コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 変人でっとひーとっ! ( No.15 )
- 日時: 2010/10/31 10:35
- 名前: むーみん ◆LhGj6bqtQA (ID: 20F5x0q3)
三話 守護霊の本体と新入部員
この二人には幽霊が見えている?
今まで誰にも気づかれなかったのに?
あ、いやちょっと待て。もしかしたらこの守護霊とかほざいている奴はただの人間で、それはもう度が過ぎたほどに影が薄いだけなのか?
でも浮いてるぞ、こいつ。あ、マジシャン? マジシャンの類?
そんな思考を巡らせていると、まりあ様は……あれ、なんで『様』つけたんだろう、俺。あ、そう言えば未だ縄に縛られている。
訂正、まりあさんは思いもよらない発言をした。
「まぁいいわ。“二人とも”入部希望ね、名前は?」
俺に向けていた恐ろしい顔とは全く違う、可憐な笑顔を二人に向けながらそう言ったのだ。
その質問にさっきこの部屋に入ってきた少女は、ポニーテイルを揺らして即答する。
「あたしは日向小春だっ!」
しかし、一方の守護霊は当たり前だが答えに戸惑っているようだ。
『えっと、私は……あの、私の本体、知りませ』
「ちょっと待てぇえ!」
俺はあわててその言葉を遮った。
この守護霊、もう少しでとんでもないことを口にするところだった。自分から言っていいものなのだろうか、それ。
「新くん、なんで邪魔するのよ」
さっきの小春や守護霊に向けたお嬢様的笑顔はどこへ言ったのか、まりあさんはそう言って再び俺を睨みつけている。
俺は精一杯の愛想笑いを返したが、どうも顔が引きつってしまったようだ。
一生かかってもこの人と対等に関わることはできなそうだな、と自分の存在の小ささを実感した。
そして、まりあさんは口を開いた。
「この際、例え幽霊部員でもどんな人でもいいから多く部員を獲っておきたいのよ」
「幽霊部員って単語の意味微妙に違いますよ! だって幽霊ですもん、まぎれもなく本物の!」
その言葉に、条件反射的に突っ込んでしまった。それも全力で。
探偵部の一室にこだましたその大きな俺の声は、次の瞬間驚きの波紋へと変わった。
「えぇ!? 幽霊ってまじで、本物?」
「へぇさっきから浮いてるし変だなと思っていたけど、そういうわけね」
あぁ、穴があったら入りたい。
いや、穴が無くてもどこか遠くに消えてしまいたい。
激しい後悔と、迫りくる質問と驚きの声に頭が混乱し、何より自分の妙なツッコミの早さを恨んだ。
意外にも、フォローしたのは守護霊だった。
『あ、幽霊っていうか、この人の守護霊で、この人に本体を探してもらってるの』
しかし、これほどまでに社交的な幽霊がいるだろうか。
自分が幽霊であることがばれてしまった(正確にはばらされた)にも関わらず、いつの間にかすっかりなじんでいる様子ですこし安心した。
「リアル幽霊初めてみたよー、よろしく!」
なにやら軽い感じのノリで小春が守護霊に握手を求め、守護霊も照れくさそうに握手を交わすと、小春はいちいち嬉しそうに飛び跳ねている。
なんか、かわいいな。
……というか、なんだこの光景。俺の周りに美少女がたむろっている。
俗にいう、ハーレム?
あ、いや違うな。俺、縄で縛られてるもん。なんか小汚い感じの扱いなんだろうな、と考えているうちに悲しくなってきた。
「……こうしましょう」
するとその時、まりあさんが妙に通る声で突然言った。
「新君は、この守護霊の本体を探したいんでしょう? あたしたちも探偵部として協力するわ。
ただし、新君も探偵部として依頼をこなしなさい」
「はい?」
ここに、蛍野風学園探偵の奇妙すぎる歴史が幕を開けた。