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- Re: 、 マリオネット 【短編集】 ( No.44 )
- 日時: 2010/12/26 17:37
- 名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: BwWmaw9W)
▼ 崩落リレーション
「 ねぇ、私のこと……好き? 」
掠れた声が夕暮れの道に反響した。私はそんな不可思議な言葉を、彼氏にぶつけて目を伏せながら、隣を歩く彼氏に聞いた。それを聞いた瞬間、一瞬彼の瞳孔が見えて私は、ドクンと自分の心臓が跳ねる音を聞いた。そんな瞳をする理由が、あるんだ。私は俯きかける。彼は、次いで息を呑み、あははっと小さく笑い出した。無理な笑いにも聞こえた。私は、唇を噛む。
「 なんだよ瑞貴、改まってそんなこと聞くか? 」
そういいながら、はははっと笑ってみせ、頭を書いて恥ずかしそうな仕草をする彼。ワザとらしいその仕草にただ胸を打たれる。私は、そっかと素っ気無く返す。それから、二人の間に沈黙が訪れる。何を喋るべきか、分からないという表情の少年と、小刻みに体を震わせる少女の頭上を、数匹の烏が喉を震わせて鳴き声を発しながら、飛んでいった。どれだけ、歩いて経っただろうか。彼らの歩いている帰り道は、何時ものルートなのに何時もは短く感じる道のりなのに、今の彼らにはとても長く感じられた。
そして、沈黙を破ったのは少女の方だった。黒い眼と髪の毛を小刻みに震わせて、控え目に少年に問い掛けた。
「 …どれくらい? 」
「 え? 」
「 どれくらい好きなの、私のこと 」
彼が小さく息を呑んだのは、見なくても分かった。私は目を伏せた。知っているよ、昨日のこと。貴方だって質問されてひやひやしてたんでしょ、わかるよいつもと微笑み方とか歩き方とか、全然違うんだよ。貴方が動揺しているってこともすぐに気付けてしまうんだよ。私は、赤い糸を自ら切り捨てようと覚悟した後、言葉を紡ぎだした。関係を崩す一撃の言葉かもしれない、言葉を。
「 浮気、しているんでしょ。知ってるよ?……昨日ね、友達とお買い物に行った時、貴方を見つけたんだよ、運命だって思った。でもね 」
少女の唇が紡ぐのを一旦止める。重苦しい一言を、この一言を呟きたくないとばかりに。…崩したくなかったのにな、と心中で呟いた後。少女はくすりと自嘲的な笑みを浮かべた後、少年に向かって目を細めながら、問い出すかのように呟いた。彼女の瞳は、哀れみが少量、憎しみが大半の色で染まっていた。遠慮の無い、瞳の色に少年は首筋に汗が滲ませる。
「 ……貴方の隣には、隣のクラスの梅原さんがいた。笑ってたよね、二人で。手を繋いで———最後はキス、したんだよね。見えてたよ 」
私は鼻で笑った後、歩幅を広げて歩き出す。もう終わりね、私たちはと消えるような音量の声で囁いた後、振り返ってじっと彼の顔を見つめた。美形よりだった顔立ちは崩れて、肌は蒼白の色に染まり、とても苦い顔をしていた。瞳孔を開いて、体中に汗を滲ませている。表情は焦っていた。ただ、正常のなのは髪の毛だけ、いつもと何も変わらぬ紺色の髪の毛だけが、ただ今の少年の中では浮き目立つほどに綺麗だった。
「 あ、あれは…無理やり、柚莉が付き合えって脅されたんだ!じゃなきゃ、嫌がらせするって言われたから… 」
「 柚莉、ね。じゃあ、なんで梅原さんを〝下の名前で呼んでいるの?〟それも、脅されたっていうの?違うでしょ 」
あっと彼が悲鳴によく似た声を出す。私は目を細める。そして、彼が拳をギリリと握る音も聞こえた。悔しいのだろうか、彼の瞳には苛立ちのような色が混じっていた。もともとの魂胆が自分だということに気付いていないのだろうか。私はじっと彼を睨むように見つめた。それから、シカトしたようにふらりと独りでに先に歩き出す、彼の視線が背中に刺さる。
私は彼から2mほど離れた所で、ピタリと足をとめて、振り返った。少年はその場に崩れていた。私はそんな彼を見つめてから、背を向けて軽く手を振った。
「 私はこれから一生、貴方が大嫌いよ……今までありがとね。さようなら 」
人と付き合うまでが大変で、別れるのは告げるだけですぐ終わる。人とはそういうものだったのかな、と私は思いつめながら一瞬だけ、振り返って嘗ての彼氏だった男を見つめた。それから、貴方の口から一度も心のこもった好きと言う言葉を聞いた事が無かったわねと吐き捨て、少女は少しばかり顔を歪めながら夕焼けの帰り道を一人、歩き出した。
( 壊すことは簡単で、立て直すのが難しくて )
⇒END
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ドロドロとしたものしか
作れなくなってきたような気がします;;