コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:    Monochrome Wing ( No.59 )
日時: 2010/11/09 21:08
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)
参照: 握りしめた手をひらいても、刹那の幻だった。

▼016 最終話 ——消エヌ想いハ



 白い翼を持つ鳩は、黒い翼を持つ烏に恋をした。叶わない想いに。伝わらない、伝えられない想いに苦しんで。苦しんで。
 けど、少しは変われたのだろうか。黒い羽を残して飛び立った烏を、泣かずに見送れたのだから。

 もう、泣かない。消エヌ想イハ、今日も空を飛んで未来を追いかけるから。

 ——————
 ————

 「会って、話がしたい」
 そう星也から電話が入ったのは、高校を卒業してすぐの春だった。電話が来るのは久しぶりだった。
 約束の喫茶店に小走りで向かう。向かい風が寒くて、コート着てこればよかったなって呑気なことを考えていた。

 カランカラン

 「いらっしゃいませーっ」
 心地の良い鈴の音と、元気のいいメイドさんがいた。会釈をして、彼を——星也を探した。

 ……いた。
 窓際で本を読んでいて大人っぽい男になってたけどあれは星也だ。私が間違える訳がない。
 ふと顔を上げた星也と目があった。暫く見つめてたけどにっと笑った。
 「白羽っ! 久しぶり」
 ああ、この笑顔。昔のまま。
 変わらない私と、変わった星也。だけどこう、知ってる部分を見つけるとうれしくなる。星也も、そう思ってくれてるかな?


 「星也の事好きだったよ。ありがとう」
 聞こえないようにつぶやいて、星也にもう一度笑いかけた。依存するのはもう終わり。
 
 「星也」

 あなたが黒い羽を残して行ったように、私もあなたに白い羽を残していくね。


 「星也、久しぶり」


 ここからもう一度、新しい恋を始めるの。



 E N D