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Re:     恋時計 *半実話* ( No.945 )
日時: 2011/05/08 17:21
名前:  苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: xe6C3PN0)
参照:   ▼  DIET頑張る〜




 




 第108話



 *香織目線*





 「……っ」



 
 優志は涙を流していた。私は昔、この人が好きだった。
 そして今、この人を憎んでいる。
 でも……このときは、なんだか憎めなくなった。




 「なぁ、もしかしてその健って……」
 「軽音楽部の……」
 「新藤健先輩!?」



 孝文、龍夜、絵磨が順番に話した。
 優志は「上の名前は聞いてない」と呟いた。
 すると絵磨は、準備室にいってしばらくして、また戻ってきた。
 1冊のアルバムをもって……——




 「もしかして、この人?」
 「……あ、こいつだよ」





 絵磨の指差す人物は、新藤健先輩の写真だった。
 優志は大きく頷いた。
 ……先輩が、そんなことするはずないじゃん。
 ……でも優志がそういってるんだから、多分間違いない。




 「軽音楽部だったのか、こいつ」
 「うん、孝文とおんなじドラムだったよ」
 「上手かったし、格好は派手だけど優しかった」



 優志に尋ねられ、辰雅と康義は口をそろえて答えた。
 健先輩はとってもいい人で、人を脅すようなことはしない。
 誰もがそう信じていた。





 「……ぁの……」
 






 突然、入り口から声がして、私達は一斉にそっちをみた。
 多分皆目を見開いたとおもう。私もびっくりした。
 そこにたっているのが、愛可だったから。





 「愛可!! 帰ったんじゃなかったの?」
 「……実は、廊下から話きいてた……」





 愛可は何か申し訳なさそうに、今にも消えそうな声だった。
 優志はすかさず、愛可のもとにかけよった。
 そして……人目気にせず、思いっきり抱きしめた。




 「愛可っ……嘘ついてごめんな、でもこうするしかなかったんだ」
 「……愛可も勝手に怒ってごめんね……」



 そんな2人に絵磨はすかさず「座りな」と席に案内した。
 2人は隣に座った。2人とも、鼻水と涙で顔がぐちゃぐちゃだった。
 ぶっ……って笑っちゃいけない。




 「でもどうする? このままじゃあ、やばいだろ……」




 孝文が腕を組んでうなった。
 いつもは愛可のことを「七三」呼ばわりする孝文だけど、このときだけは違った。
 真剣な表情でなにか考えてる。……こういうとこ、好き。
 って私は何考えてんだ! 今は優志と愛可の時間じゃんよー。



 


 「愛可ね、別に写真バラまかれてもいいよ」
 「ダメに決まってんだろ! あんなのバラまかれたらもう学校どころか、外すら歩けなくなるぞ!」



 優志は必死に愛可を説得した。
 こういうのみてると、本当に優志は愛可が好きなんだ。




 「……それより、優志と離れ離れになっちゃうほうが……よっぽど、辛いよ……」
 「……愛可」




 優志は再び、愛可のことを抱きしめた。
 ここぞ! というときに、龍夜孝文辰雅康義は、冷やかすのだろうけど、今回はそれはなかった。
 場の空気を読んで、ただひたすらそれをみていた。




 「なにがあっても、絶対守るからな、愛可を」