コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 氷の中の花 ( No.13 )
- 日時: 2010/11/06 18:26
- 名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: Ks1Py4Y0)
今は、1時間目。1時間目は、ルシファーの紹介をするそうだ。
ルシファーは京都から転校してきた、中学生の男子生徒ということになっている。
なぜこのようなことになったのかは解らない。昼休みに詳しく聞いてみよう。
「今日は、転校生を紹介します。ルイ君、前に出なさい」
私達の担任の男性教師がそう言うと、ルシファーは落ちついた声で返事をして、教卓の右隣まで歩いて行った。
ルシファーが教卓の隣で立ち止ると、先生が話を続けた。
「今日からみんなと一緒に授業を受けることになった、榊原 ルイ君だ」
先生がそう言うと、ルシファーは上品な微笑みを浮かべた。
すると、周りのクラスメートが小声で話し始める。
ルシファーは綺麗な男性だし、転校生が珍しいので、クラスメートはルシファーを興味深そうな目で見ていた。
「みんな、ルイ君に質問はあるか?」
先生がそう言うと、クラスメートがルシファーに容赦なく質問を投げかけてくる。
ルシファーはその質問1つ1つに、ていねいに答えていた。
そんなやり取りが数分続き、ついに1時間目は転校生の紹介と、質問だけで終わってしまった。
ルシファーが席に戻ると、クラスメートがルシファーの周りを囲んだ。
「ねぇ、ルイ君ってハーフなの?」
私をよく思っていない人の中では、1番の権力者の少女、新宮 凛がルシファーにそう聞く。
凛は少しだけ茶色の混じった、肩まである黒髪に黒い目の可愛らしい少女だ。
由愛は八方美人で、誰とでも仲がいい。凛とも例外ではないようだ。
学校では凛がいるので、由愛は私と話そうとしない。
私にはそれが、とても怖くて、寂しく感じられた。
この教室には、私の居場所なんてないんじゃないかと思う時もあった。
「僕の父は京都出身で、僕の母はフランス人なんです」
ルシファーは凛の問いに、落ちついた声で答えた。
落ちついていて、上品な振る舞い方。まるで大人のようで、でも、このクラスになじんでいる。
私とは、違う。
私はそう思い、手を強く握る。
ルシファーは私の視線に気がつき、小さく笑って、こちらを向いて小さく手を振った。
その途端、ルシファーに質問していたクラスメートが一斉にこちらを向く。
「ルイ君、悠佳のこと知ってるの?」
由愛がルシファーにそう聞く。
ルシファーは綺麗に微笑んだまま、質問に答えた。
「悠佳さんとは、知り合いのようなものなのでね」
ルシファーの答えを聞き、クラスメート全員が目を丸くして私の方を見ていた。
私は驚きながら、クラスメートと目を合わせないようにして、次の時間に使うファイルを取りに行った。
その時ルシファーと目があったから、私はルシファーを思いきり睨んでやった。
ルシファーはそんな私を見て、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
でも、こんなやり取りをできる相手ができたと思うと、私はとてもうれしかった。