コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 氷の中の花 ( No.12 )
日時: 2010/11/06 18:55
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: Ks1Py4Y0)

朝食を済ませ、歯も磨き、急いで制服を着る。
今日も、皆が来ないうちに登校しなきゃ。

私はいつも朝6時起きだが、他の人は7時ぐらいに起きるらしい。由愛もその例外ではない。
私は朝早くから嫌がらせを受けたくないので、早く寝て早く起きて、早く学校へ行く。
クラスメートも私より早く起きて、早く学校に行こうという気はないらしい。私が学校についても、自転車置き場には自転車は1台もなく、下駄箱にも靴は私のスニーカーと、教頭先生の靴が入っているだけだ。

シャツの袖に両腕を通し、ボタンを1つ1つ丁寧に留める。
薬指には、小さな傷跡。
昨日、こんな傷つけられたっけ?
その時、夢の中で薬指を誰かに切られたな。その人の名前までは覚えてないけど、綺麗で優しい少年だったから、結構記憶に残っている。
ブレーザーを着て、ボタンを留めて、リボンをつける。
ストッキングをはいて、スカートもはいて、壁に掛けてある鏡の前に立った。

鏡には、綺麗に制服を着こなした私が立っていた。
よし、今日も完璧だ。

そう思いながら、時計を見てみる。
7時5分。よし、そろそろ行くか。
階段を下りてすぐ前にある玄関で、水色のスニーカーをはく。
玄関のドアを開けると、義母が手を振っていた。
私も手を振って、行ってきます。と言った。

私の家は学校に近いので、自転車で行かなくてもすむ。
いつも、15分ぐらい歩くと、学校に着く。
私は早歩きで学校へと向かった。

学校の玄関でいつものようにスニーカーを脱いでいると、不思議なことに気がついた。
私と教頭先生以外の靴が、下駄箱に入っている。
その靴は、私と同じ学年の下駄箱に入っていて、名前が書いてあるはずのプレートには、まだ名前が書かれていないようだ。
転校生かな? それとも、まだ私が話したことのない人とか……?
私は疑問に思いながら、靴をはいて、1年教室に近い東階段を上って行った。
東階段を上ると、すぐそこに1年教室がある。
私が自分のクラスの教室に入ろうとドアを開けようとすると、ドアのガラスの部分から、教室の中が見えた。

そこには、1番後ろの列の窓側の席で、本を読んでいる金髪の少年がいた。
髪は金色で、耳あたりのところで結んでいて、結んだ髪を右に寄せている。
目は澄んでいるけど、どこか暗くて不思議な青。肌は白く、西洋人のようだ。
背が高く、椅子と机が少し小さいようだ。多分、クラスで1番背が高いだろう。
学生服を綺麗に着こなしていて、他の男子のように乱れた服装はしていない。

その少年が私の方を向き、ふわりと優しく微笑んだ。
私は恐る恐るドアを開け、教室に足を踏み入れた。
ドアを閉めて、自分の席まで歩いて行く途中、少年が私に声をかけた。

「おはよう、悠佳さん」

冷たく鋭い、心地のよい低めの声。
この声を聞いた瞬間、私は震えあがった。
今日見た夢を全部思い出した。確か、地獄の王と名乗る少年が私に話しかけてきたんだ。
少年の目をちらりと見ると、少年は首をかしげながら、小さく笑った。なにか、意味ありげな笑みだ。
怖い。そう感じた。
この少年は、夢に出てきた少年と似すぎているのだ。

少年に話しかけようとして、口を開く。
少年はそんな私の様子を見て、頬杖をつきながらこう言った。

「というより、また会ったな、といった方がいいか? 悠佳」

少年はそう言って、意地の悪い笑みを浮かべた。
ああ、やはり、この人と私は会ったことがある。しかも、夢の中でだ。


私の目の前にいるこの少年が誰だか聞かれたら、今なら自信を持って答えられる。
地獄の王、ルシファーだ!