コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 思い出の羽音 ( No.2 )
- 日時: 2010/12/23 19:44
- 名前: 璃羅 (ID: fttqsiS/)
『思い出の羽音〜想いの行く道〜』続き
(こっからは、那葵視線)
ガバッ!
気持ちの悪い目覚めだ。何時間ぐらい、寝たのだろう?ん?
「なんだ!この香りは!?」
この香りは・・・天使の奴らだ!!羽まで落ちてやがる。
「理久!どこだ!理久!!」
理久の香りがない!まさか・・・奴らに!!「くそっ!」
翼を広げ、天使達のところへと向かう。
・・・・・・・
ようやく、天使達のところに着いたとき、『協会の館』の前で、理久と長髪の男がいる。「理久!」
必死で理久を呼ぶ。その瞬間俺は、自分の瞳を疑った。
なんと、理久の背には真っ白な翼が付いていた!!
「理久?」
近寄り、声をかける。理久がゆっくりと口を開く。
「那葵・・・?」
いつもの声で理久は、俺の名前を呼ぶ。
「理久!お前、翼をどうした!?」
そう俺が言った時、理久は不気味にも笑った。
「那葵・・・死神の協会長。あたし達の敵。 敵は・・・殺す。」
といきなり理久は、俺に術式をかけてきた!「理久!どうした!俺だよ!忘れたのか!?」それでも理久は、攻撃をやめない。次の攻撃が来ると思った時、長髪の男が、
「やめなさい、理久。」
その言葉と同時に、理久の動きが止まる。
「この者には私から、説明をせねば、なるま い・・・」
そう言って長髪の男は、俺に手をさしのべてきた。
俺は、その手を振りほどき、
「どういう事だよ!!」
男は、不気味にも笑い、こう言った。
「理久は、天使になったのだ。」
その言葉に俺は、驚愕した。
「意味が分かんねぇよ!」
「認めたくないのか?理久は、天使になった。 これ以上の説明が必要か?」
怒りと悲しみでぐしゃぐしゃの頭の中をどうにか、まとめようとするが、気持ちは収まってくれそうにない。
「理久は・・・・理久は望んで天使になった のか?」
「・・そうだ・・・・」
「そう、か・・」
誰が、俺の今の気持ちを分かることが、出来ただろうか・・・
一端、自分のところにかえった俺は、理久と一緒にいた、あの日々を思い出していた。「そうだよな・・・理久。俺は、間違えてな いよな・・・」
バサッバサッ。カチャ。
「理久。お前の事、死神に戻すな・・・もう 二度と逢えなくなるけど、俺はずっと理久 のそばにいるから・・」
そういって、自分の血液を理久の口に運ぶ。そして、自分の血を以て、理久を死神に戻す。「ホント・・一緒にいれなくて、ごめんな・ ・・」
理久が瞳を開ける。翼はもう黒に戻ってるだろう。
「な・・き?どうしたの?」
「・・理久。幸せにな・・そして・・・ずっ と、好き・・だった・・・」
「え?」
理久にもたれ掛かる。理久の手が俺の血で真っ赤に染まる。
「那葵?ねぇ、真っ赤だよ?どうしたの・・ ねぇ、那葵・・・瞳を開けてよ!!」
それでも、俺は瞳を開けられない。開けられるはずがない。だって俺は、もう・・・
何分ほど泣いていただろうか。那葵が死んだ。那葵が・・那葵が・・!
全部、あいつのせいだ!絶対に許さない!「復讐してやる!!」
まずあたしがもう、天使じゃないって、分からせないようにしなくてはならない。
「どうした?騒がしいぞ・・・」
あいつがきた。まだ従っているふりをしなくちゃ。
「別に・・なんでもありません。」
「そうか・・では、早く寝ろ。」
「はい。」
狙うのは、あいつが寝静まった頃。
数分後・・・
「もう大丈夫だよね・・」
あたしは、自分の羽の一枚を取り、その羽を短剣に変えて見せた。これで、あいつの胸を一刺しにしてやる!!
あいつの部屋に近づき、部屋の扉を静かに開ける。
あいつのベットに近づき、あいつの胸の上に短剣を振りかざす!
その瞬間、
「やめろ!理久!」
この声、この口調。確かに・・・
「那葵・・・?」
「そうだ。」
姿が見えない。
「どこにいるの?姿がみえないよ・・・」
「お前は見えないかも知れないけど、俺にお 前の姿は見えてる。俺は、お前を助けて死 んだ事に悔いはないんだ。だから、こんな 事は、やめてくれ!」
「だめ!こいつを殺して、あたしも那葵のと ころに行くの!」
「ふざけんな!!じゃあ、俺が死んだ意味が 無くなるじゃねぇか!お前は、俺の死を無 駄にするのか!?」
瞳から大粒の涙が流れ落ちる。
「お前があっちに帰ったら、周りの奴らがち ゃんと、サポートしてくれっから・・・約束な・・だ から・・・」
続きを言おうとしたところで、那葵の声は、ぷつりと途絶えた。
那葵・・・約束、守るよ・・・
そこで、水黎が目を覚ます。
「理久、お前戻っていたのか・・・」
「いつまでも、あんたの言うとおりになんて、 なってない!本当は、ここで殺してやりた いけど・・・今日のところは、見逃してあ げる!そして、こっちのやり方でやらせて もらう!!」
そういって、部屋の窓から、飛び降りる。そのまま、自分の場所へ帰る。約束だから・・
やっぱり相変わらず、あたしは、平凡な毎日を過ごしてる。だけど、一人いない人がいる。
「那葵・・・」
あのとき、なんて言おうとしたの?教えてよ・・那葵・・・
ドタドタドタ
廊下を走る音が聞こえる。
「理久様!一つ言い忘れてた事が!!」
そう言ったのは、あたしの補佐をしてくれている、懐歌だ。
「何が?」
「・・・那葵様の伝言の事でして・・・」
那葵の!?
「なんて言ってたの!?」
「『約束守って、幸せになれよ!いつだって、 俺は、お前の一番近くにいるから・・・だ から・・・強く生きろよ。俺の分も。』」
懐歌が言い終わった後、悲しみとうれしさが胸をしめた。
「那葵・・・約束守って、ちゃんと強く生き るよ・・」
今日もまた、朝日が昇り、陽が沈む。
そして、今日もまた、あなたを思い出す。
そして,今日もまた,懐かしい羽音がする。