コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:     恋時計 *半実話* ( No.506 )
日時: 2011/03/02 21:53
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
参照:   ▼  2年生もぁと15日



 第67話



 私が家に帰った頃は、7時を過ぎていた。私は真っ赤に腫れあがった自分の目を、鏡で確認した後、ゆっくりと階段をかけあがり、自分の部屋にはいった。そしてまず、パソコンのメールボックスを開いた。


 「 From.香織

 今から会える?絵磨 」


 
 私は、それだけ打って送信した。なんだか、画面がぼやけてきた。まだ涙がでるんだ、私。



 返信は、その10分後くらいにかえってきた。



 「 From.絵磨

 今塾終わった(− −)/
 どうしたの?なんかあったの? 」

 「 From.香織

 悪いんだけど、今から公園きて><
 最悪なことあった…… 」


 私はそれだけ送信すると、着替えることすら忘れて、外に出た。息を切らして、走った。公園まで。まだ絵磨は塾からでてきたばかりで、バス乗るから時間かかるのに。私は、はやく絵磨に会いたかった。


 日がすっかり沈み、真っ暗になり街灯だけが唯一の光を放つ、公園にはもちろん、子供の声なんてしなかったし、犬の散歩をしている人すらみあたらなかった。私は、砂場のほうに視線をやると、大きな砂山が造ってある事に気がついた。

 子供が作って、そのままおいて帰ったんだろう。綺麗にお花とか、葉っぱとかが並べられている。砂山の下のほうには、穴が開けられているから、多分これはトンネル。


 私は、その砂山に触れて……立ち上がり、その砂山を、ぐしゃ。踏み潰した。


 ぐしゃぐしゃに乱し、砂や花や葉っぱがそこら中に散らばる。もう、砂山の跡形なんてなかった。もしまだ作ってる途中だったら、きっと明日子供はこれをみて、がっくりと落ち込むだろう。

 でもいまの私は、そんなの気にしなかった。どうでもよかった。落ち込めばいいんだ。そんなの、私の傷に比べたらどうってことない。なんていう最低なことを考えた。


 「あぁああああああ!」



 私はとりあえず、荒れた。近所迷惑なのに大声で喚いた。誰がどうみても、頭のおかしい人にしかみえない。



 「香織!?」



 絵磨は、私に気がついて私の元に走ってきた。息を乱しながら、私の肩をぎゅっとつかんだ。



 「香織、香織、どしたの!? 大丈夫!? ベンチではなそ」
 「ん……」

 私は少しだけ落ち着き、絵磨に肩を抱かれながらベンチに座った。



 「……一体、なにがあったの!? これ、自販機で買ってきた。あげる」
 「ありがと……」


 私は、絵磨から冷たいリプトンをもらって、それを口にした。夜といえど、夏の夜は蒸し暑い。リプトンは、とても喉を癒してくれ、また私を落ち着かせてくれた。私はついに「実はね」と口を開いた。

 さっきまでのことを、私は涙をこぼしながら、一生懸命はなした。絵磨は、だまって、だまって、うなずきながら聞いてくれた。時折、向ける視線に写る絵磨の優しい目が、優しい表情が、さらに私の涙腺を崩した。


 「そっか……怜緒も美里奈も愛可も、三井君も……そんな人だったんだね。愛可や美里奈はともかく、三井君がそんなんだったんだってね……あの人、まぁいい人だとおもったんだけどなぁ。やっぱ、人ってさ……



 簡単に信じちゃ、いけないよね」



 私は「うん」と強くうなずいた。絵磨は話を続ける。




 「このこと、話してくれてありがとう。しかも、私なんかに。人はさ、簡単に信じちゃいけないよね。いつ裏切られるかわかんない。だから、怖いよね。うちも、怜緒の件、ショックだった。でもね?

 私は、香織のこと、信じてるよ?」
 「……っ……」


 なんで、なんで、絵磨はそんなに私に優しいの? 私、この前怜緒のこときいたとき、なにもいえなかったのに。何も力になれなかったのに。でも、絵磨は違うんだ。絵磨はね、私に優しい言葉をかけてくれた。私、絵磨だけは心から本当に信頼してるよ?


 「絵磨……ありがとう……絵磨っ、やさっ……し……いっ、ね……」
 「……あ、明日さ、家まで迎えにいっていい? 一緒にいこ学校」
 「え、いいの?」
 「うん」


 絵磨と私は、家がそんなに近くない為、行きはいつも別々だった。


 「これから、毎日迎えにいく! で、うち4組までいくわ……怜緒たちに、いってやりたいことあるから」
 「う、うん」


 絵磨はそういったけど、もしかしたらこの件で、私は学校にいかなくなるかもしれない、それを心配してそういってくれたのだ、と私は悟った。私は、零れる涙をハンカチで拭う。


 そのとき、私のおなかが「ぐ〜」と鳴り響いた。


 「……もう7時半だね。おなかすいたしょ、帰れる?」
 「うん……ごめんね、公園まで来てもらって」
 「全然いいよ、さっいこっか」


 私は絵磨と手を繋いで、公園をあとにした。
 絵磨、大好き。
 それは照れくさくて、いえなかったけどね。