コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 変人でっとひーとっ! ( No.6 )
- 日時: 2010/10/25 22:19
- 名前: むーみん ◆LhGj6bqtQA (ID: 20F5x0q3)
一話 変人たちの聖地
蛍野風学園探偵部——
そこは、変人たちの聖地だ。
『まず怪しいのは探偵部の部室ね。私の本体の気配がするような気がしないでもないわ』
迷惑な守護霊様の、明らかに適当でいい加減なその一言のせいで、ついに俺は、そこに足を踏み入れてしまった。
中は、部室と言っても空き教室を利用したもので、黒板があり、机や椅子が適当に並べられた一室。普通の教室と違うところと言えば、何故か教室の片隅にティーセットが綺麗に並んでいることと、依頼ボックスと書かれた安っぽい段ボール箱があることくらいだ。
幸い、今は誰も人がいない。早く守護霊様を納得させて、ここから出よう。
「ほら、本体なんてないだろ?」
『もっとちゃんと探しなさい! 今まで私はあんたみたいな何にもできないダメ人間を守ってきてあげていたのよ!』
「何にも出来ないダメ人間? 肉体がないお前よりマシだ!」
『だからそれをあんたが探すんでしょうが!』
「そもそも、それがおかしいんだよ、なんで俺がそんなこと……」
そう言いかけたが、ドアの方向に人の気配がしたため、あわてて口を閉じた。
——その時、ドアが開く今一番耳にしたくない音が聞こえた。
……まずい。つい、声を大きくしてしまったようだ。
『あら、だれかきたみたいね。私はどうせあんたにしか見えないからいいけど』
予想外の展開に、動揺しまくっている俺とは対照的に、後ろの奴は余裕の顔で笑っている。
すると一歩ずつ近寄ってくる人の気配を感じ、冷や汗が頬を伝った。
「……どなた?」
後ろから声をかけられゆっくり振り向くと、そこには清楚かつ上品そうな美少女が立っていた。
何を言えばいいんだ……。ここにいる理由を説明しようにも、“守護霊の本体を探しにきた”なんて言えるわけがない。
「あ、いや。あの……」
戸惑っていると、俺が言い訳を言う前に彼女が口を開いた。
「あ、入部希望者ね。ちょっと待って、今紅茶でも淹れるわ」
……ん?
入部希望だと?
この学園一変な部活に?
俺が?
危機感を感じた俺は、急いで紅茶を淹れる用意をいているその少女に声をかけた。
「あの、せっかくですが……探しものがあってここに来ただけなので、失礼します」
「え、なにか言った?」
「入部希望ではないので……、失礼します!」
「ふふっ、あなた……それ本気で言ってるの?この部屋に入ったからには、何がなんでも入部してもらうわよ」
彼女は、笑顔でそう言った。
その言葉には何かとてつもない殺気を感じ、寒いわけではないのに鳥肌が立った。
「あのね。この部、新入部員いないと廃部なの」
「あぁ、そうですか、大変ですねー。でも他を当たってください」
「……何回言わせるのよ。もしもう一回言ったら、その時はあなたの心臓が動いている保証はないわよ」
口角すら上がっているものの、そう言った彼女の目は笑っていない。
この女……外見と性格が一致していないのにも程がある。
完全にドSの匂いがするぞ、おい。
この時俺は本気で命の危険を感じた。
——というか、守護霊は、こういうときに活躍するべきじゃないのか?
なんでお前は知らないふりをして校庭のサッカー部を眺めているんだ。
「私、2年の井坂まりあ。よろしくね、新入部員」
え、あの……
「そしたら、この入部届けに名前とハンコ」
あ、いやそうじゃなくて……
「あ、ハンコ無いなら指印でもいいわよ、早く押して?」
……だから
「誰が入部するかぁぁあ!」
「誰がってそりゃ……あなたよ」
俺の抵抗は虚しく、その後思い切り脇腹を蹴られ、無理やり名前を書かされ
……入部させられてしまった。
守護霊様よ——
いつまでもサッカー部見てないで、俺を守れよ……。