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Re:     恋時計 *半実話* ( No.669 )
日時: 2011/03/27 23:48
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: 7zw0g7CO)
参照:   ▼ LUV!LUV!好きだヨ〜〜〜(笑





 第82話





 西塚駅から電車で、約30分。同じ花火大会に行く客で、電車の中も駅もごった返していた。私達軽音楽部12名は、できるだけ固まって歩くことにした。みんなの行く方向へ、ついて行く。すると、会場らしきところに、たどり着いた。



 「ふぁ〜あっつぅー! まぢ汗で化粧落ちたし」
 「うっわ〜目真っ黒やっば」


 里子先輩と凛子先輩は、鏡をみて化粧直しを始めた。桜先輩は「暑い暑い」といいながら、シーブリーズをふりかけはじめた。途端、そこら中にイイ匂いが漂う。


 「……何、健」
 「や! べ、べつにっ」
 「何がべつに〜だ。さっき桜のことヤらしい目でみてたくせに!」  「なっ、ギョボススブッジョ」

 純也先輩にからかわれ、焦る健先輩。冷めた目で睨む桜先輩。



 「そんなことより早く花火始まらないっすかね〜モグモグムシャ」
 「重また食ってんのかよ」
 「僕のお手製のおにぎりっす! いりますか? 孝文先輩。ムシャムシャゴクンッモゴ」
 「いらねぇよそんなの」


 重君は、形の変なおにぎりを孝文に近づけた。すると重君は、なにかを思い出したかのように、パンパンのリュックサックから、食料を取り出し始めた。今は晩御飯前。確かに食料とか、買うお金とかもってこいとはいったけど……。




 「ポテチ。チョコ。柿ピー。グミ。お菓子だけじゃないですよ! コンビニで買ったチキン……」
 「そんなに食べるんですか? 1人で?」
 「まぁ皆にも分けるよ〜」

 後輩、辰雅に聞かれて重君はドヤ顔で答えた。



 「ったく、重君食べすぎでしょ……」



 絵磨が呆れ顔でそういったとたん、頭の上につめたいものが当たった。



 「あれっ、なんか……冷たくね?」
 「雨だろ」
 「なんだ雨か」
 「雨かービックリさせないでよー」
 「…………」



 「って雨ぇえええええええ!!!!????」



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 「まさかの中止になるのかよ……」
 「本当勘弁、また化粧落ちるし〜」


 龍夜と里子先輩が、困惑した顔でそういう。私達は今、大きなシートを被って、12人で雨宿りしていた。周りをみれば、タオルを上から被ったり、同じくシートを被ったりして、皆が雨宿りをしている。


 「なんかさ、ついてないね」
 「うん」


 康義と辰雅も、降り止まない雨を見ながら呟いた。




 
 「あぁあ〜せっかくのおやつタイムが……」
 「もぉ〜〜! 花火やんの!?」


 重君の言葉を遮るように、凛子先輩がそういった。



 そして、少しずつ雨も止んできて……——




 ドンッ





 大きな音がした。




 途端、私達はシートを放り投げて、空を見上げた。
 綺麗な無数の光と音が、空を舞っている。放たれては消え、消えては放たれ……——



 「綺麗、だね」
 「うん」



 絵磨のことばに、私は小さく頷いた。
 どんなに綺麗でも、どんなに大きくても、消える、花火。
 どんなに鮮やかでも、どんなにすごくても、消える。
 


 「……なくなっちゃう、のかな」
 「ん?」
 「いつかは、こんな楽しい思い出も、消えちゃうのかな。忘れちゃうのかな」
 「……?」



 私は、自分でも意味の分からない言葉を発した。
 隣で「?」な顔をする、絵磨。
 興奮しながら叫ぶ、孝文。
 ぽかんと口を開ける、龍夜。
 「綺麗だね」と呟く、康義。
 笑顔の、辰雅。
 チラチラ純也先輩をみてる、桜先輩。
 相変わらず鏡もみてる、凛子先輩。
 「化粧やべぇ」といってる、里子先輩。
 「花火みろよ」と突っ込む、健先輩。
 意味不な言葉を叫ぶ、純也先輩。
 ずっと何かを食べてる、重君。



 消えないで、卒業しないで、忘れないで。
 ずっと、そのままでいてほしいよ……。