コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋時計 *半実話* ( No.509 )
- 日時: 2011/03/03 19:14
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
- 参照: ▼ 2年生もぁと14日
第68話
翌朝、私は何事もなかったかのように、普通に準備して、普通に家をでた。でもこれは、絵磨が迎えに来てくれるから……っていうのもある。絵磨がいなきゃ、今日はきっとまだ今頃布団の中で、ため息をついていただろう。私は、玄関のドアをいきおいよくあけた。
「おっはよぉー! 絵磨!」
「おはよ、いこっか」
絵磨は優しい顔でそういってくれた。私は絵磨と肩を並べて、いつもの通学路を歩き始めた。夏休みを5日前に迎えた今日は、昨日と比べて格段に暑くなっている。蝉の鳴き声が聞こえ、きっと今週の休みの日は、プールや海水浴が賑わうに違いない。
「にしてもさー暑くない? 梅雨が明けたのは嬉しいけど」
「うんうん!! なんか、立ってるだけでぶわーって汗かく!」
そういって私は、「ぶわ〜」とかいってふざけてみた。絵磨は笑ってくれた。絵磨に、心配させたくなかった。
「ね! 夏休みもいっぱい遊ぼうね! お祭いったり花火みたり、プールいったり! アイスたべたりー。あ、あとさ、お泊り会もしよ! いっぱいやりたいことあるね!」
「そうだね!! ……来年の夏は、もうそうもいってられないからね」
絵磨はそういって、ちょっと寂しげな顔をした。忘れてたけど、そういえば来年は私も高校受験生の身。ずっとずっと“受験”なんて他人事だとおもってた。けど、来年の今頃は……——
「ってごめんね、こんな辛気臭い話して。もうすぐ学校着くよ」
「うんっ」
私は絵磨といっしょに、校門をくぐった。
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絵磨は1組の教室を通り過ぎて、そのまま4組に訪れた。私も絵磨も、4組の教室を、入り口付近から見回す。……怜緒らしき人は、見当たらなかった。絵磨は、近くにいた女子に話しかけた。
「ねぇねぇ、姫吉怜緒しらない?」
「姫吉……? それなら、なんか1組の藤山さんたちとどっかいったけど……どうかしたの?」
「ちょっと用がね、どこいったかわかる?」
「なんか、1階いこーとかいってたから、そのへんじゃない? 何、告白?」
「ちがうよ! ありがとうね!! じゃ」
絵磨はそういうと、私の腕を引っ張って、走った。1階のところへ……何故、私は絵磨についていくかというと、私自身もいいたいことがあったからだ。怜緒、じゃなくて優志に。優志はきっと、怜緒とそして美里奈や愛可と、一緒にいるだろう。
「いたっ」
階段の裏側に、例の4人がたむろしていた。4人は、私達をみつけた瞬間、顔つきが変わった。目を見開いていたり、細い目をさらに細くして、睨みつけたり。いずれにせよ、とてつもない変顔になってることに、変わりはなかった。
「あれ、香織ちゃーん! なに? お友達引き連れて昨日の仕返しですかぁ?」
美里奈が、変顔ですごい勢いでこちらに迫りながら、そういった。
「別に。あんたに用はないよ。絵磨は怜緒に用があって、私は優志に用がある」
「用ってなんだよ」
それをきいた怜緒が、すくっと立ち上がった。絵磨は「こっちきて」といって、怜緒をつれたままどこかへ行ってしまった。美里奈はただそれをみているだけで、なにも言わなかった。
「んで、お前は俺に用があると」
「そういうこと、来て」
私は、腕組みをしながら優志を後ろにつれて、絵磨とは反対方向に歩き始めた。美里奈は「愛可、3組ではなそぉ〜」とかいって、階段をのぼりはじめた。とくに行く宛はなかったけど、校舎の裏側の隅に到着した。
「ここでいい?」
私は、優志のほうに振り返った。優志は、別段と嫌な顔をしているわけでもなく、ただ「なんだ?」とでもいいそうな、ぽかんとした顔であった。……これなら話せる。私は、大きく息を吸った。
周りから見れば、向かい合う男女なんて、どうみても告白のワンシーンにしかみえないが、幸い私達の周りには誰もいなく、私達をみてはやしたてようとする人は、いなかった。
「……話してもいいけど、25分の予鈴がなるまでにしろよ」
「わかった」