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Re:         恋時計 ( No.16 )
日時: 2010/10/31 12:23
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: zc76bp3U)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/




 第4話



 夏休みが終わり、10月にはいると、秋色がぐっと深まった。
 校門のソメイヨシノも、すっかりと色をつけた。
 あれまで、しつこいほど存在を主張していた、蝉の鳴き声も、ぴたりと止んだ。
 月末には、修学旅行というイベントが待っている。私は、絵磨と一緒の班になった。



 放課後、私はランドセルを背負って、教室を出ようとしたそのときである。
 いきなり前から、女子が現れた。私は「わっ」と少々声を出すと、女子は「あっ、ごめんね」と謝ってきた。
 どうやら隣のクラスの女子ならしい。女子は私の名前を口に出した。


 「どうしたの?」
 「あっ、えっと……三井君今日休みなんだよね、だから家の近い七瀬さん、よろしく」


 そういって女子は、優志の連絡帳を差し出した。私は「わかった」と返事をすると、受け取った。
 

 部活が終わり、私は孝文のもとへと行った。孝文は「なんだよ」と声を出す。
 私は無言で連絡帳を、孝文に突き出した。


 「よろしく」
 「……え、なんで俺が?」
 「同じ家だからじゃん、優志今日休みなんでしょ?」
 「えー嫌だよ、お前が届けろよ、頼まれたんだから」


 孝文は怪訝な顔をして、そう答えた。私は「いいから届けろ」としつこく突き出す。
 すると、孝文は突然、私の耳に近づいてきて「お前、優志が好きなんだろ」と囁いた。
 それと同時に、私の胸は高鳴った。吃驚した、驚いた。


 「なんでそっ、それ、それを……」
 「仕草でわかる、今年もバレンタイン渡してたじゃん」


 私は顔を真っ赤にして、唖然と突っ立っていた。孝文は「龍夜いこうぜ」というと、龍夜と一緒に、でていったしまった。






 優志の家のインターホンを押す。この家のインターホンを押すのは、かなり久しぶりだ。
 しばらくすると、家から辰雅がでてきた。辰雅はきょとんとした顔で「どうしたの?」と尋ねる。


 「あっ、これ優志の連絡帳」
 「……あーあ、ああ! ……そうだ、香織姉、家はいってきてよ」
 「え?」


 辰雅の突然の発言に、私は唖然とした。……家にはいる? 何をいってんの、この人は。
 いわれるがままに、私は辰雅に背中を押されて、玄関にあがってしまった。


 「いや、いいっていいって! 風邪うつるし、あと迷惑じゃん! 急にはいったら変だって!」
 「細かいことはいいから、直接渡してあげてー」


 私は逃げ出そうとすると、辰雅が突然「好きなんでしょ? 優志兄のこと」といった。
 私の足はぴたりととまる。心臓が強く鼓動をうった。振り向く。辰雅はにこにこしていた。


 「どいつもこいつも……なんでしってんだよ」



 私は、辰雅に聞こえないほどの音量で、そう呟きながら、しぶしぶ2階へとあがった。
 優志の部屋の前にいくと、私はやっぱり帰りたくなった。変だって! もうー。


 「じゃあ、僕が一緒にはいるから」
 「……うん」


 ドアを開けると、そこには布団の上に寝そべって漫画を読んでいる優志がいた。
 優志は、わたしに気付くと「うわっ!」と大きな声をだして、その反動で漫画を放り投げた。


 「……香織姉がどうしても、直接あいたいってい……うぷっ」


 私はとっさに辰雅の口を押さえて「はは……げ、げんき?」とぎこちない挨拶をした。


 「元気じゃないから、寝てるんだろ」
 「はは……だよね、あっ、これどぞ、でっ、では!」


 私は優志に連絡帳を渡すと、一目散に駆け出して、家をでた。そして、そのまま自分の家へ向かう。


 「ただいま……はぁはぁ、はぁ……」
 「……姉ちゃん、どしたの、そんな息切れして」
 「ちょっとね」


 不思議そうにそういう康義の質問に、私は適当に答えて、自分の部屋へ向かった。
 ふと胸に手を当てて見る。……かなりバクバクしている、今考えれば、すごいことだよね私。


 あーもう忘れよう、あのことは、あー!