15:55
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
- 参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。
▼003
——バンッ!!
「はあ、はあ……」
教室がある二階から屋上まで全力疾走してきた。息が荒い。だけど、走ってる間は何も考えなくてよかった。
「……っ、ひっく……う」
痛い。胸がぎゅーっと押しつぶされているみたいに。嗚咽を堪えると余計に涙が溢れてくる。
北原さんには彼氏がいた。だけどそれを知らずにニコニコ彼女に話しかけている星也を見ると、胸が痛まないわけがない。
どうして、恋ってうまくいかないんだろう。すれ違ってばっかりなんだろう。北原さんじゃなくって、私を見てくれたらいいのに。
「——ははっ一人悲劇のヒロイン演じて、馬鹿みたい」
「本当、馬鹿だよ」
突然聞こえた声にバッと振り返る。一瞬星也が追ってきたかと思ったけど違った。
「湯坂……!?」
湯坂那岐だった。天敵に涙見せるとか最悪。どうせまた「涙なんか似合わねー」って言うんだよね。
「また我慢してるし。可愛げのない女」
かわいげのない、って。どうせ、意地っ張りでデブスですよーだ。……ん? また、ってどういう事だろ?
「今日黒川が北原に話しかけてた時さ、お前の顔滅茶苦茶惨めだったし」
「わ、悪かったわねっ」
うわ恥。今度から顔に出さないようにしなくちゃ。てゆーか私すごい見られてるじゃん。
「あんまりため込んだら、自爆すっぞ」
「え?」
それだけはっきり言うと、踵を返して屋上を出て行った。ため込むなって……言われたって。
「無理だよ」
だって、この恋は
私が我慢すればいいだけの恋だから。
ポタッ。
その時ポタリとアスファルトに水滴が染みを作った。
「あれ、私泣いて……?」
……ない。じゃあどうして水滴が? あー、雨降ってるんじゃん。ヤバーい傘持って来てないや。
「ってマジでヤバいじゃん! ちょ、濡れる!」
さっきまで泣いてたせいで思考回路が崩壊してたみたい。私は補助カバンを引っ手繰ると急いで屋上を駆け下りた。帰ったらずぶ濡れだなって思いながら。
( 狂った愛情と悲しみを、この雨が流してくれたらいいのに。そう強く思った )