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Re:   、 マリオネット  【短編集】 ( No.27 )
日時: 2011/04/03 12:34
名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: n6vtxjnq)
参照:       体育が鬱である。


 ▼ ハッピーデー?

 少しずつ、少しずつ。春の風を感じてきながらも、まだ寒気の残る微妙な季節。
 私は教室の前で息を吐くと、白い煙のようになる。まだ冬の名残りが大きいのか、と感じながら。

 ガラリと音をたて、教室のドアをあけると目の前に親友の麗佳の姿があった。
 鳶色のショートカットへアに芥子色の瞳。外見と内面は至って普通の女の子。
 ただ、彼女は人の恋愛話当に突っ込み過ぎる面がある所が、とてもキズである。
 私はその被害者といった所だろうか。その分彼女はリードしてくれたり応援してくれるため、その欠点を補ってはいる。

「麗佳?」

 私の不思議そうな表情を見て、彼女はふっと口元で笑った。彼女が私の後ろに回ってきた。
 私は訳も分からずそのまま突っ立っていると彼女は、私のランドセルと押して、私は前に押し出される。

「ちょっと……押さないでよ!」

 私がそう言ってるにも関らず、そっと彼女のほうを振り向くと。
 彼女はニカニカと羨ましそうなまた、憎たらしそうな歓喜の表情をしていた。
 何が何だか訳の分からなくなった私はそのまま、麗佳にされるがままに押される。
 朝っぱらから、彼女のハイテンションについて行くというと私は今日の、放課後まで生きていられるだろうか。
 私は溜まらず溜め息を吐く。その後すぐに押される感覚が抜ける。
 彼女は私を押すのを止めたのだ。私は彼女のほうを振り返ると、彼女は教室の一箇所を指差していた。

 私はその指先の方向を目で辿ると白い消し後だらけで汚い黒板に、黄色いチョークで書かれた細い文字。『 席替え 1時限目 』その言葉にはっとなる様でならない様で。

 何とも恥ずかしいような、嬉しいような複雑な気分になった。

「ちょっぴり良かったねえ。友香」

 ほんの少しだけうっとりとしたような表情を見せてくる麗佳に、私はただ頬を赤らめて、頷いた。
 私には好きな人が居た。のんびりとマイペースだが、時より格好いい人。
 それが幸福なことにクラスメイトというのに、喋った回数は極端に少ない。

 それに、4月からは彼とは違う中学校。これが小学校生活最後の席替えで最後のチャンスだと思う。
 そんなところで、私の心拍数は今までに無く早く鼓動していた。席替えの仕方はくじ引き、彼と隣になる確率は18分の1。
 一緒の半は18分の3と極めて、いや一生の運を使い果たしても、如何か——。
 そう考えただけで、私は一瞬にしてテンションが下がる。嗚呼、鬱になってきた。
 そう考えているだけに、時間は流れた。


 ——キーンコーンカーンコーン
 ついに、その時間が来てしまった。私は口元で歪んだ笑みを見せる。
 嗚呼、如何したものかと言う風に。心拍数が異常だ。ドクンドクンといって鳴り止まない。
 教卓にくじ引きの紙を持って来た先生は、少し悪戯っぽく笑っているようだ。

「よし、じゃあ先に女子、引け」

 そう言われたので、女子は次々に早い者勝ちという風に一列を作る。
 嗚呼、心臓の音を誰かに聞かれそうだと思いながら私も並ぶ。
 先頭の人から一枚一枚取っていき、あっという間に私の番。

 私はそっと二重のビニール袋に入った5センチほどの小さな紙をがさがさと手探りで探し、その一枚を取り出す。
 急いで自分の席に戻って、こっそりと手の中にある紙に、書かれた番号を見る。『16』か。
 私はふぅと落ち着くために息を吐く。次は男子だ。祈るように私は彼と隣と心の中で唱える。
 私がそう考えているうちに、男子は全員引き終わり、席についていた。
 先生は教室を目で一周すると。「移動開始!」と大きな声で言った。
 私達は次々に机と椅子を番号の位置にずらしていく。16番は窓際の席と。
 私は自分の番号の席に机を移動させると、溜め息を吐いた。

「お?」

 すると、彼の声が後ろから聞こえて、私は思わず振り返る。もしかして、もしかして、もしかして——?
 募る期待。隣でなくても一緒の班にしてくれないだろうか。心拍数の早まる振動。止まれと願う。
 そう思いながら隣に来て隣にきてとぎゅうっと、下唇をかみながら一心不乱に願う。
 私は彼を見つめながら、一回瞬きをすると、彼の机は私の一歩斜め後ろでとまった。
 それから、彼は自分の机を動かすことなく終わった。一緒の班ではあったが、一歩斜め後ろの席。
 なんて残酷だろうと私は唇を噛み締めた。

「隣、よろしくな!」

 一歩斜め後ろの席の彼は、隣の女子に満面の笑顔でそういった。

    ( 席替えの馬鹿、あと一歩じゃん )

   →end