コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:    Monochrome Wing ( No.24 )
日時: 2010/11/12 16:00
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。

▼006


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 三年一学期末。

 「矢野は何処の高校に行きたいと思ってるんだ?」
 今日は学期末の進路相談。私は教室で担任と向かい合っていた。
 「まだ、決まってないです」
 そう、まだ志望校は決まっていない。成績も上位と中位を行ったり来たりしているから、何処が私の成績に見合っているのか……何もわからない。
 「そうか。矢野の成績なら東校とか春山女学院はどうだ」
 「春山女学院? 女子校ですか」
 東校はここ等ではレベルが高く、私では届くか届かないかギリギリのラインだから難しそうだけど、春山女学院なら……。

 女子校だし、星也の事も忘れられる?

 「——っ」
 ……違う。そんなの違う。
 そんな気持ちで高校を選んでしまうの? 彼を忘れるために自分の可能性を失ってもいいの?
 分からない、自分が何をやりたくて将来どうしたいのかも。
 眉間に皺を寄せていたからか、先生は苦笑いした。
 「まあ、そんなに急がなくてもいいぞ。よく考えてみなさい」
 「ありがとうございます」
 どうしよう、私どうすればいいの?


 「へえ、星也は東校かあ」
 帰り道。星也と一緒に帰っていた。高校に入ったらきっと皆別れちゃうんだろうな。
 「うん、北原が其処目指してるっつってたから。レベル高いから、難しいかもだけど」
 「大丈夫だよ。沙穂も心強いと思ってるよきっと」
 沙穂、と言った途端に彼は目をぱちくりさせ口をあんぐりあけた。なんだろ?
 「沙穂……って。いつの間に名前で呼んでたんだ」
 あの大雨の時から、私たちは少し話をするようになっていた。群れこそしないけど移動教室とか班分けとかすると、いつの間にか二人一緒になってるんだ。
 呼び方も「白羽ちゃん」「沙穂」と名前で呼ぶようになっていた、ほんとにいつの間にか。
 「沙穂、すっごいいい子だよ。私が保証したげる」
 「俺、中一から恋し続けてるんだもんな」
 沙穂の話をするときの星也の表情は柔らかい。愛しいものを見るような、そんな目。その度羨ましくって、僻みそうになった。けど、彼女の事は嫌いになれない。
 ——志望校も恋愛も分からないことばかり。

 どうすれば、どちらも解決することができるのかな。
 


 ( 恋愛も友情も脆くて壊れやすい。まるでドミノを崩してしまったように )