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- Re: 、 マリオネット 【短編集】 ( No.49 )
- 日時: 2011/01/22 21:13
- 名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: QDkKu.wk)
- 参照: もと侑子です。
▼じゃぱにーずがーる
夕焼けが濃いオレンジ色を含み、染みたような色をしながら沈み始める直前。
俺は、まあ……そこそこな美少女と二人、教室にいた。
かといえ、ロマンティック系の出会いやシチュは、起きずにただ二人で補習によく似た勉強をしていた。
まあ、起きないのも何だか、お年頃な男子中学三年生としては、悔しいものだ。
相手は何たって、そこそこの美少女なのだから。
そう考えながら、ふっと振り返ると、そのそこそこの美少女は、机の上の教科書に向かっていた。
名前は、笹屋ゆりの。外見は、ゆったりとした金髪、勿論なこと、地毛などではない。完璧に染めたものである。何気によく近くで、髪の毛を見ると、色褪せてきていて、生え際が何気に茶色っぽい。
印象的なのは、長い睫毛に、絵に書いたような輪郭。まったくもって、そこそこな美少女である。
何故、此処までしつこく〝そこそこ〟という訳は、ちゃんと理由があるのだ。
彼女……笹屋ゆりのは、はたから見て、黙っていれば微笑女中の美少女なのだが。
彼女は授業中も、騒がしく。授業が終わってからも騒がしい女なのだ。賑やかと言う程度ではない。ただし、それは、英語の授業だけなのだが。
もはや、授業についていけず、苦悶の叫び声を発するような騒がしさなのだ。だからこそ、黙っていればなのだ。
俺は、ふうっとどこか力強く溜息を吐く。ああ、彼女のお守りももう飽き飽きだ。
さてはて、俺が今まで一方的に説明をしていた少女はというと、教科書の箸に、落書きを目論んでいた。
おいおい、冗談じゃないぞ。それは、俺の英語の教科書だ。
何故彼女に俺の教科書を貸しているかと言うと、それには深い理由がある。単に忘れたというものではないのだ。
今、俺と彼女は中学3年生と言う受験にまっしぐらと言う、何だか嫌な時期を迎えているのだが。
俺は、そこそこだとして、彼女は問題があった。
中学一年、二年、三年と、彼女は。英語の授業を迎えるたびに、英語のテストを受けるたびに。
彼女は授業中やテスト中に、教科書や答案用紙を破り裂いたからだ。いや、冗談じゃないから。
「 おい待て。笹屋、それは俺の教科書だ 」
「 ハッ!あんたのだろうが、誰のだろうが、えーごの教科書なんて、この世から消えてしまえばいいのよッ! 」
「 馬鹿か!そんなのなくなったら、日本は外国と付き合うことが出来なくなるだろうが! 」
多分、そうなると思っていったまでだから。事実とは限らないと思う。根拠?何ソレ、美味しいの?
それはともかく、まあ、それは中学一年の時の英語の教科書だから、別に要らないといえば要らないものなのだが。何だか、嫌なのだ。ほら、アレだよ。部屋の片づけしていて、幼年時代のときの教科書を見つけちゃって、懐かしいなあと思うような、あの感じ。今俺はそうなんだよ。
「 何よ……馬鹿って言ったほうが馬鹿なのよ、ぶぁっか! 」
唇の端を歪めて、苛立ちを抑えきれないとばかりの表情で、コチラに鉛筆を投げてきた。俺は、頬に当たる擦れ擦れの所で避ける。彼女は、チッと鋭利な視線を向けながら、舌打ちをする。
それから、彼女は教科書を睨むように見つめる。根は真面目何だろうけど、捻くれた性格を何とかしなきゃ、俺がやべえな。彼女は、端整な唇をひん曲げながら。不機嫌そうな顔で、不愉快と訴えている様に、俺を睨みつけた後。
「 ねぇっ!これは何よなんて書いてあるのよ 」
相も変わらず、可愛げのない強気な口調ですこと。
彼女はよく伸びた爪を生やした細い指先で、問題の一つ、英文の一行を指差した。
ナニナニ、と呟きながら俺は問題を見つめる。……読めばいいんだよな?
「 Do you piay the piano?……だ 」
「 はぁ?バカじゃないの、あんた。意味よ意味。誰が読めっつった?……確かに読めないけども 」
「 それは答えだからいえるわけねえだろ! 」
「 だから早く、答えを教えなさいよ!この能無しが! 」
能無し?じゃあ、何で俺がお前に英語を教えてるんだよ。それは多分、能有りだからなんだよ。
仮にも性格悪な友達いなそうなお前に、仮にも生徒なんだけど、英語教師をしているというのに……?性格悪いお前でも見てやる、心の広い俺は、能有りすぎる男だと思わないのか!
「 よし笹屋。まず、国語から勉強しよう。人に物を頼む時の態度からして、悪すぎる 」
「 はぁ?何言ってんのよ。成績は、英語は1だけど……それ以外は、私オール5を取ってるのよ、そんな必要、何処にあるって言うの? 」
それは成績面ではな!実践面では、お前の成績など無効化されるんだよ。
それに、英語以外はオール5…?俺は英語が5だけであとは、3位だってのに……英語だけ残念な奴だな。
「 なーんで、そんな超人みたいなお前が。英語だけは駄目なんだよ 」
そう吐き捨てると、彼女は怪訝な表情をして俺を睨む。今日だけで何回睨まれたことだろうか。
美少女に、睨まれ嫌われる、お年頃な中学三年生の男子クンの心は簡単に壊れるぞ。
Mじゃないんだから、そんな趣味ない人は、心割れちゃうから。硝子のハートなんだよ、思春期の男子は。
「 あんたって馬鹿? 」
お前に言われたくないね。つーか、心を微塵も揺らさずに思春期の男子のハート、壊しやがったな。
ガラスは割れやすくて、危険って習わなかったのかよ。お前こそが、ぶぁっかなんだよ。
「 あたしは、日本生まれなの。家も木製だし。和室だけだし。琴とかも習ってたし。神社も家の近くにあったから、毎日通ってたし。ソロバンとかも習った覚えあるし…… 」
彼女は考え込むように、目を伏せる。
どんだけ、洋風に縁がないんだみたいな設定だな、オイ。
「 まあ……色々あったのよ、いい女には色んな過去があるのよ 」
どこがいい女だって?具体的に、300文字以上を用いて説明してくださいよ、ねえ。
俺は、苛立ちを覚えて頭を掻き乱す。視界の端にある窓の外の世界は、とっくに薄暗くなっていた。
さっき時計を見たときは、5時くらいだったかな。もう、20分くらい経っているだろうし。
たしか、笹屋は家から学校が遠いって聞いたはずなんだが、もしかして俺は送っていかなければならないのだろうか。
俺が、数秒の間にそんな思考を考えている間、彼女はどこか勝ち誇った顔で頬を紅潮させていた。
だまっていれば、美少女なのにな。そう思えば思うほど、彼女は黙らないのだが。彼女は、勝ち誇った顔で驚きの発言をする。
「 あたしは、純粋な〝じゃぱにーずがーる〟って奴なのよ! 」
おい、ジャパニーズとガールと……英語を用いたぞ?
( 問題の答え合わせ→ yes, I do ____※ピリオドが無い為、バツです )
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