コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome Wing ( No.12 )
- 日時: 2010/11/12 15:57
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
- 参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。
▼004
「って、走ってもどうせずぶ濡れになるんだよなあ」
校舎を出て、数分後。冷静に考えてそんな結論が出た。ゆっくりスピードを落として雨が服にどんどんしみこんでゆくのを他人事みたいに見ていた。
ああ、何でもない一日が終わった。何かもうつまんないな。小さい頃は何もかもが楽しくって、学校に行きたくて仕方がなかったのに。
ふう、とため息をついて近くにあった水溜りをバシャンッと思いっきり踏みつけた。ひんやりと冷たさが心地よかった。
——っくしゅん!
「ん? 誰か、居るの?」
家の近くの公園に差し掛かった時、小さなくしゃみが聞こえた。ブランコを見ると傘を差さずに固まっている女の子——ってあれ……!
「北原さん!?」
「あ、矢野さん……?」
長い髪を珍しく下ろしていて、その髪が頬にぺたりと張り付いていた。毛先からポタポタと絶え間なく滴が落ちてるのを見ると、長い時間そこにいたみたい。
「と、取りあえず私の家に行こう。シャワー貸すから服乾かしなよ」
北原さんの腕を引っ張ったけど、一向に立つ気配はなくって。あげく手を振りほどかれた。
「……い」
「え?」
初めて彼女は顔を上げた。そこで初めて彼女が泣いていたことを悟った。
「いいの、このままで。私が犯したすべての罪を洗い流しておきたい」
「〜〜っ洗い流すなら熱いシャワーで流しなさい!」
いつまでも座り続けていようとする彼女を強引に引っ張って家に連れて帰った。
「矢野さんごめんなさい、シャワーと着替えまで貸してもらって」
北原さんは私より背が高いからお姉ちゃんのお下がりを貸した。さすがピッタリ。
私は彼女をソファーに促して、ココアを渡した。すぐに帰られないように。涙の真相を聞くために。
「ううん、いいの。それよりどうしてあんなところで傘も差さずに?」
聞くと、何も言わずに俯いてしまった。あれ、やっぱり聞いちゃいけなかったのかな?
「ご、ごめん。聞かなかったことに——」
「いいの、どうせなら誰かに話した方がスッキリしますし」
顔を上げた彼女はやはり目に涙をためていた。少しでも揺らせばポロリと零れ落ちそうなぐらい。だけど決してその場から逃げようとしなかった。
「彼氏に、振られたんです」
( 折れそうな心を必死に繋ぎとめて。彼が去ってしまわないように )