コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome Wing ( No.15 )
- 日時: 2010/11/12 15:58
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
- 参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。
▼005
「か、彼氏に?」
「うん」
北原さんはシニカルな笑みを浮かべるとポツポツ話しはじめた。
「私たちは中二の夏から付き合っていて、私から告白したんです。『中一の時に一目ぼれした、付き合って下さい』って」
中一の時、星也が彼女を好きになった時だ。そんな、じゃあ星也が彼女を見ていたときには彼女はその男子を見ていたの?
何か報われなくて、どうしてか腹が立った。
「でも電話するのも、デートに誘うのも、全部私からで、彼は私の事好きじゃないのかなって。思い返したら返事は『別にいいよ』って曖昧だったし」
「で、今日……?」
ポタッと彼女の手に一粒滴が落ちた。
「私からフッたんです。彼の傍に居たら彼が迷惑するかもだし……それに、もう私の事なんか好きじゃないんじゃないかなって」
——でも、北原さんが別れたのは彼の為。じゃあ、彼女の気持ちはどうなるの? このままでいいと思ってるの?
「北原さんはそれでいいの?」
唇を噛みしめた彼女は私をすっと見据えた。その目からはとめどなく溢れる、涙。
「本当は……別れたくなんかない。ずっとずうっと一緒に居たい」
「なら、その気持ちが大事なんじゃ——」
「もう限界なんです!」
私の声を遮って叫んだ。
「あの人と一緒に居ることが辛い。隣に並ぶだけで心が痛い。それなら……叶わない恋なら、最初からしなければよかった!」
その悲痛な叫びが聞こえなかったわけじゃない。だけど、私の気持ちはどうなってしまうの? こんな恋一生叶わないじゃない。
「……じゃあ、両想いの恋しかしちゃいけないの? 人が人を愛しちゃいけないの?」
それからプッツリと黙り込んだ私たちはしばらくその場で座って固まっていた。
「……ごめん。取り乱したね」
「いえ、こちらこそごめんなさい」
二人顔を見合わせて同じ表情でほほ笑んだ。この笑みは仲直りの笑みなのか、こうするしかなかったのか、今でも分かんないけど。
人を愛することで傷ついていたのは、お互い様だったみたい。
( 悲しくなって、こんな時でさえ君に〝逢いたい〟 )