コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋時計 *半実話* ( No.525 )
- 日時: 2011/03/06 17:10
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
- 参照: ▼ 2年生もぁと13日
第69話
校舎の影にいると、日向にいるよりずっと涼しかった。それでも夏だから、風は全然はいってこないし、蝉の音も五月蠅い。暑かった。私は、深く深呼吸をして優志の目をみた。いいたいこと、いわなくちゃね……。
「告白の返事、保留したまんま、だったよね」
「ああ」
「……結果的にフッたってことでいいよね」
「うん」
「……愛可のこと好きなの?」
「……まぁ」
「まぁじゃないでしょ! 愛可のこと大好き?」
「うん、大好き」
そのとき優志は、ほんの少しはにかんでみせた。少しだけ、私の胸がズキッと痛んだのは、やっぱりまだ優志に気があるからなんだろうね。私は「ラブラブカップルだねぇーみんなにいったの?」なんて、いってみる。優志は少し、難しい顔をした。
「いやだって……まだ言ってない」
「でももううちにも、絵磨にも知られたし終わりだね。うちみんなにバラすから。広がるよ。別にいいでしょ? 美里奈と怜緒も今では学校公認カップル。あんたらもきっとそうなるよ」
「……なっ、ちょっ……まぁ公認してもらえるならいいや」
顔を赤くする優志を、私は馬鹿にするような目つきで睨んでそういった。ほんと、私なにがいいたいんだろう? こういうことじゃなくて、その……。私は改めて「あのねっ」と切り出した。優志の顔は、また真剣な表情になる。
「今まで私、7人くらいの人を好きになったんだよね」
「ふぅ〜ん……」
「……全部片思いで終わっちゃった。でも、それでよかったの。付き合うとか、告るとか、そんなこと考えたこともなかった。でも小4の終わりのとき……」
——終わりのとき、優志と4年生でクラスが離れてから、ほとんど面識がなくなったとき、ふと優志を好きになってしまった。理由は、忘れた。けど好きになった時、思った。
——この恋は、叶えてみせる。絶対に。幼馴染だから、可能性はあるよね?
って。本当に好きだった。夜も優志を想うと寝れなくて、寝ても夢にでてきて……部活中も授業中も、ずっとずっと優志のことばっかり考えてた。それだけに、小5のクラス替えで一緒になれたのは、すごく嬉しかった。
「なぁなぁ」
5年生のはじめごろ、給食時間のとき、私と君は同じ班で食べることになったよね。そのとき、優志はそういってはなしかけてくれた。笑顔で。毒のない、とびっきりの笑顔で。
そのとき、君はなんか私のお母さんの車のこととか、意味不明なこといってたっけ。そんなことでも、話しかけてくれて、すっごく嬉しかったよ。で、もう1つ。話しかけてくれたこと、あったよね。
「ねぇねぇ、そのチーズ何の形だった?」
給食ででた、なんか色んな形のチーズのこと。私は……確かコアラだったきがするなぁ……こんなにささいなことでも覚えているのは、優志が好きだったから。
5年生の自然学校、優志と同じ班じゃなかったけど、すごく楽しかった。ゴリラの友情スト−リー(実際は赤ずきんパロだけど)の話、面白かった? あれ、うちの班だよ。優志の班は、マリオの劇で優志はナレーターだったよね。
そんな5年生でも、後半は苦しかった。同じクラスの女子から煙たがられて、嫌だったし死にたくもなった。けど、優志にあげたバレンタイン。お返しをもらったホワイトデーは今にも印象に残ってるよ。
6年生でクラスが離れてショックだったけど、廊下からみえる優志の姿にいつも緊張してた。優志が好きで好きで好きで好きで、仕方なくて、どうしようもなかったんだよ?
中学にあがって、私はいよいよ告白。まぁ保留だったけれども。気持ちを知ってもらえただけで、まぁよしとするかな? バレンタインチョコ、食べてないんだってね。でももういいよ。好きにすればいい。
「……ありがとう。優志を好きになった4年間、幸せでした。迷惑だったかな? うちのこと嫌いでしょ? だから、愛可と幸せになって! どんなカップルにも負けない、2人になって! これからは、私もあんたも、赤の他人。それぞれ、別々の道を行こうね……最後に。
大好きでした……さようなら」
そういった瞬間、私の目には堪えていたものが、いっきにあふれ出した。嗚咽がもれる。私は顔を隠して、ダッシュで階段のところまでいった。優志をおいてけぼりにして。そして、絵磨をみつけた。
「絵磨……私、いえた、よ? さよならって……うっ」
「……そっか、よかったじゃん……」
絵磨も目が少し赤くなっていた。
「教室、もどろうか、涙拭いて」
「ん……」
恋時計、壊れちゃった。けどけど、いつか絶対新しい恋時計みつけて、幸せになって、あんたを見返してやるから。あんたも幸せになって、私も幸せになってやるから。