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Re:     恋時計 *半実話* ( No.504 )
日時: 2011/03/02 20:40
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
参照:   ▼  2年生もぁと15日



 第65話




 「あっ、香織ちゃん、待って!」



 部活が終わり、現在6時半。鞄を持っていそいそと音楽室を出て行く私を、桜先輩が呼び止めた。


 「なんですか?」


 私はゆっくりと振り返って、桜先輩のほうを向いた。


 「今日水曜で絵磨ちゃん塾だから、いないでしょ? 一緒に帰らない」
 「あっ……ごめんなさい、ちょっと急用があるんです」
 「そぉ? じゃあまた明日ね!」
 「はい、さよなら!」


 私は桜先輩に背を向けてそういうと、一目散に階段をかけあがった。
 ——行ったらダメ、桜先輩たちと帰って
 ——約束すっぽかしちゃえ
 なぜか、もう1人の自分がそういってる気がした。でもそんなのどうでもよかった。何故か、足が勝手に動くのだ。屋上まであと……少し。私は、屋上のドアを「バンッ」と勢いよく開けた。息が切れる。


 「来たか、七瀬」


 怜緒が、ポケットに手をいれながら、ゆっくりと近づいてきた。私は……目を疑った。
 怜緒の後ろには、暮れかけの夕日の逆光を浴びる、美里奈に、愛可に——……





  優志。






 「……え?」



 私は目を丸くして、思わず声がでた。3人は、屋上のフェンスにもたれかかっている。すると、怜緒が口を開いた。



 「今日は、お前に話したいことがあって、ここに呼んだんだ」
 「いやぁ〜香織、昼休みも放課後もいっつも絵磨と一緒だからさぁ、呼び出すの手こずったわぁ、まぢで」
 「水曜絵磨が塾でいないってきいちゃったもんねー」


 怜緒、美里奈、愛可がタチの悪い顔つきで、順番にそういった。


 「何話って」
 「……わかってるくせに」


 私が3人を睨みながらそういうと、怜緒は私をあざ笑った。


 「勘違い女。いい加減優志も迷惑してんだよ、諦めたら?」
 「はぁ? 意味わかんない、美里奈」
 「……だから! 優志にはどんだけアピたって、届かねぇ存在なんだよ!!」


 怜緒が、強く言い放つと、愛可は突然優志のほうに近づいて……——


  優志の腕を、ぎゅっとつかんだ。



 「7月2日、愛可たちの記念日」
 「え」


 愛可はそういって、悪魔のような笑みを浮かべた。すると、美里奈も怜緒も「ははははっ」と声を出しながら、笑い始めた。そして、優志も……—— 私の鼓動は、次第に早くなっていくのがわかった。そして、はちきれそうになった。
 
 すると優志は、鞄からなにか袋を取り出して、私に近づいてきた。



 「これ、なんだかわかる?」
 「……そ、それって!」


 そう、その袋は紛れもなく……


 私がバレンタインの日にあげた、チョコだった。



 




 「食べる気、しねぇから。こんなの」







 優志は、そういって袋から手を離した。



 袋は、意外に大きな音を立てて、地面に落ちた。