コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 変人でっとひーとっ! ( No.25 )
日時: 2010/11/13 18:24
名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)

6話 え?初依頼?これが?


暑い。そして、ダルい。頭が重く、何だか痛い。
此処まで聞くと風邪だと思う人がいるだろうな。しかし俺の場合は違う。え?何故かって?
話すと長くなるんだが…まあいい、簡単に言うと。


今、俺はぬいぐるみを着て校内歩き回ってます。暖かい温度の中を、だ。


「何コレえええええ!!」

そう、俺が叫ぶのも無理はない話。そうだろう?お前達だって俺と同じ立場になったら叫ぶぐらい——

ゴツッ!鈍い音きましたコレ。

『働けっ!』

「お前が言うなっ!」

後ろから聞こえた理不尽かつ横暴さが絶えない見た目は美少女の守護霊とかほざく野郎に怒鳴って返す。

「おい、どうした?」

小春が訝しげな顔をしながら俺へと近づいてくる。小春はぬいぐるみなど装着していない。

「あまりの君らの理不尽さに怒鳴ってたとこだよ…」

そういってまたため息を一つ吐く。

「何いってるのか全く聞こえないけど、仕事はしっかりな」

「あんた、とんでもなく都合いい耳してますねっ!?」

同じ学年とは思えないほどの言い分。てか俺の扱い最初からひどすぎる。
まず文句を言わせてもらうがこのぬいぐるみ。どうしてゴ●ラなんだ。

あ、ゴリラじゃなく、あの黒い怪獣のほうな。そっちのゴ●ラ。

それもこのゴ●ラ、何故か首の根元部分に顔出せる場所があって、まあそれほどデカいからなんだけど。
俺の顔があって、その上にゴ●ラさんがご立腹中というわけだ。ははは、泣きたい。

『……なんであんた、そんな泣きそうな顔してんの?』

「……ほっといてくれ」

そしてまた通り行く生徒にチラシを配る。まだ見たこともないし話したこともない生徒へと。
まず俺の第一印象は最悪だろうな。学校内でゴ●ラぬいぐるみ被ってるアホが他にどこにいるよ?

チョイスが悪すぎるというのもあるが、これだとまるで俺が変人みたいじゃないか。
あ、いや、待てよ…?探偵部に入ったというだけでもう俺は変人なのか?そうなのか?
だとすると本当、鬱になりそうなんだがどうしましょう、先生。

『……なんであんた、顔を手で覆ってんの?』

「ほ、ほうっておいてくれぇ……!!」

それにしても、何でこのような事態になってしまったのか。
それは全部、あの突如きた依頼のせいだ。
あの依頼のせいで俺がこうして…あぁ、言いたくねぇ……。




「依頼?」

「そ、依頼よっ!」

俺と小春、そして天音の三人は一同に顔を見合す。
少しボロ臭い机の前でその依頼とやらが書いているであろう紙を前に突き出したまま微動だにしない。
まりあはその体勢が、思ったよりしんどかったようですぐにへこたれた顔をすると腕を下げた。
こうしてみると可愛いとか思えるのだが、時々見せるS発言、S行為は何なのか。

「な、何か言うこととか……ないの?」

まりあは少し息切れをしつつもいった。どんだけこの人、体力ないんだろうか。
腕上げた状態のまま10秒も維持できないとは。

「えーっと……どんな内容なんです?」

見かねたのか、小春が頬を掻きながらゲームをひとまず置いて言った。
その言葉を待っていたかのようにみるみるうちに元気になり、まりあは告げた。

「子猫探しよっ!」

「……子猫探し?」




と、まあそんなわけで子猫を探すために特徴の書いたチラシを作って配っていたんだが…
普通の格好だと、誰も受け取ってくれないんじゃないかとかまりあさんが言い出して…

そして俺だけこのゴ●ラスタイルに。にしても他にぬいぐるみの候補ぐらいあったんじゃないのか…?
それに俺に対する見た目高感度がだだ下がり何だがどうしてくれる。

「にしても……猫、ねぇ……」

俺はまだ手元に何十枚とあるチラシを見る。

"白い毛並みのキュートな子猫です! この子を探しています! ご協力お願いします!"探偵部一同。

と、書かれていた。
今、改めてゆっくりと見たんだが…まず言わせてもらおう。

情報量が少なすぎるだろ。何だ、白い毛並みにキュートということしか特徴が書かれていないじゃねぇか。
それももし見つけたとしてもどこに知らせればいいのかとか、持って行けばいいのかとか
詳しいことに関して、一切書いてない。とにかく、何コレ?何コレ?
大事なことなので二回言わせてもらったのは言うまでもない。

「こんなんだったら日が暮れるまでここでチラシ配り続けるだろうよ……」

と、俺が呟いていたその矢先。

「あの……」

一人、男か女か分からないような奴が俺に話しかけてきた。

「え? 俺?」

横には小春がいるというのに、いまや学校内では変質者扱いの俺(被害妄想です)に話しかけてきた。
さすがのこの事態には小春は手元のチラシを落とす始末。ゴ●ラに負けよった。顔二つあるゴ●ラに。

「もしかして、その子猫って……あの子のことですか?」

そういってその男か女か分からないような顔をし、声は女の子っぽいが見た目はどこか男の奴が指を指した
その先は、俺たちのまん前にある樹のてっぺん近くの方を指指していた。
そしてそこには、白い子猫の姿。キュートはキュートだが、
赤い首輪ついてんだからそれ書けばよかったんじゃ…
今更思っていても仕方がない。ていうかずっと俺たちのまん前にいたというのがまさに屈辱。

「でも…たっけぇな……」

その樹は見上げるほどなかなか大きなもので、登れるといっても一苦労だった。
まず運動神経があまりない俺は却下だろう。

「あーじゃあ降ろすか」

小春がいきなりそう呟いて、持ち前の袋の中から何やら棒状の…

「金属バット?」

そう、それはまさしくベースボールに使用するあのバット。

「よっこらせっと」

そしてそれを何と、窓を開けて槍を投げるかのようにして

「ま、待てええええっ!!」

という俺の声も届かず、ものすごい速度で樹のてっぺん目掛けてぶっ飛んでいった。

「に、ニャアアアアッ!!」

ものすごい声を出してその子猫は思いっきりその樹から飛び降りた。
バットは見事その樹のてっぺん、子猫のいた場所近くへと命中。
当たった部分は抉り取られたかのような惨劇を生み出していた。

「お前何者だよっ!」

俺のツッコみはまた、廊下に静かに響き渡った。