コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:     恋時計     ( No.64 )
日時: 2010/12/23 22:39
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
参照:  ▼   若干書き方かぇました 枠が広くなってる!




 第16話


 
 「それではまず1曲目! 聞いてください!」

 
 純也先輩のその声と同時に、演奏が始まった。キラキラと光るライトはとても綺麗で、3人の先輩の演奏をさらに際立てているように思えた。純也先輩の奏でるギターと、美声。大和先輩の重低音のベース。健先輩の豪快なドラム。
 全て、全てが素晴らしく私は物を食べることすら忘れて、ステージに見入った。皆は小声で「すごいね」「綺麗だね」とささやいている。その時間はあっというまに終わり、演奏が終止符を打つと共に、絶大な拍手が起こった。


 「純也君超かっこよかったー!」
 

 凛子先輩が、頬を紅潮させていつもみせないような、興奮ばりをみせた。きっと、きっと、凛子先輩には純也先輩が、いつもよりどんなものより、輝いてみえたのだろう。……なんとなく、凛子先輩が純也先輩を好きな気持ち、わかるきがする。


 ご飯を食べ終わると、私達は各自の部屋に戻り、お風呂に入るなりテレビをみるなり、リラックスタイムが始まった。そして、布団にはいるころに、きっとお待ちかねのガールズトークがはじまる……そうおもったけれど……。


 「ごめん、ウチもぉねるわ〜」
 「私もはしゃぎすぎて疲れちゃった」
 「おやすみなさ〜い」
 「Zzz……」


 順に里子先輩、凛子先輩、絵磨。花先輩なんてもう熟睡状態。電気を消して、あっというまに静まり返ってしまった。一方私は、何故か全然眠くなかった。今からでももう一度、さっきのコンサートを聴ける。
 でもとりあえず眠ろうと思い、目を閉じた。……しかし、それから何十分たっただろうか、なかなか眠りにつけずにいた。


 「……香織ちゃん、起きてる?」


 突然、桜先輩が小さな声でそう呟く。私は「おきてます!」とつい、大きな声を出して返事してしまった。一瞬ハッとして、辺りを見回すが、皆は起きる気配がなく、ホッとした。私も桜先輩も、布団から起き上がる。そして、部屋の奥にある小部屋に移動した。


 「私なんかねむくなくてさ〜ここ来る前に、昼寝してたし」
 「そうなんですか!? ……実は私もです」


 そういって、私達は「同じだね」といって笑いあった。ふと、窓から景色を眺める。私は思わず、感嘆した。無数のイルミネーションが、美しく輝きを放っているからだ。今日はクリスマスイブ。そうだよ、今日は聖なる夜なんだ。



 「……ねぇ、香織ちゃん、優志君とはどう?」
 「進歩……してないっすね」


 せっかくこの場に一緒にいるのだから、何かしないとまずい。それは自分でもわかっていた。わかっているからこそ、焦る。最近優志は更に遠くなった気がした。もう……昔の優志はいない。そんなことを、桜先輩に私は告げた。桜先輩は、優しい表情で黙ってうなずいてくれた。


 「わかるわかる! 私も純也君とかみてて思う!」
 「桜先輩もですか? ……いつも毎日、喋ってるのに?」
 「……そんなに喋ってないよ、昔よりはだいぶ口数減った」


 桜先輩はそういって、突然悲しげな表情に変わった。桜先輩と、純也先輩と、凛子先輩は幼稚園の頃からの幼馴染で、家も近所で昔は毎日のように遊んでいたらしい。今でも仲がいいのを見て、私は少し羨ましく思った。


 「……凛子が、凛子がっ……純也君をすきっていったでしょう?」
 「はい、すっごく好きですよねー」
 「……香織ちゃんにならいってもいいかな、あたしもなの」
 「えっ!?」


 桜先輩は、最後のほうは耳打ちをしてそういった。私はとても驚いた。今までそんなそぶりがなかった、といえば嘘になる。なんとなく私も、桜先輩が純也先輩に、熱烈な視線を向けていたりしていることは、気がついていた。

 「でも、凛子見てたら、邪魔しちゃいけないなって。それでちょっと距離を置くようになったの……そしたらいつの間にか、声も低くなっちゃって、背も高くなって、ギターも上手くなって、なにもかも、変わっちゃった」


 「まぁ変に情に熱いとこは変わってないけどね」と付け足して、桜先輩はかすかな微笑を見せた。


 「……ちなみに、いつから好きなんですか?」
 「そうねえ……小3くらいのときかな? 諦めようとおもっても、なかなかできなくて、想いを引っ張ってるかんじ」


 “諦めようと思っても”その言葉に私は、敏感に反応した。実は、優志のことをあきらめようと思ったことが、何度かある。叶うはずない、告白する勇気もない、だったら諦めた方がいい……それでも君は、私の気持ちから離れない。諦めれない、想いを引きずってる。

 「これいったの、香織ちゃんが初めてなんだからねっ!」
 「……そうなんですか? ……なんか嬉しいです」
 「香織ちゃんも、絵磨ちゃんの次に私に、優志君がすきだって伝えてくれたしね」
 「はい……私、このこと誰にも秘密にしておきますね」

 そういって、私は桜先輩と世間話や、昔話を語って、ようやく2時間ほどして眠りについた。


 君への想い、届くように、少しでも……頑張ろうかな。
 そんな気持ちが、沸いてきた気がする。
 君の隣に座りたい、君の一番になりたい、大好き。