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- Re: 、 マリオネット 【短編集】 ( No.20 )
- 日時: 2011/04/03 12:15
- 名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: n6vtxjnq)
- 参照: 体育が鬱である。
▼ ホームワーク
カッカッ、キュ。教室のある3階に、辿り着くまでの道のりである階段を、私は一段一段上っていた。
階段を登って行く度に、ワザとでもないのに綺麗な音が上履きから鳴る。
私は如何して音が鳴るか、不思議に思いつつただ階段を無意識のまま登り終えた。
それから、歩き出して教室へと向かう。向かう途中に開いているドアから洩れてくる、人の騒ぎ声を私は聞き流しながら自分の教室の目の前まで移動した。そして、少し遠慮気味にドアを横にスライドするように開ける。
立て付けが悪いのか、あまりスムーズに扉は開かなかったが人が2人ほど入れるであろうスペースはあった。
するりと教室の向こう側に入ると、ばたばたと誰かが走ってこっちに向かってくる音が聞こえた。
ふとその方向を見つめると、知っている整った顔立ちの少年が、コチラへと走って向かってくるではないか。
私はどこか呆れたように溜め息を一つ吐いた後、近づいてくる少年に、「どうしたんだ」と問い掛けた。
すると、その少年は涙声で私に、持っていた教科書とノート差し出す。
「は?」と私は声を洩らす。どういう意味だ。少年は私を見つめて、どこか真剣な眼差しに私は押され、黙ってコチラも目の前の少年を見つめた。すると不意に、少年が口を開いたと思ったら、
「原口……数学の宿題の答え、教えてくれない?今日当たるんだよ!」
学校の生徒として、多分。最低なことを軽々と言った。
確かに、今日の1時限目は数学で。この前、この少年は宿題を忘れ。当たる予定になっていたのだが。
まさか、やってこないとは。何たる奴なのだ。
目の前の少年はは、慌てたような口調で話しつつも、私を見つめてからどこか落ち着いたようにまた、勝ち誇ったように喋っている少年に、私はにっこりと微笑みながら、
「調子こかないでよ」
と一言。ああ、スッキリしたと心中で呟いていると、目の前の少年はいい顔立ちを崩して落ち込んでいた。
宿題と言うものを知らないのかな、自分の力でやる物だって。
私は目の前の少年を見つめて、心中でもう一度呟いた後。自分の席に、鞄を下ろす。
それからその場で背伸びをして、溜め息を吐いていると、少年はじろりと私を睨んだように見た後、その場で頭を下げてきた。突然の行動に、周りが騒ぐ出す。
「頼む……一生のお願いです。どうか、尾木勇を掬ってください」
「嫌だ。そんなこと、この前も言ってたし。ねえ、尾木クン?」
冷たい一言を降りかけたあと、そう私が問い掛けると、クックッと喉を鳴らす少年こと、尾木。
その行動に、私に動揺の色が混じる。すると、尾木はぱっと花開いたような笑顔で、私に言ってきた。
「……いやぁ、原口社長!今日も髪の毛が艶っぽくて、瞳も綺麗なブラウンで……美しいですなあ」
「 胡麻を擂るな。それじゃあまるで、私がいつもそうではない様に見えてるわけだろ! 」
そう言った後、私は何反抗しているのだ。呆れたようにやる気をなくす。言った後先、後悔する。
尾木の頭をチョップする。ゴンと綺麗な音が鳴る。
私はこんなにも音が鳴るのか、と感心しつつにっこり微笑んだ。
「宿題は、自分の力でやりましょうね?尾木クン」
「え、待ってよ……原口サン?まさか僕のこと裏切るのかい?君しか頼れる人がいないんだ」
そう焦ったように言う少年を見つめて、私はまたにっこり微笑む。唇の端を吊り上げて、不敵な笑みをもう一度。
「裏切るも何も、関係なんてないし。ね、宿題は自分でやろうね、尾木クン?」
一時間目、数学。尾木勇クンはむちゃくちゃ怒られたとさ。
( ホームワークは、忘れずに持って、やって、来ましょうね )
⇒END