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Re:     恋時計 *半実話* ( No.706 )
日時: 2011/04/05 11:09
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: xe6C3PN0)
参照:   ▼ そろそろ本気出してもいぃよね?




 第83話



 夏休みもあけて、新学期スタート。なんか夏休み終わったあとってすっごく憂鬱じゃない? あの頃に戻りたいーってなるよね。今、私、それです。暑苦しい教室を抜け出して、私は絵磨と音楽室へ向かった。

 「音楽室は冷房あるからまだマシだよね」
 「うん、28度で省エネだけどね」


 汗をびっしょりだしながら、小走りで音楽室にたどり着いた。


 「やっほー……ってうっわ、なにその汗、シーブリーズは?」
 「……いつもはあるんですけど、忘れたんですよ」
 「いつも絵磨から借りてるんですよ」

 
 顔をしかめる凛子先輩に、私達は口をそろえて答えた。すると凛子先輩は、バックからシーブリーズをとりだして、私達に差し出してくれた。「女の子なんだから、清潔にしないとね」といって。


 「……じゃあ、そろそろ練習しよっか」
 「文化祭に向けてー」


 康義と辰雅は休憩して、すでに楽器を持っていた。


 「ん?」
 「何姉貴」
 「いや……なんか1人いないなーって……」


 私は空白のドラムの席に目をやった。なんかいないんですけど。


 「あぁ、孝文は野球の試合が近いから、練習いった」
 「ふ〜ん……」
 「あれ、香織寂しいの?」


 絵磨が私の顔を覗き込んできた。なっ……さ、寂しいなんて!!


 「んなわけないし。ドラムいなくても、龍夜と辰雅がリズムとってくれるし。一緒だし」
 「ふ〜ん……あっ、あそこに野球部いるよ」
 「っ、どこ!?」


 絵磨の言葉に無意識に反応し、私は窓を全開にした。「冷房が効かなくなるじゃん」という康義の言葉は無視して、私はグラウンドをみつめる。日焼けした野球部集団は、練習に明け暮れていた。


 「わ、その先にサッカー部が……あ、三井と怜緒とかがいる」
 「まぢだ」


 ボールを追いかける優志。前よりずっと長くなった髪。汗臭そうな髪をゆらして、優志は全力疾走する。もう優志をみても、前みたいにならなくなったよ。不思議だね、人の気持ちって。


 その瞬間……優志は、勢いよくすべってこけた。



 そんな優志はそっちのけで、サッカー部員は、優志を踏みつけボールを追いかける。


 「きゃ〜ん、優志ぃいいい〜」


 近寄ってきた愛可に肩を抱かれ、優志はよろけながら保健室の方向に向かった。



 「今のみた!? あははははははっ、何あれっ」
 「笑っちゃいけないけど、笑ってしまう」
 「ずって〜んだよずって〜ん」


 私たちは、笑いながら叫ぶ。そして、窓を閉めた。……窓越しに映るのは、野球帽を被った孝文。


 「……大会、ね」
 「同じ目してるよ」
 「へ?」


 小さく呟いた私の隣で、いきなり意味不なことをいいだす、絵磨。絵磨の表情は、ふざけてはいないらしい。私は「?」マークを浮かべるように、首をかしげる。絵磨は小さく笑った。



 「香織が三井を好きだったときと一緒の目、孝文君に向けてる」