コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋時計 *半実話* ( No.477 )
- 日時: 2011/02/26 15:55
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
- 参照: ▼ でーはーひーはーあげぽよさげぽよ(何
第62話
放課後、私は絵磨と並んで音楽室のドアを開けた。私は一瞬目を疑った。だって音楽室の隅で、里子先輩が座りこんでるんだもん、背中向けながら。右手には、コンセントでつながれたドライヤー。私はおそるおそる、里子先輩に近寄った。
「あのぉ……なんでドライヤー……」
「…………」
ドライヤーの音で聞こえないのか、里子先輩は黙ったまま。すると健先輩がやってきた。
「6時間目がプールの授業だったんだってよ。で、なかなか髪が乾かねぇんだって」
「ちょっと里子ぉ、早く練習しようよ!」
凛子先輩も、腕を組みながら里子先輩に大声で叫ぶ。里子先輩は、くるっとこっちをみたかとおもうと「先やっといて」といって、また髪を乾かしはじめた。
「あ〜かわかねぇ〜……これずっと使ってるしなぁ〜買い替えようかなぁ〜」
「ちょっと新垣さん!!」
あまり放課後の音楽室では聞きなれない声が聞こえた。里子先輩も手をとめて、皆が声のするほうをみる。そこには、仁王立ちで眉をひそめている、春香先生の姿があった。
「学校にドライヤーを持ってくるのは禁止されてるはずよ!」
「いいぢゃ〜ん別に〜電気通すとこもあるんだしぃ〜」
すると春香先生はコンセントを抜いて、ドライヤーをとりあげた。
「ちょっとなにすんの春ちゃん、返してよ!」
「ダメ、下校するまで没収ね」
「はぁ〜〜〜!? 春ちゃんのケチーっ」
里子先輩は文句をぶうぶういいながらも、ドラムのスティックを握った。ん……? そういえば、なんか里子先輩、イメージ変わったような? 聞こうと思ったら、純也先輩が先に聞いた。
「里子、黒染め? それ」
「そうなんだよーほらうちも一応受験ぢゃん? 真面目にしなきゃねーって、うち優等生ー」
「ふぅ〜ん、なんか大人っぽくなったな」
「えっそぉ?」
先輩達の会話をみていると、背後か春香先生が話しかけてきた。
「ちょっとCloverの6人、こっちきて」
春香先生のあとをついて、準備室にやってきた。
「どうしたんですか?」
龍夜が不思議そうな表情を浮べ、尋ねる。
「前のお祭の舞台のことだけど、7月23日の午後3時に現地集合ですって。ドラム以外は楽器持ってきてだって」
「リハとかするんですか?」
「多分ね」
おぉおおおお〜ッ、なんかかっこいいい、テンションあがってきた!!
当日の詳しい説明を聴くと、私達は音楽室に戻った。春香先生は、部員全員に叫んだ。
「今日は私が様子見とくから、練習はじめなさいよーっ」
「へーい」
純也先輩が、大声で返すと皆はそれぞれの位置に散らばった。私も、キーボードを組み立てる。
……とはいってもなんかなぁ、今日は練習する気がわいてこない。眠いというか、今日は遅刻ぎりぎりに起きたからなぁ、早く帰って寝たいし、おなかもすいた。春香先生はというと、テストの採点とかしてて、あんまりこっちみてないし……。
よし、こういうときは、誰かのとこいこう……皆練習忙しそうだけど、孝文は暇そうだった。
「いぇーい、ばいざうぇいまぐなむうぇ〜い」
私は意味不な言葉を発して、変なダンスを踊りながら孝文に近づいた。
「……何」
孝文は、呆れたような冷めたような顔で、私を見た。なっ……前は、変なことしたら笑ってくれたのに! すると、孝文が真面目な顔をして「それより、わからんとこがあるんだよ」といってきた。
「どしたの」
「どうしても出来ないとこあってー難しい。あっそうだ! ちょっと合わせてくれね? 楽譜の3段目」
「……りょ、了解!」
私は、キーボードを引っ張り出した。あれっ、眠気がなんか吹っ飛んだ!
「〜♪〜♪〜♪」
「……う〜ん、やっぱむずかしい」
孝文は、不機嫌な顔になった。私はおそるおそる「うちの演奏ダメだった?」と尋ねた。
「別に。合わしてくれてありがと。ちょい聞いてくるわ」
「うん」
孝文は楽譜を持って、席をたった。……な、なんかあれだ、孝文ちょっと大人になった? 声も若干低くなったし、背もだいぶ高くなってさぁ! 健先輩なんか余裕に越してるし! 孝文は、里子先輩に話しかけた。
「どしたの、孝文」
「あ、ここなんですけど〜」
「ああ、そこわね〜……」
よくきこえなかったけど、里子先輩と孝文は時々笑みを浮かべながら、話し合っていた。
「……ん」
私はなんだか、自分に異変を覚えた。いや、自分の心っていうの? よくわからないけど、胸が少し痛んだんだ。なんでかって……そりゃあさぁ……私はもういちど、孝文をみた。やっぱり、痛む。里子先輩と笑ってるとこみて……——
「うわぁああ、違う違う! 違う!」
私が好きなのは、優志! 優志なんだよ優志だよ、優志さ! 孝文なんかどうでもいいのさ!
「何が違うんだよ、姉貴」
「なんでもない!」
私は自分で自分を抑えるのが精一杯だった。