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Re:    Monochrome Wing ( No.77 )
日時: 2010/11/15 20:40
名前: 美純 ◆dWCUS.kIT. (ID: kQLROmjL)

003


「いつまで泣いてんだよ」
「ぐずっ……ゆざがぁ……」
 校舎を出てすぐ、路地の奥まった公園に矢野はうずくまっていた。
〝悲しいことがあったら、いつもここに来るの〟
 そう言ってたのを思い出したから。
「ブスがさらにブスになるぞ。ほら、立てよ」
 あーもう俺、素直じゃねえ。本当は全部逆なのに。アイツを想っているオマエはめちゃくちゃ綺麗だ。
 だけど、あくまで笑っているときだけ。

「お前の事が……す、好きな奴とか居るんだから」
 顔を赤くしながら軽くカミングアウト。って、何言ってんだ俺! ——だけど矢野は鈍感すぎるのか、そんな人いる訳ないと否定する。

 もう、鬱陶しいっ。

「好きだよ。お前が好きなんだよ、矢野白羽」

 言ってしまった。

「冗談とかじゃねえぞ。本気だからな!」
 一応付け足しておいた。からかわれてると誤解していそうだったからな。
 ——俺って弱った女に告白して、付け込もうとするずるい男?

 でも、でもっ好きなんだよ!

「——無理、です。星也が離れて行ったからって、湯坂に逃げる訳にはいかないから」
 やっぱ、無理か。やべえ泣きそうかも。
「そっか、じゃあいいや。お前と喧嘩してる方が一番いい気がする」
 無理して笑ったけど、それよりも矢野に目を奪われていた。

 いつもと違う、大人っぽい微笑み。

「湯坂は一番の喧嘩友達だから!」
 と思ったら、悪戯っ子みたいな表情でそういった。その後すぐに踵を返して走って行った。

「……っ、完敗、か」

 涙が頬を濡らしていたのに気が付いたのは、そのすぐ後の事だった。



 (熱くなった頬を、涙がかなしく冷やしてゆく。もう前のように戻れないと知っているから)