コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:    Monochrome Wing ( No.34 )
日時: 2010/11/12 16:00
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。

▼007


 「俺、告白しようと思うんだけど」

 「……は?」
 夏休みまであと数日って日の放課後。日直だった星也と教室で一緒に雑用をしていた。無理やり押し付けられたともいう。
 ホッチキスのパチンッという音と共にその言葉は告げられたんだ。
 「だからあ、北原に告ろっかなって言ったんだよっ」
 半ば照れ気味に彼は言い、私を見つめた。どうすればいい、とでも言いたげだった。
 「そーだね、もし成功したら夏休み一緒に受験勉強できるしね」
 「失敗したら、顔を合わせなくて済む」
 ははっと笑った星也、冗談交じりで言ったんだなって悟った。振られるってきっと思ってないんだろうな。
 自信はない。けど、もしかしたら……って期待してるんだよね。
 「そっかあ、頑張れっ」
 それだけ満面の笑みで言うとホッチキスをパチンッと鳴らした。これ以上は……何も、言えない。言ってしまったら、きっと、泣いてしまうだろうから。
 「白羽」
 「んー? なあに」
 顔は上げなかった。涙目なの、気づかれたくない。好きな人の前では、一番綺麗な私で居たいんだよ。
 「色々、ありがとな」
 「——べ、つに、お礼を言われるようなこと」
 してない、って言おうと思ったけど止めた。ねえお願い星也、これ以上泣きそうになること言わないで。
 もう逢えないみたいな言い方、しないでよ。
 「俺、さ」
 だから、ねえ。どうして君は……
 



 「 二学期が終わったら、東京行くから 」


 私の手を、すり抜けて行ってしまうの?



 ( 私の手は、一度だってあなたに触れることはなかったのに )