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Re:   、 マリオネット  【短編集】 ( No.43 )
日時: 2010/12/23 11:00
名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: .pUthb6u)

 ▼ 永遠の愛 
 
 永遠なんて、綺麗ごとに過ぎない言葉なのよ。
 とある公園のベンチに座る、男女が居た。少年と少女は何一つ言葉を交わすことなくただ座っていた。少年は、ちらりと少女を見つめる。少女は少年の肩に頭を乗せて、目を瞑っていた。そして、
 そして、俺の肩に頭を乗せて、瑞々しい唇を僅かに動かして、俺に問い掛けた。

「 永遠の愛って存在すると思う? 」

 驚いて俺は、ぴくりと体を小さく揺らすと彼女はチラリと横目を使って、コチラを見つめた。長い睫毛やうるうるとした瞳がこちらを少しばかり覗いていて、俺は胸をときめかせた。それから彼女はふふ腑、と小さく聞こえにくい声で笑うと正面を向いて俺の腕をそっと繊細な力加減で握った。俺は安堵の溜め息を心中で吐いて、彼女をチラリと見つめた。彼女は目を伏せていた。俺はきゅっと強く唇を結んで、曖昧に言ってみた。 

「 永遠の愛って考えるのは、その人たちの関係とか…状況とか、意思によってだろ 」

 いい加減に言ったつもりだったが、彼女は擽ったそうな、または、不思議に感じながらも嬉しそうな表情をしていた。俺はその表情に、少しばかり
彼女と話すのは、なぜか緊張する。恋人と言う存在なのに、彼女を見ると胸の置くが苦しくて、ドキドキとする鼓動が鬱陶しい。未だに恋しているってことなのだろうか。俺も先程の彼女と同じように目を伏せる。馬鹿だな、俺。
 俺が目を伏せてから、数秒もたたぬうちに彼女はどこか切なげな色を込めた言葉を発した。自信なさげな彼女の声。

「 ねぇ、貴方は。私のこと愛してる? 」
「 …分からない、愛してないかもしれない 」

 そう伝えると、彼女は何か言葉を喉に詰まらせたように、喉をぴくりと動かした後、ゆっくりと微笑んでいた。なぜか、胸がズキリと痛む。それから彼女の紡いだ言葉は、悲しくて、その言葉を紡いだ彼女も悲しそうに涙声だった。

「 ……じゃあ、私たちは永遠の愛なんて一生できないんだね 」

 どうしようもなく胸が痛む。それほど、俺の事を信頼してたのかと聞いてみたかった者の、言葉は喉を通らず、空中に触れることなく俺の中で消えていった。

「 愛してるじゃなくて、好きならある。だから、愛って言うよりは俺は今、お前に恋してるんだと思う 」

 そう伝えると彼女はこくりと頷いた。分かってるよ、とばかりに。また胸が痛む。そこまで理解していて俺と付き合っていてくれる事が、息苦しかった。もっと誰かと永遠の愛を紡いだっていいのに、彼女は俺の隣に居た。俺が息苦しく感じていると、彼女はくすりと笑って見せた。余裕を含めた柔和な微笑だった。

「 そう…愛に変わることはあるのかしら 」
「 さあ…自信は大分無いよ。俺が一生恋して終わるかもね 」

 そういうと彼女は悪戯っぽく微笑を浮かべて、にこりと笑った。幼い子供のような笑みだ。俺は心を擽られたかのように頬を紅潮させた。すると、悪戯心を燃やしたのか、彼女はぎゅっと腕を握る力を強めた。恥ずかしさか俺は低く呻き声をだす。いやな訳ではないという事を彼女は理解しつつ、俺に嫌がらせをしてくる。
 それから、彼女は優しく花開いたような笑顔で微笑むと。俺の耳元で蕩けるような美声で俺を誘惑させるかのように、囁く。

「 待ってあげる、フォローしてあげる、補ってあげる……だから、一緒に永遠の愛を作り出しましょう? 」

 俺はくすぐったい気持ちを覚えながら、彼女を見つめた。長い睫毛にうるうるした瞳を見つめてから、こくりと頷く。

「 …頑張って見せますよ 」
「 本当に?…永遠って綺麗ごとに過ぎない言葉よ 」

 彼女はまた耳元で囁いた。俺はむずがゆいとばかりに少し顔を歪ませて、

「 やってのけなきゃ、永遠も何も来ないだろ 」

 とぶっきらぼうに言うと彼女はその答えをえらく気に入ったな表情になって、微笑を口元に浮かべ、そうねと呟く。そして、少年と少女はお互いを見つめあって、微笑を浮かべる。永遠の愛を造り出すために、一歩を踏み出す。

  ( 永遠に愛を紡ぎあいましょう、死を迎えても、永遠に )

 
  ⇒END