コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 氷の中の花 ( No.6 )
- 日時: 2011/03/02 15:59
- 名前: 九龍 ◆0xLyzKjiIQ (ID: VDwmPbKC)
———なんと哀れな……。お前はとても強い。なのに、反抗もせずに、そのまま縮こまっているのか?
冷たく鋭い声が、突然頭の中に響いた。
声に驚き目を開けると、信じられない光景が目に入った。
辺り一面、氷、氷、氷。
あたりは真っ暗で、自分の近くしか見えない。
私は急いで立ち上がり、辺りを見回した。
ごつごつとした氷が辺りにそびえたっていて、中には先が鋭く、触れたら皮膚が切れてしまいそうなものもある。
長さや太さはまちまちで、小さなクレヨンのように短く太いものがあれば、細く長いものもある。
素足で立っていると、足から体が凍りそうだ。体は少しでも体温を温存するために、ぶるぶると震えている。
吐く息は白く、息を吸うと、氷のように冷たい空気が喉を通って行く。まるで氷をそのまま飲んでいるようだ。
———どうした? 寒いか?
頭の中に、また声が響いた。
私は震えながらも、頭の中に響く問いに答えず、質問を返した。
「あなたは誰? 私を元の場所に戻して」
私は震えた声でそういう。
人に反論したり、強気なことをするのは、とても怖い。学校では反論したりすると、嫌がらせをする人たちは面白がって、もっと酷い嫌がらせをする。
だから、私に正しいことを言えるほどの勇気はなくなっていた。
反論すると、何かされる。そんな風に思えてしまい、自分の言葉にも恐怖を覚えるようになった。
———ほう、あの地獄とも呼べるような世界に戻るのか。まあ、ここもあまり変わらないような場所かもしれないがな。
頭の中で、声がため息交じりでそういった。
「ねぇ、あなたは誰?」
———ルシファー。地獄の王だ。
「あなたは何処にいるの?」
———お前の目の前だ。もっと近づいてみれば、私が見えるかもしれないな。
私の問いに、声は落ちついた声で答えた。
私は一歩一歩、凍りついた地面を、何もはいていない足で歩いた。
前に進むごとに、足がナイフで突き刺されるように痛かった。足を見てみると、足の指が真っ赤になっていた。
10歩くらい歩くと、何かにぶつかった。
とても堅く、冷たい。多分、氷か何かだろう。
そう思いながら立ち止まると、信じがたい光景が目の中に飛び込んできた。
人が氷づけにされているのだ。
人が一人入れるほどの、大きくて硬そうな氷。
氷の中にいる男性は、美しい肩まである金髪に、白い肌、そして、灰色の12枚の翼が背中についている。
目の色は、目を閉じているので解らない。服は白く、柄などない。縫い目もなく、布全部がつながっていて、足首までその白い布がおおっている。
———今、お前の目の前にいるのが、私だ。
声が、そう言って続けた。
———私がお前を、地獄から救ってやろう。