コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:         恋時計     ( No.38 )
日時: 2010/11/28 19:44
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: zc76bp3U)
参照: http://happylovelife612.blog27.fc2.com/



 第10話



 朝。
 私は、何気なく朝の通学路を歩いていた。ふと、俯いていた顔をあげる。
 ……きーちゃんだ!
 私は、すぐにきーちゃんのところまで、走った。


 足音で気付いたのか、きーちゃんは、私が声をかける前に、振り向いた。


 「お、香織、はよ」
 「おはよう! ……ねぇ、昨日愛可とはどうだったの?」
 「ああ」


 きーちゃんは突然、目を泳がせて、話を始めた。


 「なんか、優志と怜緒と話してばっかだったよ。やっぱり、愛可は俺のことなんか……」
 「えぇー、話しかけたらよかったのに!」
 「う〜ん……なんか、俺やっぱ邪魔かな。やっぱ、愛可と帰るのは辞めようかな」


 えっ、それはやばい。きーちゃんが話しかけてくれないと、愛可は優志と……。
 このまま仲良くなったら……それで、それで、相思相愛になっちゃったら!?
 そうなったら、あたしもきーちゃんも困る。


 「なんでっ、最初から諦めてたらダメだって、頑張ろうよ!」
 「そういうおめーはどうなわけ? お前好きな奴いんの?」
 「うん……あ、自分だってアピール頑張るから、きーちゃんも頑張ってよ」


 私がそういうと、きーちゃんは少し顔が明るくなり、頑張ってみると叫ぶと、ダッシュで学校へ向かった。私は、きーちゃんの背中をみて、ホッとするばかりだった。


 

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 数日後。文化祭が近づいてきて、あたしたちは、毎日遅くまで練習に明け暮れていた。
 今は休憩中。私は、絵磨に、きーちゃんのことを話した。


 「へぇーそれで、今きーちゃんがんばってんだ?」
 「そうなんだよ、このまま頑張ってくれたら、いいんだけどね」
 「……ウチさあ、考えたんだけどさ」


 絵磨が突然、真剣な表情になった。私は、唾をごくりと飲み込んで、絵磨の話を聴く。
 

 「ウチら、きーちゃん応援してるだけで、ウチらは何もしてないよね……」
 「……確かに、そうかも」


 これからも、優志は大好きな優志は、愛可と帰るに違いない。きーちゃんが、少しは愛可と話せるようになったけど……。やっぱり、こちらとしては、優志が、他の女子と話してるなんて、嫌だ。


 「今日、優志に話しかけてみる!」
 「おぉ! じゃあうちも怜緒に話しかけてみる!」
 

 そして、あたしたちは「一緒に頑張ろうね」といって、笑いあった。


 「……仲良しなのはいいけど、そろそろ練習すっぞ」


 龍夜の声がして、私は振り向いた。龍夜は休憩を終えて、すでにベースを所持している。


 「はやくしろー!」


 孝文がおおげさに、スティックを振り回しながら、そういった。
 私は「はーい」と返事をすると、自分の位置についた。
 ……文化祭のライブ、キミはみてくれる? 私がキーボード弾いてるとこ、みてくれる?
 キミの視界に、私を少しでもいれてくれる? 



 


 「ゆっ、優志っ!」



 思いっきって声をかけた、帰り道。今日は、どうやら優志は1人ならしい。
 愛可が、ピアノの練習があって、先に帰り怜緒は別の道から帰ったらしい。



 「……何」



 優志がゆっくりと振り向いた。その瞬間、心臓がどくんと打ち、顔が真っ赤に火照った。
 やっぱり話しかけなきゃよかった……そんな後悔が、私の頭の中を駆け巡る。
 とりあえず、なにか話さなきゃ。



 「あっ、あの、その……一緒に、帰っていい?」
 「……? ……まぁ、別に……」


 優志はそういって、視線をあたしから離した。私は少しホッとし、優志の隣に並んだ。



 「…………」
 「あのさ」
 「はっ、はいっ!」



 優志から話しかけてくるとは想わなかったので、私は心臓がとまるくらい吃驚した。



 「なんで、急に?」
 「いやあ……なんか、そのっ、ひさしぶりにっ」
 「ふぅ〜ん」


 優志はずっと無愛想なまんまだ。優志の横顔、見てるだけでドキドキしてくる。
 私は思わず、下を向いた。……やばい、隣にいるってだけで超やばいっ!


 「あのさ、昔はよくあそんだよね、あの防火水槽とか秘密基地にして」


 
 確か、小3のころだったとおもう。私は、近所の女の子と一緒に、よくあそんでいた。
 それで、外から丸見えな、防火水槽の区域を、秘密基地にしていた。
 赤レンガで造られた防火水槽の上にのっかり、絵をかいたり、ゲームもしていた。



 「……あぁ……あのときはうざかったな」
 「うっ」



 そのころ、私は優志のことが大嫌いだった。嫌味ばかりいうし、2・3度泣かされた記憶がある。
 それでも、一緒に防火水槽で遊んだり、孝文や龍夜などいれて、大勢で公園で遊んだりした。


 「でも……いい思い出じゃない? まじあんときたのしかった」
 「そうか」



 いつのまにか、もう家についていた。優志は何もいわず、自分の家に向かう。
 私も何も言わず、自分の家に帰った。




 今日は、少し幸せな日だった。