コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 変人でっとひーとっ! ( No.16 )
日時: 2010/11/03 18:46
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)

四話 守護霊さん守護霊さん、貴方のお名前なんですか?


「……まだ納得いかん」

探偵部に入部したその日、家に帰り、とりあえずコーヒーでも飲んで落ち着くが

『うわっ! 汚いわね…掃除ぐらいしときなさいよ』

この文句ばっかたれながらも人の部屋のベットを占拠する目の前の女子。霊体のクセに物には触れるし…

(にしてもコイツ本当に幽霊か? てかそれ以前に…)

新は一つ思いっきり聞き忘れていたことが何個かあった。まず一つめ

「お前さ、名前なんていうの?」

俺の問いにゴロゴロしてやがった霊体少女はゆっくりと振り向き——えらく不機嫌そうな顔してんな、おい

『……知らない』

「……ちょ、ちょっと待った。……よく聞こえなかったみたいだ」

より霊体少女に近づいて耳を構える。

「何近づいてきてんのよっ! 離れろ! この変態!」

(こ…この野郎……!)

新は自分の爪が手のひらに食い込むほど握り締める。
いってしまえば今朝、自分を跨ぐ感じで居座ってたのは変態ではないのだろうか。

「……それで? 何で名前がないんだ」

「うっ…」

…うっ?何のうめき声だよ。ていうかすげぇ汚物を見るような顔で睨むのはやめてください。
すげぇ傷つく。その顔だけで存在を否定されたような気分にでもなりそうだ。
もし変わってくれるのならば…


怖い顔から一変し、霊体少女は体を起こして少々戸惑いながら、手をモジモジさせながら…

『だって……私は貴方の一生の守護霊なんだもの……』

…なーんてな。あははは。んなわけあるかっての。

ゴスッ!

「いってぇっ!? 何すんだよっ!」

本日何回かのモンゴリアンチョップみたいな打撃。

『今アンタめっちゃくちゃ気持ち悪い顔してたからよっ! キモッ!』

「キモッて…」

そこまでハッキリいわなくても。ただ否定は出来ない。何せ考えてることは少々やましかったためだ。
うん、でも男だからしょうがないとも思うんだよ。これはしょうがな——

バスッ!

「うぎゃあああああっ!! 俺の目がぁああ!!」

見事に霊体少女の指が光の速度の如く(新にはそう見えた)俺の目を突き刺した!

『腐れ死ねっ! 何一人にやけながら頷いてんのよっ!』

「えっ! そんな顔してた!? てかそれぐらいで俺の光を失わせるのはやめてもらえませんかねぇ!?」

うぐぅ…眼からすげぇ、涙が止まらない。なんだろう、今ならすぐにでも三途の川が見れそうな…。

ゴスュ!

「ふがっ!」

字では表せられないほどの衝撃が新を襲った!

「ちょっ…今のは何もしてないだろ…!」

『今のはなんとなく。気分よ、気分』

「やりたい放題すぎませんかねぇ!?」

てなわけで話が脱線しまくったので修正することおよそ数分。

「えー…つまりだな。お前は目を覚ましたら俺に跨ってて? 守護霊ってのはその場しのぎか?」

『そ、その場しのぎじゃないわよっ! 本当に守護霊なんだからっ!』

たまに見せるツンデレ要素に何かと目を逸らしたりしながら問い詰める。

「じゃあ百歩譲って守護霊だとしてだな…どうして俺なんだ?」

『し、知らないわよっ! だって気付いたらあんたの上にいたんだもん!』

そうはいわれてもだな…。実際分かることはないのか?

とりあえず、考え、悩んだ挙句の結果…

「さすがに名前無しってのは何かと困るから、俺が名前つけてやるよ」

『……』

すんげぇ不機嫌そうな顔。今話しかけたら暴力じゃすまないような気を起こすほどに。
だがそんな態度もすぐに変わり、その代わりといってはなんだがブツブツ何か言い始めた。

『…クソ……潰す……南半球まで……沈める……』

…なんだか物騒なところだけがポツポツと聞こえるんだが…。
寒気が俺を襲っている中、「ふんっ!」とあまりにツンデレっぽいしぐさをした後

『つけるからには最高最強の名前をつけるのよ! いいわねっ!?』

最高最強の意味はわからなかったが適当に「はいはい」と相槌を打っておく。
さてと…俺のイメージでは何だかアニメツンデレキャラの名前が出てくるんだが。
というよりこれ…ギャルゲ?名前つけるとか…何だか俺…

ガスッ!

「いってぇっ!?」

『ニヤケんなバカッ!』

頭今日何回コイツに叩かれただろうか。まあいいさ、今となってはこの行動も可愛く見える…。
「ったく…」と霊体少女は言っているが顔を赤らめながら待っている。
しょうがない、と思って俺は思いついた名前を口に出した。

「お前はじゃあ——」

『あ、私の名前思い出した』

すごーっ!と、すごい勢いで俺は床をすべった。いやぁ…本当にすべるもんなんだな、これって。

「お前…人がせっかく——」

『私の名前は天音あまね

…言う術がなくなった。せっかく某アニメのツンデレキャラの名前にしようと思っていたというのに。

「天音か…そういえば俺も自己紹介まだだったよな?」

『あ、必要ない。藤沢 新でしょ? 探偵部入る時の書類に書いてあったわよ』

(こいつ、いつの間に…)

はぁ、とため息一つ吐いた後。次なる問題を天音へと問いかけた。

「…んで? お前風呂とかどうすんの?」

『は? お風呂? 入るにきまってんじゃない』

「いやだから……」

こいつは気付いていないのだろうか。俺は男、天音は女。つまりだな……

「俺と入る気か?」

『……』

しばしの沈黙。そして次の瞬間、視界が真っ白になったかと思うと遠くの方に花畑が見えた。

END

「んなわけあるかぁああ!!」

勢いよく起き上がる健全な男子高校生、藤原 新。
見てみれば自分の頬やら何やらはいつの間にか見事なまでに腫れあがっていた。

『アンタと入るわけないでしょうがっ! このド変態があぁぁぁぁぁ!!』

「ぎゃああああああ!!」

その後俺はもう一度花畑、というか川みたいなのを渡りきろうとする寸前までいったというのは
言わなくとも分かるだろう。

(俺も俺で変人なのかもしれないな…。てか、幽霊って風呂入るんだ…)

とりあえず今は名前だけでも分かったのだから進歩だろう。
俺があの乱暴美少女守護霊と別れるのはいつのことになるのやら…。その前に頭の方がイカれるかもしれん

そう、心の中で呟く新であった。