コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Monochrome Wing ( No.40 )
- 日時: 2010/11/12 16:03
- 名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
- 参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。
▼009
君がいるセカイが当たり前すぎて、居なくなるなんて考えたことなかった。私たちは二人で一つのようなものだって私は信じていた。
でも、星也はそう思ってなかったのかもしれないね。現に今私を置いて旅立とうとしてる。
一歩先に行ってるっていうのは間違ってなんかなかった。
「いつまで泣いてんだよ」
「ぐずっ……ゆざがぁ……」
ほらまた天敵。私が泣いてるときに限ってくる、天敵。
「ブスがさらにブスになるぞ。ほら立てよ」
「ひっく……ひどい」
ブスなのは本当だけど、大して反論できないくらい、私は今どうかしている。それくらいさっきまで泣き叫んでいたんだ。
「お前さ、星也星也って黒川に依存しすぎ。周りをゆっくり見てみろよ。黒川が好きでお前に嫉妬してる奴とか、お前の事が……す、好きな奴とか居るんだから」
好きな奴、って言った途端に湯坂は顔を真っ赤にした。好きな奴? 私を?
「そんな人いる訳ないじゃない……」
星也に依存してべったり引っ付いた私のことを好きでいる奴なんかいる訳——
「好きだよ」
「は?」
何が? 湯坂は誰に言ってるの?
「お前が好きなんだよ。矢野白羽」
「えっ、ええ!?」
冗談だよね? あんなに私の事きつく言ってた、ちょっかいかけまくってた湯坂が私のことを? からかわれてるんだよね、うんそうだ。
今までだって、散々、からかわれてきたんだもの。
「冗談とかじゃねえぞ。本気だからな!」
ホンキ、なんだ。どうしよう、湯坂は今まで私を恋愛対象として見ていたんだ。私は、どうなんだろう。
「え、ええとっ、私は……」
湯坂を、失恋の逃げ場所にしちゃいけない。させちゃいけない。
「——無理、です。星也が離れて行ったからって、湯坂に逃げる訳にはいかないから」
この時、初めて湯坂の顔を正面からしっかりと見た。逃げちゃいけない、この場所からさえ。
「そっか。じゃあいいや! お前……いや、矢野と喧嘩すんのが一番いい気がする」
強がらせてごめん、湯坂。ありがとう湯坂。だから、
「湯坂は一番の喧嘩友達だからね!」
あなたが優しくない優しさをくれたのも、涙を止めてくれたのも全部知ってるから。
私たちは夕焼けの道を、ほほ笑んで歩いた。
( ごめんでも、サヨナラでもなく、心の底からありがとう )