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Re:    Monochrome Wing ( No.57 )
日時: 2010/11/12 16:08
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。

▼014


 今日はいつもより早く起きた。自分で朝ご飯を作って、洗い物をして、制服をきちっと着た。いつもじゃあり得ない行動。
 私、変わりたい。フラれてなんだかそんな気分になった。夏休みで変わって、星也が私をフったこと後悔させてやる。
 そんな気分だった。気持ちも落ち着いてた。
 ねえ、星也? 私、あなたにちょっとは近づけてるよね?


 「おはよう、星也っ」
 「あ、白羽……」
 昨日の事を気にしてるのか、顔があからさまに強張った。そこまで気にしなくていいのに。
 「昨日の事、そんなに気にしなくていいのに。親友で居るってあんたが言ったんじゃない」
 「そーだよな。うん、これからずっと親友だからっ」
 今、私笑えてる? 不自然な笑顔じゃなくて、心の底から笑えてる。気持ちに区切りをつけることって、なんて気持ちがいいんだろう。

 「白羽、俺北原に告るのやめようと思うんだ」
 「えっ……どうして?」
 私が、告白したから? でも、それは私の事情だし、星也が気持ちを変える必要はないよね。
 「実は」
 「あ、星也君と白羽ちゃんっ」
 星也が口を開いた途端、噂をすればというのか沙穂が走ってきた。星也は口を引き締めると、先に行く、と走って行っちゃった。
 「ねえ……もしかして、タイミング悪かった?」
 「そうみたい」
 くすっと笑ってみせると、目を伏せた。何か、星也は隠してる?

 なんとなく、これから起こることを知ってる気がした。


 「じゃあ、HRを始める前に話すことがある」
 先生の長ったらしい話を聞き流して終わった終業式。いつもは満面の笑みで友達と話している星也は、眼鏡をかけて難しい本を読んでいた。
 こう見ると改めて、離れるってことを思い知らされる気がした。
 「え、何なに? 先生転勤するとか?」
 「縁起でもないこと言うな。えー、黒川の事だ」
 ザワッとクラスのざわめきが一オクターブ高くなった。星也の、こと……? もしかして、朝言いかけてたこと?
 星也が、遠くに行ってしまう気がした。でも、二学期までいるんだもんね。夏休みも過ごせるよね。
 まだ、居なくならないよね。
 「黒川、前に出てこい」
 眼鏡をかけた星也は新鮮だった。

 「えーっと、急だけど俺、夏休み中に転校することになりました」

 やっぱり。
 可笑しいくらい、笑えてしまうくらい、思った通りだと思った。行かないでって思う私もどこかにいた。
 どちらにしろ、あなたはいなくなってしまうんだね……。


 「でも俺、離れてもみんなの事忘れないから!」
 にっと笑った星也の笑顔は、嘘じゃないと思った。すっきりした表情で、もう本当の本当に、


 決意は揺らがないんだなって、悟った。


 ——さよなら、星也。


 ( 私は貴方になれないけど、変わることくらい許されるよね )