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Re:   、 マリオネット  【短編集】 ( No.41 )
日時: 2010/12/23 11:02
名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: .pUthb6u)

 ※短いです、とにかく。


 ▼ 大好きな二人 

 ——…大好きな彼が、大好きな親友と付き合うことになった。
 その事実が伝えられたのは、今から2日前のことだった。いつになく、嬉しそうな表情をしている親友を見つけ、どうしたのと聞くと彼女は目を丸くしたあと、ふふふっと笑って良いことがあったのだと言った。
 私はただ彼女のいい事といえば些細なことが多く、初めはいつもみたいに誰かに何かを拾って届けてもらったとかだったんだろうと思ってた。でも、いつもはそんなうれしいことが合っても彼女はすぐに忘れてしまうはずなのに、今朝から昼休みまで嬉しそうな表情は続いていた。次第になぜか不安と言う芽が芽生える。何があったの、と聞けずに私はその日を過ごしていた。
 その日の放課後だった。不意に彼女が話し掛けてきた。私の初恋相手の彼を連れてとてもとても嬉しそうに。…彼と何かあったの?と不安になる。私は彼女に隣に居る彼が初恋相手だと未だに伝えられずにいたのだ。だから、彼女と彼が一緒にいることがとても不安で不安で仕方なかった。もしかしたら、不安よりも怖かったのかも。予想が当たって、一人置いてかれることが。

「 あのね、亜美。いいニュースがあるのよ。実はあたし達、付き合うことになったの 」

 そういって、どこか照れながら彼女は大好きな彼の腕をぎゅっと掴んでにっと笑った。私は少量ほど、息を呑んだ。いつもとあまり変わらない空気なのに、どこか重く吸っても美味しいと感じない空気だった。彼は彼女に腕を握られても嫌な顔一つせず、逆に嬉しそうに頬を紅潮させていた。
 ふと、視線を変えて彼女を見つめると嬉しそうに笑いながらぎゅと大好きな彼に抱きついていた。私はただじっとその光景を見つめて、唇を噛み締めた後。私は、唇の端と端を無理に大きく吊り上げて、笑った。それは、人生で初めての〝作った笑い〟だった。
  
「 …よかったね。すぐ近くにお似合いのカップル誕生か、私も彼氏作らなきゃ 」
「 ありがとう、亜美ならすぐいい男ゲットできるよ 」
 
 そうかな、とぽつりと呟いて苦笑いをする。できないよ、きっとと心中で呟く。だって、失恋したんだよ。ずっとずっと昔から憧れていた男の子への恋が終わったんだよ。すぐにその開いた傷口が回復できるわけじゃないんだよ。だって、私は強くないから。前を向いて胸を張って生きてきたこと無いんだから。
 私はただ心のなかにで大泣きをする。悲しいよ、悲しいよって。一方は、大好きな二人の前で泣かないように現実では必死に必死に堪えて、作り笑いをする。私の、馬鹿。

「 あ、もう5時か…30分から塾あるから…帰らなきゃな 」

 時計を見つめて、大好きな彼はポツリと呟いたのを彼女は聞き逃さず、少しばかり残念な顔をした。もっと一緒にいたいという意味がこめられているのを、私は彼女の表情だけで感じ取り、胸が痛くなった。

「 そっかあ…じゃあ帰ろう。亜美も一緒に帰ろうよ 」

 彼女が嬉しそうに私の手を握りながら、言ってきた。その時、私の心臓はドクンと跳ねる。……いいの、私がいてと問いかけようとして———止めた。私はワザと申し訳無さそうな表情をして、両手の平をあわせてごめんと呟いた。それから少しだけ息を吸って彼女ににやりと笑いながら言った。

「 一緒に帰るって、同じ部活の子と約束しちゃったんだ。それに、できた手カップルの下校を邪魔するのも、ね 」

 そう言うと彼女はそう、と一瞬寂しそうな顔をしたあと、アリガトと呟いて大好きな彼の腕を抱き締めて、その場を後にした。私は二人が教室から出てゆくのを見守って、彼らが視界から消えた瞬間。大きな溜め息を吐いた。嘘、本当には部活の子と約束なんかして無いよ。
 本当は一人でぽつんと帰るんだよ、とかれたような声で呟いて、その場に泣き崩れた。教室には、クラスメイトが数名ほど居て、どうしたの、と近寄ってきた。失恋の悲しさが交じり合う。私は何も言えずに泣いていた。


  ( ねえ、どうしたらこの悲しさから立ち直れるの? )

  
   ⇒END