コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 妖怪とチョコレート ( No.7 )
- 日時: 2011/03/27 23:01
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
* * *
「えーと、ここら辺のはずなんだけど……」
少女は呟き、当たりを見回す。
そこは、電化製品を売り出していたテナントの、指定駐車場の近く。
ここに、少女が求めている『あるもの』がいる、そういう噂が立っていた——。
少女——文下奏多(ふみしもかなた)は腐女子である。
男同士の人間関係に非常に心惹かれ、かつR指定がつきそうな行為をし合うのを大いに好む。
それがいわゆる、文下奏多が自称腐女子である証明かつ定義であり、突き詰めれば嫌というほどあるが手短にすませるならばそういうことである。
男性同士の絡みを妄想し、「えー、そのカップリングはなしでしょお」とさえ言っていれば腐女子。
アニメの男性キャラクター同士が同人誌というカタチで如何わしいことをしているものを買えば、それで腐女子。
奏多がそんな偏見を持って『腐女子』なり数ヶ月が経ち、その類の趣味を持つ友人も何人かできて、それなりに上々と言える毎日を送っている。
日々妄想。
常々思想。
時々瞑想。
それは大抵の人間に当てはまることであり、だが受け取り方によってはそうでないとも思われるだろう。
しかし、人間の思考が十人十色の千差万別と言ったように、詳しくは細かく枝分れ。
さまざま。
そしてこの場合は腐女子。
それも、かなり希少な分類に入る。
常日頃から、現実にBL(ボーイズラブ)というものがあってもいいと思う者。これは類稀なるものだろう。友人曰く「三次元男子のドロドロなんて目が腐るわ! ムスカみたいに目がぁ目がぁぁあ、よ。そんなの」とのこと。
だが、奏多はこれに属す。
故に、学校で男子生徒がじゃれ合っていると『そういう』妄想をしてしまうのだ。
それならば、全然安定している。気持ちを心で抑えることができる範囲だ。
しかし、奏多は数日前——『あるもの』を見てしまった。
物静かな、一思いに美少年とは言えないまでも、それなりにルックスはいい下級生が——
小柄な、これは一思いにチビと言える下級生を——
吹っ飛ばした。
という、そんな光景を。
それも、殴り合ったり取っ組み合いになったりとそんなことはなく、何やら安いライトノベルよろしくな超能力的雰囲気で。
ルックスのいい下級生が、少し離れたあたりからデコピンのようなモーションをし、そして指で弾くような動作をしたかと思えば、小柄な下級生が宙に浮き、冗談のように吹っ飛んでいった。
その後、奏多はさまざまな情報網を用いて、上記の下級生らの先輩であるところの、奏多にとっては同級生に当たる生徒のことを知った。
冬郷深染(ふゆさとしんじ)。
奏多のクラスメイト。そして上記の下級生らの一件の当事者とも言える人物。
さて。
そんなわけで、学校内での接触は生理的に嫌だったので校外に場所を選んだわけだが——
「あれー、あの話ガセだったのかな……」
某電化製品テナントの駐車場。
そこには、アスファルトという名の小石が散らばってるだけだった。
「とほほぉ〜……」
ふざけてそんなことを言うも、結果は何も変わらない。
明日出直そう。
そう思い、振り向くと——
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ、あのボブめ。ざまあ見ろ! あひゃゃひゃひゃひゃひゃひゃひっ!!」
——そこには、『ポッキー』を鼻に突っ込んだ、黒い格好をした、馬鹿がいた。