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Re:   、 マリオネット  【短編集】 ( No.53 )
日時: 2011/04/01 18:45
名前: そらね ◆ZPJ6YbExoo (ID: gWWhN.0i)


 ▼それは、雨の日。

 それはしとしとと、雨が降る日だった。
 昼下がり、喫茶店の店内は落ち着いた色の店で、気の素朴なテーブルや柱は、癒しを与えてくれるようだった。
 落ち着いたクラシックも流れ、店内は淑やかな空気に満ちていた。

 窓際、外の良く見える席にひとり、読書をしている青年が居た。
 20歳くらいで、穏やかな印象が残る、或いは幼げのある顔立ちの青年だった。 

 はらりはらり、と本のページを捲る音が聞こえる。
 本の物語の区切りが良い所にきたのか、男は不意に顔をあげて、湯気のたつコーヒーを口に含んだ。

 それから、窓の外の景色を見つめる。
 雨のせいでよく見えないが、窓ガラスを少しだけ濡らした雨は、どこか風情のあるものだった。



「あら、久しぶりね」


 青年に話し掛けてきたのは、髪の毛をブラウンに染めていた女性だった。
 外見は20歳近くの若い女だった。伸びた長い髪の毛が特徴的である。
 女にはつりあがった瞳からは、強気な性格が窺えるようだった。


「……ああ、こんにちわ」


 青年は少しだけ、眉を寄せたがすぐに微笑を浮かべて、挨拶を返した。
 女は青年の向かい側の席に座る。青年は読んでいた本に栞を挟もうと、バックから栞を取り出す。
 女はその間にメニューを見て、エスプレッソコーヒーを頼んでいた。

 青年は読んでいたページに栞を挟んで、テーブルの端に本を置いたあと、コーヒーを飲んだ。


いやな天気ですね」


 青年が言うと、「全くね」と女が返す。
 女は頬杖を付いて、口元に微笑を浮かべる。
 青年もコーヒーに口をつける。
 落ち着いたクラシックが聞こえて、どこか優雅な気分にもなれた。


「あら、その本……」
 

 女が目に付けたのは、先ほどまで青年が読んでいた本だった。
 表紙は青空と白い雲に広い草原のような場所が、プリントされたほんだった。


「最近、話題の本よ。ベストセラーになっていたわ」
「へぇ。友人から借りたものだったんでね。知らなかったな」


 ふうん、と女が小さく言うと青年は苦笑した。
 そんな他愛ない短い会話を交わしているうちに、コーヒーが運ばれてきた。
 熱そうに湯気の立っているエスプレッソコーヒーを、女はゆっくりと口に含んだ。
 それから落ち着いて、唇の端をやや吊り上げて、女は語りだした。


「それなりに面白かったわ。映画になるって話もあるそうよ」
「そうなんですか、詳しいんですね」


 控え目に青年は、感嘆の声を洩らす。
 女は心なしか嬉しそうに笑いながら、喋る。
 

「勿論よ、だって私はその人のファンですもの。デビューから今までずうっと見守ってきたのよ」


 そうなんですか、と小さく呟いて青年は薄く笑った。
 女は嬉しそうに笑ったあと、コーヒーをまた飲んだ。
 青年もコーヒーを口にする。


「その人の作品はもっと面白いものだってあるわ。」
「へぇ、そうなんですか。これを読み終わったら見てみたいと思います」


 女は満足そうに頷いたあと、窓の外を見つめた。
 さきほどよりは、雨の強さを弱まり、ポツポツと降る程度だった。
 
 女はぐいっとコーヒーを飲み干すと、唇を拭った後ににやりと笑った。
 青年はそんな様子を見つめていると、女は席を立った。

「雨宿りも出来たし、潮時ね。それじゃあ、また今度ね」


 女はバックから財布を取り出し、コーヒーの分のお金をテーブルに置いた。
 青年は目を細めて、女を見つめていたが、女が顔をあげるとにこりと微笑んだ。


「……ええ、またいずれ機会があれば」


 そういって青年は口元に微笑を浮かべて、去って行く女をみつめていた。
 それから、ぬるくなったコーヒーに再び口をつける。
 苦い味が口に広がるのを堪能しながら、女が店を出た瞬間、ぽつりと呟いた。



「……知らない人だったな」



 雨がまた、しとしとと降ろうとしていた。

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改行と描写を意識してみたお話です。
描写が苦手で苦手で、もう駄目だと思いました。

あまり青年と女性のことは詳しく書かれていなくてすいません。
どこにでもいるような女性と、穏やかな青年のお話、のハズです。

女は青年のことを知人だと思っていて、店を出たが、
青年は女の事を知らず、人違いだった、というお話です。
特に季節にこだわりはないんですが、梅雨ではない、ということで。

ぽわわーんとした話っぽく書いたつもりです。
やっぱり、描写は苦手なんでアドバイス、カモンベイベですw