コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 消えた明日のあいことば ( No.2 )
- 日時: 2010/10/28 20:48
- 名前: 月兎 (ID: dD1ACbVH)
【一章】逢言葉
一話
『今日からこのクラスでお世話になることになった。よろしく頼む』
堂々とした姿と口ぶりで話した人物に皆の視線が集る。
後方、黒板には手書きと思えないほど綺麗に、電子的な文字【月光 ゼロ】と書かれている。
「こんなことあるんだな」
頬づえをつきながら少年、詠語 否也は誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
その日、俺の眼の前に美少女が現れた。
空から降ってきたら、それは人間じゃないだろうに残念なことに。いや何が残念?
…転校してきた、いきなり。
「…ということだ。悪いなぁ、言い忘れてたんだよ」
ハハハ、じゃないだろ。
40代いくかいかないかの境目を彷徨ったクラス担任は続けて笑うと、彼女の肩に手を置いた。
「仲良くしてやってくれ」
彼女は心底嫌悪な顔をし、なかった。
でも笑う事もなく無表情で俺達を見ている、目線は窓側に向いていた。
「 」
「?」
窓の外、横を見ても何ら変わりない。
ただ雨が朝と変わらず降り続いているだけだ。
「何も、無いよな」
教室の一番後ろ、窓側の席に座る俺は窓から目をそらしもう一度彼女を見る。
すると、眼が合った。
「っ」
まさか、俺を見てたわけじゃ。ないよな…?
眼をそむけ机に突っ伏す。
そのとき俺の顔が赤らんでいたとか、そういうことは…
『どうしたの?あれれー?』
耳に声が入ってくる。
空いた俺の席の隣を挟んで、声の主は座っていた。
楽しそうに意地悪そうに笑いながら俺を見て、眼をそらす。
「千里、お前なんで笑って…」
俺を見て千里は指を指す。
顔が赤いとか、そういうのは無い…
「な、なんだよ」
そう思いながらも俺は声の主、幼馴染の【遠山 千里】を見るのを止めた。
『特に、ない』
もう、転校生の彼女は俺に見向きもせず質問攻めにうっとおしく感じながらも(感じてるのか?)滔々と返答していた。
「はぁ」
溜息をついてしまう。
勘違いをしたであろう自分に羞恥を感じる。
『っっ』
横から、怒りを買う千里の笑い声聞こえたが、無視した。
「それじゃあ、席は…」
担任の無駄に緊張感をもたらす様な言葉に、クラス全員が見渡す。
何処を?
教室を。
そして俺の隣の席に注目が集まっていた。
「あ?」
「そうだな、じゃあ否也の隣でいいか」
なんでそんなに笑ってるんだよ、担任。
クラス全員の眼が語る。
羨ましそうに、又嫉妬感丸出しで、いや。全員が俺を見てそう言っている。
対して俺は情けない声を出したんだけど。
「ここ、ですか?」
控えめに聞くと大きく頷いた。
無視か、別にここじゃなくたっていいだろ。
なんでわざわざ…
アレ?
なんで俺、こんなにこの席守ってるんだ?
なんで座ってほしくないんだ?
あんな美少女と隣なんてどんだけ嬉しいことか、分かってる筈なのに。
「あ、はい」
というか、なんでこの席空いてるんだろう。
「っ」
頭が痛んだ。
突然のことについ顔をしかめてしまう。
『ここでいい?』
その声が聞こえたときには頭痛は治まり、そして目の前に美少女がたっていた。
「あ、うん」
俺の言葉に、返答することもなく月光は、(いや多分アレ名前だよな?)席に着いた。
全然、何も聞いてなかった。
いや。耳に入ってこなかった、頭が真っ白になって…うん?
「なんだっけ…」
『?』
無表情でこちらを、みてくるじゃないか。
愛想笑いを浮かべてみる。
『 』
失敗したかな、これ。
そうして俺の美少女との同居生活…じゃなくて隣席生活が始まった。
展開は早いのかも知れない、この先起こることを考えたら…